ママの身体と心のガイド【第3回】出産後の身体は時間とともにどう変わる?

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産前・産後の女性の心身に起こる変化や不調とその対策について紹介する本シリーズ。

第1回と第2回は妊娠中に起こりやすい心身のトラブルとその対策についてお伝えしました。第3回の今回は、産直後に起きやすい心身の不調について紹介します。産直後は分娩時にかかる身体的な負荷による影響があり、産後は育児に伴う負荷から起きる症状が増えてきます。時間の経過に沿ってこれらの不調の特徴と対処法をお伝えしていきます。

分娩時から時間の経過に伴う身体のトラブルについて教えてください。

出産後は、出産直後からの心身の変化に伴い、様々なトラブルが発生しやすい時期となります。図で紹介しているように、生理学的な変化と環境的な変化が生じてきます。育児動作が始まることによる変化です。この二つが絡み合って要因となる事が多いです。

①生理的変化

前述してきたように、妊娠中に分泌されるリラキシンというホルモンは、骨盤を支える靭帯などの結合組織を緩めます。分娩直後にすぐに分泌量が低下すると言われていますが、緩んだ靭帯組織はすぐに元には戻りません。出産後4~6週で結合組織は自然回復・修復されると言われ、分娩時の影響はだいたい半年を目安に無くなります。この頃におきやすい症状としては、骨盤周囲が不安定になることで生じる腰部痛や骨盤の後ろ側にある関節の痛み(仙腸関節痛)、分娩時の影響による恥骨痛や尿失禁などです。また手首の使い方によっては腱鞘炎など、手首周囲の痛みも発生しやすくなります。

➁環境的変化

出産直後から育児動作が始まります。赤ちゃんは昼夜を問わずお世話が必要であり、母体に心身共に疲労や変化が生じている状況でも、休む間もなくお世話が必須です。また赤ちゃんは日々成長・発達するので、お母さんはそれに合わせた育児動作が必要となります。

  • 3~4カ月まで

注視・追視が始まり、首が座る(定頸)まで赤ちゃんの頭や首は不安定です。また、感情の発達も著しいので抱っこは必須動作です。その時の手首の位置やお腹の筋肉の使い方、立位姿勢によっては腱鞘炎や腰部痛、尿もれが発生しやすいです。

  • 生後半年くらいまで

赤ちゃんの体重は徐々に増えてきます。意思表示もしっかり見られてきますので抱っこが多くなります。まだ一人では座れないし移動ができないので必然的にそうなります。よって、腰部痛や肩こりが生じやすくなる時期です。

  • 1年くらいまで

お座りやハイハイができ始めると、抱っこの機会は減り、腰部痛は減ってきやすくなります。一方、赤ちゃん自身の移動が多くなる分、配慮が必要となり、床への座り込みや床からの立ち上がりが多くなり、膝関節痛が見られる場合もあります。

では、産直後に起こるトラブルには具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

分娩による影響が強い時期です。
筋骨格系のトラブルとしては、恥骨痛や仙腸関節痛、尾骨痛や股関節痛が生じることがあります。また、分娩時には様々な筋肉を使うので、出産後2~3日は筋肉痛が残ることがあります。そのため全身倦怠感も残ります。
排尿系のトラブルとして、尿が出にくくなる(尿閉・排尿困難)、または逆に尿もれ(尿失禁)が挙げられます。会陰裂傷や会陰切開による傷口の痛みやむくみがあるため心理的に過敏にもなります。また、出産直後は腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下したり、会陰トラブルの恐怖心で排便困難が生じやすく便秘傾向になりがちです。
その他としては、貧血傾向、悪露(おろ/出産直後からみられる出血の混じったおりもの・分泌物)の増加、後陣痛による子宮収縮の痛み、乳房の張りや乳頭の亀裂などが挙げられます。

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