ママの身体と心のガイド【第5回】産後の心の不調とパートナーにおける変化
産後に向けて当事者間で共有しておくべき心構えや情報には、どのようなものがありますか?
出産を迎えるにあたり、パートナーや家族と「産後のリアル」を共有しておくことはとても大切です。どうしても赤ちゃんの情報に目が向きがちですが、その前に大切なのはその赤ちゃんを育てていく母や父の状況です。産後は、今まで述べたように、心身が不安定になりやすい時期です。家事や育児を一人で抱えず、「できないことは助けてもらう」「休む時間を確保する」ことで、無理を防ぐことができます。男性の育児休暇制度も整いつつあります。実際に何ができ(得意で)、何をサポートするのかなど、役割分担を話し合っておくことをオススメします。また、産後すぐは身体の回復が追いつかず、腰痛や腱鞘炎などの不調が出やすい時期です。身体を支える姿勢や動作、休息の取り方などを知っておくことが、心の安定にもつながります。前項でご紹介したとおり、最近では、各自治体で「産後ケア事業」が整備され、産後の生活をサポートする仕組みが広がっています。家族以外の支援に関する各制度の情報を得て、使える資源をフル活用していきましょう。
おわりに
これまで5回にわたり、妊娠中から産後にかけての心身の変化とその対策についてお伝えしてきました。妊娠・出産に伴う身体や心の不調は決して珍しいことではありません。このシリーズを通して、ご自身で取り組める予防や対策が多くあることを知っていただけたのではないでしょうか。ぜひ無理のない範囲で日々の生活に取り入れてみてください。また、一人で抱え込まず、周囲のサポートに頼ることも大切です。
さて、本シリーズ最終回となる第6回は、理学療法士が関わる産後ケアの事例をご紹介します。実際に現場を取材した記事です。どうぞお楽しみに!
PROFILE
佐々木 聡子(ささき さとこ)理学療法士
専門分野:ウィメンズヘルス
2000年に理学療法士免許取得後、総合病院でICUや急性期/回復期病棟に従事。自身が産後トラブルを経験し、産後女性の健康や環境について興味を持つ。2011年から佐々木産婦人科で妊婦教室を担当、現在も産前産後のリハ外来や出産後の全褥婦の身体ケアを行っている。2019年から勤務している訪問看護ステーションかがやきでは、産後ケア事業部を立ち上げ、医療保険/自費で産前産後の女性のケアを看護師・助産師とチームで実施している。助産師向けの研修会講師や地域の各教室、TV取材に多数対応。健康増進・参加認定理学療法士、pfilAtesTM(骨盤底筋エクササイズ)インストラクター、経営学修士(MBA)を保有。