発達障害のある人が生き生きと働くには【後編】-お子さんに業務を円滑に進める相談のコツや支援制度を伝えよう
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発達障害がある方が生き生きと働くためには、本人の特性に合った仕事や職場を選ぶこと、そして就労継続するためのコツを知っておくことが大切です。中編でご紹介したように、生き生きと仕事を続けていくためには、仕事中の休憩のタイミングやリラックスできる方法を工夫すること、そして困った時に相談できる力を身につけておく必要があります。
今回は業務を円滑に進めるための相談のタイミングやコツ、そして企業や社会の支援制度などについて、理学療法士であり、発達障害がある子どもたちを長年支援されてきた横浜市教育委員会の竹田智之先生に伺いました。
業務を円滑に進める相談のコツ
発達障害のある方は、自分の体調や気持ちを客観的に人に伝えたり、困った時に相談したりするのが苦手なことが多いようです。それでは、どのように人に伝える力、相談する力を身につけていけばいいのでしょうか? ここでは業務を円滑に進めるために知っておくと良い、相談のフロー、タイミングや話し方のコツなどについてご紹介します。
業務を円滑に進める相談のコツ
まずは、相手に対して「今相談しても大丈夫でしょうか?」と必ず聞いてから相談することが大切です。そして、業務内容にもよりますが、相談の型を作っておき、それに沿って話を進めることが効果的です。
例えば、
- 事前に相談内容を書き出す
- 相手に話しかける
「相談があります。今、お時間よろしいでしょうか」 - 事前に書き出した相談内容を読む
- 相手に回答を依頼する
「アドバイスをお願いします」
このように、型を定めたうえで内容を伝えると良いです。事前に一人で、もしくは同僚に協力してもらって練習しておくと、いざという時に実践しやすいでしょう。
また、相談という形はどうしても柔軟なやり取りが求められるため、ハードルが高いと感じるかもしれません。職場では「誰に」「いつ」相談したらよいかが分かりにくいことが、その背景にあります。その場合は、まずは日常業務を上長等に報告するルーティンを作り、その中で現状を伝えるというやり方でも、結果的に困りごとを伝えるきっかけにできます。
なお、相談をする力を身につける土台として、まずは自分自身が関心を持っていることを他者に話せたり、見せたりする中で、自己開示をすることへの肯定的体験を重ねられるとより良いです。そうした土台があると、愚痴がこぼせるようになり、相談してみようと思う心が少しずつ育ってくることがあります。
就労継続のために支援制度を活用しよう
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援制度とは
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援とは、障がい者の職場適応に課題がある場合、職場にジョブコーチが出向いて、特性を踏まえた専門的な支援をおこない、障がい者が職場に適応できるようにすることを目的として、厚労省が実施しています。
本人には、職場の従業員との関わり方や効率の良い作業の進め方などをアドバイスし、家族にも助言をします。また、雇用事業主や上司、同僚などには、本人が力を発揮しやすい作業の提案や、特性を踏まえた仕事の教え方などアドバイスをします。
ジョブコーチには3つの種類があります。
【配置型ジョブコーチ】
地域障害者職業センターに配置するジョブコーチ。就職等の困難性の高い障がい者を重点的に自ら支援するほか、次の訪問型ジョブコーチや企業在籍型ジョブコーチに必要な助言・援助をおこなう。
【訪問型ジョブコーチ】
障がい者の就労支援をおこなう社会福祉法人等に雇用されるジョブコーチ。
【企業在籍型ジョブコーチ】
障がい者を雇用する企業に雇用されるジョブコーチ。
この中の企業在籍型ジョブコーチが配置されている企業に就職すると、職場で直接サポートが受けられて安心です。
ただし、ジョブコーチの支援対象は障がい者全般にわたるため、発達障害のケースに十分に対応できない場合もあるようです。発達障がい者の身体面や感覚面の特性についてのサポートの充実が課題です。
受け入れ体制がある企業とは
5人以上の障がい者を雇用する事業所(企業)では、労働者の中から「障害者職業生活相談員」を選任し、障害のある従業員の職業生活に関する相談・支援をおこなうことが義務づけられています。そのため、相談できる体制が整っているので安心です。
また、相談体制に加えて、柔軟な働き方ができるかどうかも、大切なポイントです。発達障害のある方の中には、人込みが苦手でパニックを起こしてしまう方もいます。出勤時間をずらして、ラッシュアワーを避けられるフレックスタイム制を導入している会社や、テレワークを導入している会社であれば、無理なく仕事が続けられる可能性が高くなります。
なお、就職希望の生徒がいる特別支援学校の高等部に、事前に生徒の様子を見に来てくれる企業もあります。こういった企業であれば、障害の特性を理解したうえで雇用してもらえるので、安心感があります。
また、近年では経済産業省が「ニューロダイバーシティ」という考え方の推進に資する取り組みをおこなっています。発達障害の方の就労において、企業側がおこなっている環境面やキャリア開発等の工夫についての実践事例なども紹介されていますので、以下のホームページも参考にされると良いでしょう。
就労後もサポート体制を確保しておこう
就労はゴールではなく、その後も仕事を続けていけるかどうかが重要です。就職した会社にサポート体制があることも大事ですが、外部のサポート体制も継続して確保しましょう。
特別支援学校の高等部では、卒業後も引き続きフォローをする体制が整っています。3年程度アフターフォローをしている学校が多いですが、内容は学校ごとに特色があります。卒業して間もないうちは「職場での様子を見に行く」というフォローをしてくれるところがありますが、その後は必要に応じて電話や対面で相談するというフォローに移行したり、卒業生の集いのような場で話を聞いてもらえる機会が設定されるケースがあります。
特別支援学校の高等部以外で利用できるもので一般的な制度としては、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、生活介護、自立訓練などのサービスがあります。また、一般就労した方については、最大3年間の就労定着支援が利用できます。
また幼児期や学童期からつながりのある療育機関、医療機関などは、特性をよく理解してくれています。就労継続で困難が生じた時も、適切なアドバイスを得られるので定期的に相談できるようにしておくと安心です。しかし、相談や受診に行く際、時間が限られている場合もあります。悩んでいることや症状、経過をすぐに説明できるように、最初から相談ごとをメモに書いてから療育機関や医療機関に向かうのがおすすめです。
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