高次脳機能障害とは何か【前編】-見えにくい障害の特徴と支援の受け方
なるべく多くの支援とつながっておくことが、大切なのですね。具体的にはどのような公的サービスが利用できますか?また医療機関以外に、どのような社会資源を利用することができますか?
片岡さん:全国に設置されている「高次脳機能障害支援拠点機関」は、相談窓口として重要な役割を担っています。専門の支援コーディネーターが、医療・福祉・就労などの支援につなぎ、切れ目のない支援を提供します。2026年1月現在、全国に126カ所設置されていますので、まずは最寄りの支援拠点機関に相談をしてみてください。そこから相談支援専門員による計画相談支援を通じて、適切な支援体制を整えることができます。
片岡さん:日常生活においては、居宅介護や生活介護、地域生活支援事業などの障害福祉サービスが利用できます。社会復帰に向けては、就労移行支援や就労継続支援、就労定着支援といった障害福祉サービスのほか、ハローワークや障害者職業センターによる職業評価、就職支援、職場定着の支援を受けることができます。
復職や復学にあたっては、医療機関や支援機関、職場・学校と連携・相談をしながら、段階的に社会参加を進めていくことが重要です。
まずは、相談をすることが大切なのですね。その後、適切な支援を受けて回復をしてきた当事者の方が、社会生活(仕事や学校など)に復帰するために、家族などの周りの人はどのようなサポートをしていけばよいでしょうか。
片岡さん:高次脳機能障害のある人の回復の程度や速度は人それぞれです。そして多くの人が、元のコミュニティに戻ったときに、以前のように上手くいかないと感じてしまいます。社会復帰において、家族や周囲は伴走者としての役割を担います。重要なのは、焦らずに当事者が小さな成功体験を積み重ねていけるようにすることです。
また本人が自身の状態を理解できるようにサポートすることも大切です。家族や職場の方だけで判断せず、医療や福祉、就労などの専門職に相談しながら進めることで、無理のない社会復帰が可能となります。
※画像はイメージです 片岡さん:家庭や職場では、環境調整も重要です。高次脳機能障害者と接する際は「同時にたくさんの刺激を入れない」ということが鉄則です。家庭ではできないことを責めるのではなく、どうすればできるかを一緒に考えることが大切です。家族がそれぞれに意見を言うと混乱させてしまうことがあるため、家庭内で高次脳機能障害者と何か話し合ったり、意見を言ったりする際は、伝える役割を担う方を決めておくとよいと思います。
職場でも同様に、業務内容や手順を明確にし、一度に多くの指示を出さないようにします。また、見た目には回復しているように見えても、認知機能の課題や脳の疲労が残っていることが多くあります。そのため、最初からフルタイム勤務を前提にしないなど、段階的に負荷を調整できる仕組みを整えるとよいでしょう。不調が生じた際には立ち止まり、見直せる環境を整えることが、長期的な社会参加につながります。
※この記事は2026年4月22日時点での情報で作成しています。
※この記事は、以下を参考に作成しています。
おわりに
前編では、高次脳機能障害の特徴や当事者・家族が直面する困難、そして現在利用できる支援制度について、日本高次脳機能障害友の会の理事長であり、理学療法士として長年当事者支援に携わってきた片岡保憲さんにお話を伺いました。
「見えない障害」と呼ばれる高次脳機能障害。当事者やご家族の方々が抱いている困難、そして苦悩は計り知れないものがあります。本記事が少しでも、障害への理解の一助になればうれしいです。
後編では「高次脳機能障害者支援法」の成立に至るまでの経緯、今後の支援体制の展望について詳しくお伝えします。