※画像はイメージです 高次脳機能障害とは何か【後編】-支援法が施行された背景と今後期待できること
当事者の“伴走者”となる支援を目指して
支援法の施行を受けて、今後片岡さんがさらに取り組んでいきたいことを教えてください。
片岡さん:法律の成立はゴールではなく、新たなスタートです。今後は地域格差の是正、若年層支援、家族支援の充実、そして専門職と当事者が協働する支援体制の構築に取り組んでいきたいと考えています。
私自身、弟が当事者であり、家族として支援に関わってきました。当事者や家族は「私たちの気持ちはわかってもらえない」と孤立感を抱きやすいものです。しかし、この法律は国会で反対票なしに成立しました。それは、多くの人が理解し、支援の必要性に共感している証です。今後は、社会全体で協力しながら支援の輪を広げていきたいと思います。
また、高次脳機能障害のある子どもについては、まだ十分な実態把握が進んでいません。今後は専門家と連携しながら、支援の基盤づくりに取り組んでいきたいと考えています。
スタート地点に立ったということで、今後は支援体制がより充実していくことを願うばかりです。最後に、当事者およびご家族へのメッセージをお願いします。
※画像はイメージです 片岡さん:もし孤独や不安を感じている方がいれば、どうか一人で抱え込まず、誰かに相談してください。友の会などの団体も相談を受け付けています。すぐに解決できなくても、つながることで安心や新たな道が見えてくることがあります。
また、ご本人に自覚がない場合でも、家族が支援拠点に相談することができます。電話相談や訪問支援など、状況に応じた対応が可能です。事故から何年も経ってから症状が明らかになることもあります。「もしかして」と思ったときは、遠慮なく相談してほしいと思います。
長年支援に携わってきて感じるのは、「支援者は伴走者でいること」が大切だということです。元の状態に戻すことだけを目標にするのではなく、その人の人生に寄り添い続けることが大切です。回復には時間がかかりますが、ゆっくりと回復していく方も多くいます。
最後に、一つ私の本音をお話ししたいと思います。当事者への支援では、排泄や歯磨き、入浴などの生活面の支援に目が行きがちです。もちろんそれは、生命を維持し、健康を取り戻すために大切なことです。しかし人が生きていくためには、生きがいがなければ味気ないものとなってしまいます。旅行に行きたい、美味しいものを食べたい、好きなことを楽しみたい――そうした思いこそが人生の豊かさです。
高次脳機能障害のある方が、自分らしい生きがいを見つけられる社会になることを願っています。そして、その人生に寄り添う支援が広がっていくことを心から望んでいます。
おわりに
日本高次脳機能障害友の会理事長であり、理学療法士として長年当事者支援に携わってきた片岡保憲さんのインタビューを、前編、後編に分けてお届けしました。
高次脳機能障害は「見えない障害」と呼ばれ、当事者や家族が孤立しやすいという現実があります。しかし、2026年4月に施行された「高次脳機能障害者支援法」は、その困難への対応を個人の問題から「社会全体の責務」へと大きく転換させるものです。
片岡さんが語るように、法律の成立はゴールではなく、誰もが自分らしく生きるためのスタート地点です。生活支援だけに留まらず、当事者の「生きがい」にまで寄り添う伴走者が増えていくことで、誰もがその人らしく暮らせる社会の実現が可能になるのではないでしょうか。
本記事が、高次脳機能障害への理解を深め、社会全体で支える基盤づくりの一助となることを願ってやみません。