【第8回:後編】生涯現役!理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法~訪問リハビリテーションで患者さんの在宅生活を支える伊藤清弘さん~

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食生活を含め、ライフステージの変化が、心と身体に良い影響をもたらしたのですね。生涯現役を目指すために大切な心がけ・秘訣は何だと思いますか?

伊藤さん:常に謙虚であり、患者さんや利用者さんの目線に立ち続けることです。

今春、長女が大学を卒業し、いよいよ就職しました。ある日、彼女から「仕事を選ぶときの指標って何?」と聞かれたことがあります。私は少し考えて、こう答えました。

「一つ目は、その仕事が好きかどうか。二つ目は、自分がその仕事に向いているかどうか。そして三つ目は、少なからず社会に貢献できていると感じられるかどうかだね」

振り返ってみると、それはまさに私自身が理学療法士という仕事を選んだときの基準でもありました。

学校を卒業すると、私たち理学療法士はすぐに「先生」と呼ばれる立場になりますが、そこであぐらをかいてはいけないと思います。私は、20代のころ、障害のある妹の入院に付き添い、約8年間、病院に泊まり込んだ経験があります。その中で、患者側から見た医療従事者の姿を身をもって知りました。

思っている以上に、患者さんは理学療法士の言動や振る舞いをよく見ています。だからこそ、その視線に応えられるだけの器量と所作を持ち続けることこそが、この仕事を長く続けていくための矜持であり、最低条件なのではないかと、私は考えています。

生涯現役で充実した毎日を目指して。伊藤さんの今後の目標

常に謙虚であり続けることが生涯現役につながる第一歩なのですね。伊藤さんの今後の目標、チャレンジしたいことなどがありましたらお聞かせください。

伊藤さん:最近はテレビでも健康番組がとても増え、市民の健康意識が高まっていると感じます。ただ、その情報が日々の生活の中で本当に活用されているのかというと、少し疑問に思うこともあります。

そこで、理学療法士が持っている知識や技術を、地域の方々の生活の中にうまく橋渡しできないかと考えました。そうした思いから、数年前から「未病息災と運動」をテーマにした健康体操教室を始め、現在4か所で開催しています。まだまだ試行錯誤の段階ではありますが、将来的には「これだけ続ければ、一生歩ける身体づくりにつながりますよ」と自信を持って伝えられるような、“これだ”と言える運動を極めていきたいと思っています。

プライベートで挑戦したいことは、何といっても料理です。目標は料理のレパートリーを100品に増やしたいですね。これまでも家事は、洗濯やゴミ出しなどは長年やってきましたが、料理となるとかなりハードルが高いと感じています。

妻の様子を見ていると、冷蔵庫の食材を見ただけで何が作れるか瞬時に判断し、短時間で料理を仕上げていきます。さらに煮炊きをしながら、空いた時間で食器洗いまで同時に進めています。その様子は本当に創造的で、しかも複雑な工程を手際よく進める「段取り力」が求められる作業だと感じます。脳トレのようでもあり、なかなか手ごわいですね。

とはいえ、1年前からは毎朝、みそ汁と卵焼きを作ることを続けています。妻から「おいしい」と言ってもらえるのが何よりうれしくて、もっと料理を極めていきたいと思っています。

毎日作る具たくさんの味噌汁とだし巻き

伊藤さん:いよいよ古希(70歳)を迎えました。この年齢まで来たかという思いがある一方で、まだまだ若々しくありたいという気持ちは強いです。

身体の面では、同年代の歌手である郷ひろみさんのように、年齢を感じさせない軽やかさを保っていたいと思います。また、気概の面では、「ひふみん」として親しまれた将棋棋士の加藤一二三さんのように、現役にこだわり続けた壮絶な歩みにあやかりたいと感じます。あのひたむきさには、心を動かされるものがあります。

そうした思いを胸に、人生の終盤は、ただ穏やかに過ごすだけでなく、あえて波風も受け入れながら、自分らしく歩んでいきたいと思っています。

妻・美代子さんが描いてくれた伊藤さんの似顔絵

おわりに

退院後の在宅生活において、訪問リハビリテーションを中心に福祉用具、住宅改修など多角的なサポートをおこなう伊藤さん。これまで積み上げてきた知識と経験を活かし、利用者さん一人ひとりの暮らしに寄り添われています。

謙虚な気持ちで理学療法に臨み続けることに加え、お料理をしたり、健康体操教室を始めたり……、その尽きない好奇心やチャレンジ精神も、生涯現役の秘訣なのかもしれません。今後のさらなるご活躍を楽しみにしています。

「生涯現役!理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法」では、引き続きベテラン理学療法士のお仕事や、健康管理法についてご紹介していきます。次回もお楽しみに。