【第8回:前編】生涯現役!理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法~訪問リハビリテーションで患者さんの在宅生活を支える伊藤清弘さん~
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本企画では長きにわたりお仕事をされていて、現在も生涯現役として活躍されているベテラン理学療法士の方々をピックアップし、現在のお仕事(セカンドキャリア)や、生涯現役を目指すために実践している健康法などをご紹介します。
第8回は脳神経外科と整形外科の急性期から慢性期医療の患者さんを理学療法士として支え、現在では訪問リハビリテーションを中心に活動を続けられている伊藤清弘さんにご登場いただきます。
前編では伊藤さんのお仕事についてお話を伺っていきます。
【特集】生涯現役!理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法
PROFILE
伊藤 清弘さん(いとう きよひろ)
1955年、京都府舞鶴市で生まれる。岡山大学卒業後、1984年国立近畿中央病院附属リハビリテーション学院卒業。同年、市立舞鶴市民病院入職、脳神経外科と整形外科の急性期から慢性期医療に従事。退職後は岸本病院にて訪問リハビリテーションを中心に在宅を飛びまわっている。専門は地域リハ、福祉用具と住宅改修。行政の住宅改修相談に参画、これまでに1千棟余りの改修に携わる。また高齢者の介護予防事業など幅広く地域活動にも従事している。
伊藤さんの現在のお仕事(セカンドキャリア)
伊藤さんの現在のお仕事について伺います。伊藤さんは、市立舞鶴市民病院に勤務されたあと、現在は岸本病院の訪問リハビリテーション部門で活躍されています。現在の主な仕事内容について教えてください。
伊藤さん:現在、岸本病院の訪問リハビリテーション部門で、約30名の利用者を担当しています。対象となる疾患は多岐にわたり、パーキンソン病や脊髄小脳変性症などの神経難病が約半数を占めます。
そのほか、COPD(慢性閉塞性肺疾患)をはじめとする呼吸器疾患の方や上下肢骨折手術後の在宅生活を支えるフォローなど、幅広いケースに関わっています。
伊藤さん:近年の訪問リハビリテーションの特徴として、高齢化・重度化に加え、入院期間の短縮に伴う「早期退院」が進んでいることが挙げられます。そのため、在宅に戻られた時点でも医療的な配慮が必要なケースが増え、急性期に近い状態の利用者に関わる場面も少なくありません。
訪問リハビリテーションでは、単に運動機能の改善だけでなく、総合的なアプローチが求められます。まず病状観察をおこない、そのうえで基本的な運動療法やADL(日常生活動作)トレーニングを実施します。
また、在宅生活を支えるための心理的サポートや、病期の進行に応じた福祉用具の導入、住宅改修のアドバイスなどもおこないます。
私が特に大切にしているのは、シームレスな支援です。
例えば、症状の悪化や転倒などをきっかけに入院し、急性期治療を終えて再び在宅生活に戻る場合でも、できるだけスムーズに元の生活に戻れるよう、退院時カンファレンスへの参加や治療経過・データの共有を丁寧におこなっています。また、必要に応じて通所系サービスへつなげることも意識し、在宅生活を支える体制づくりを進めています。
さらに、訪問リハビリテーションでは進行性の難病の方と長く関わることが多くあります。日頃から利用者やご家族と多くの時間を共有できる立場であることを生かし、終末期におけるケアをあらかじめ話し合っておくACP(アドバンス・ケア・プランニング)にも積極的に関わっています。
利用者がどのような生活を望み、どのように人生を過ごしていきたいのかを共に考えながら、その思いを支える支援を大切にしています。
在宅生活においては、多角的なサポートが必要となるのですね。お話から、伊藤さんが熱心に利用者やご家族と向き合っていることが伝わってきます。訪問リハビリテーションでのやりがいを感じたエピソードを教えて下さい。
伊藤さん:私は常々、理学療法士は「身体機能に働きかける技術者」であるという視点を大切にしています。
以前、末期のCOPDの利用者さんに対して、胸郭のストレッチと呼吸介助手技をおこなったことがありました。実施後、その方は大きく「フーッ」と息を吐き、「息をするって、こんなんだったんですね」と涙ながらに話されました。自分の手技が受け入れられ、効果として実感していただけた瞬間、理学療法士としてのやりがいを強く感じました。
一方で、訪問リハビリテーションでは、いわゆるSPDCA(調査・計画・実行・評価・改善)のサイクルの中で、思うように改善が進まず、対応に四苦八苦するケースも少なくありません。そんな中、最近とても印象に残る出来事がありました。100歳の利用者さんが肺炎による急性増悪で救急入院され、約1か月の臥床(ベッドに横たわっている状態)後に退院されたケースです。
もともとは歩行器で屋内歩行が可能だったのですが、退院時には寝返りもできず、「寝たきり」と判断されて体位変換ベッドが導入された状態で在宅に戻られました。評価の結果、主な原因は廃用(活動低下による心身の機能低下)症状と考え、週3回・3カ月間の集中的な理学療法を計画しました。寝返りから座位、立位へと段階的に進めていったところ、予想通り徐々に機能が回復し、最終的には元の歩行レベルまで戻ることができたのです。
そのときに見せてくださった利用者さんの満面の笑顔は、今でも強く印象に残っています。思わず私自身も笑顔になりました。理学療法士としての手応えとやりがいを、改めて実感した瞬間でした。
利用者さんの回復や笑顔がやりがいにつながっていくのですね。さて、訪問リハビリテーションに関わる理学療法士の方が増えてきたことで、変化は感じられていますか?
伊藤さん:介護保険制度が開始されてから四半世紀が経過しました。私は制度開始当初より、舞鶴市の介護認定審査会の副会長として関わってきましたが、その中で、訪問リハビリテーションは今以上にすそ野が広がる可能性を強く感じています。
その背景には、介護保険制度の整備が進み、在宅生活を支える仕組みが着実に整ってきたことがあります。例えば、要介護5で寝たきり、かつ独居の方であっても、訪問系サービスを適切に組み合わせることで、在宅での生活が可能となってきました。さらに、国が進める病床数の削減や在院日数の短縮により、症状は落ち着き始めたもののまだ完全に回復していない利用者も在宅になることが増え、より集中的な訪問リハビリテーションの必要性が高まっています。
また、訪問リハビリテーションに従事する理学療法士の増加とともに、その効果が可視化されてきたことで、市民やケアマネジャーの間でも、訪問リハビリテーションが効果的であるという認知が広がってきました。
こうした流れを受け、舞鶴市では2023年より総合事業の一環として「訪問型短期集中支援事業」を開始しました。これは、要支援1・2で退院直後の方や、廃用などにより生活上の課題を抱える方に対し、原則3か月間、集中的に訪問リハビリテーションを提供するものです。医師の指示書を必要とせず、迅速な介入が可能である点も大きな特徴です。
このように、要支援者が要介護状態へ移行することを防ぎ、要介護者の重度化を抑制する取り組みの中で、訪問リハビリテーションは重要な役割を担っています。今後も、そのさらなる広がりが期待される分野であると考えています。
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