発達障害のある人が生き生きと働くには【中編】-お子さんが仕事を続けていくうえで大切なこと

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発達障害がある方の中には就労できても、長期間同じ仕事が続かず、すぐに仕事を辞めてしまう方もいます。それには、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動症(ADHD)といった発達障害の特性が、影響しているかもしれません。

前編の記事では、発達障害の特性に合った仕事や職場の探し方などをお伝えしました。中編である今回は、発達障害の方が就労継続するためのコツなどを、理学療法士であり、発達障害がある子どもたちを長年支援されてきた横浜市教育委員会の竹田 智之先生にお伺いします。

「就労準備性のピラミッド」とは

就労継続するためには、段階的な準備が大切

前編の最後でお伝えした通り、就労して安定して働いていくためには、仕事をするうえでの基盤となるスキルの積み上げが大切になります。そのスキルを5段階に分けて示したものが「就労準備性のピラミッド」です。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が作成したものをリガクラボで一部改変

それでは、それぞれのスキルについて、重要度順にどのようなことが大切なのかを見ていきましょう。

1. 心と身体の健康管理(病状管理)

  • 食事栄養の管理、通院している場合は、定期的な通院や服薬管理ができる
  • 体調不良時に対処するなど体調管理ができる
  • 自分の障害、特性について理解している
  • SOSを発信できる 等

2. 日常生活管理・基本的な生活のリズム

  • 身だしなみを整えられる
  • 決まった時間に就寝、起床するなど、生活リズムがある
  • 金銭管理ができる
  • 生活のルールを守るなど、社会性がある 等

3. 社会生活能力・対人技能

  • 苦手な人も含めて、挨拶・会話ができる
  • 適切な言葉遣いができる
  • 職場の人と共同作業ができるなど、協調性がある
  • 注意された時に謝罪ができる
  • 感情のコントロールができる 等

4. 基本的労働習慣

  • 報告・連絡・相談ができる
  • 一般就労・作業意欲がある
  • 働く場のルールに従って勤務ができる
  • 一定時間仕事に耐える体力がある 等

5. 職業適性

  • 自分自身の就労能力(作業適性・量)を理解している
  • 仕事に必要な知識やスキルがある
  • 作業速度や正確性があり、指示理解ができる 等

ご紹介したピラミッドの項目を1つずつ身につけることが、就労継続には大切です。「就労準備性のピラミッド」を、カリキュラムマネジメントを進めていく上で参考にしている特別支援学校の高等部もあります。また、高等学校卒業後であれば、就労移行支援事業所などでスキルを磨く方法もあります。

一人ひとりの職業能力を考える際、職業適性に目が向きがちですが、実際には、日常生活や健康の管理といった、働く土台ができているかどうかが重要な要素を占めていることがわかります。まずは必要なスキルを確認してみましょう。

発達障害がある方が仕事を続けていくには

晴れて就労したものの、なかなか仕事が続かずに辞めてしまったり、仕事をしているうちにストレスがたまり、精神的に追い詰められてしまったというケースをたくさん見てきました。なぜ、就労継続できないケースがあるのか、その理由をご説明したいと思います。

就労継続を難しくしている主な要因

就労を継続する際に、発達障害の方にとって何が困難につながっているのかを認識して、対策を考えておくことが大事です。ここでは4つの理由について、実例を交えてご紹介します。

1. 業務遂行における困難さ
●ミスが多い
長時間の集中が難しく、注意力が持続せずにミスをしてしまうことがあります。またミスが発生しやすいチェックポイントがわからず、重要な部分を確認していなかったり、チェックの抜けがあったりします。

●同時処理が苦手
発達障害のある方は、ワーキングメモリの容量が少ない傾向があります。そのため、一時的に記憶できることの数が少なく、マルチタスクが苦手なことが多いです。

2. 対人関係における困難さ
ASDの特性を持つ方は職場での人間関係が苦手な人が多く、業務上だけでなく、休憩時間の過ごし方やトラブル時の対応などが難しい方が多い傾向にあります。

●あいまいな言葉が苦手
非言語的なコミュニケーションを読み取ることが難しく、ストレスを感じやすいです。

●臨機応変が苦手
予期しない業務や環境の変化に適応するのが難しく、ストレスの原因になります。場合によっては、突発的な予定変更などでパニックになることもあります。

●環境によって報連相が難しい
いつも仕事を一緒にしている上司には報告、連絡、相談ができても、普段接していない方への報連相が難しいことがあります。

3. 体力の調整が苦手で、疲労が蓄積
ASD、ADHD、学習障害(LD)だけでなく、発達性強調運動障害(DCD)の方も含めて、自分の体調や限界を理解し、伝えることが難しい傾向があります。そのため、仕事を始めたばかりの頃は頑張れても、次第に疲労感が蓄積され、1年、2年と時間が経つと職場から足が遠のいてしまったり、仕事を続けられなくなることがあります。

4. 感覚過敏による環境ストレス
ASDやADHDの特性を持つ方に多く見られますが、音に敏感な方はエアコンの音が気になってしまい、仕事に集中できなくなることもあります。さらに人混みが苦手な方も多く、混雑した通勤経路が耐えられず、出社できなくなってしまうこともあります。

困った時に相談できる力を身につけておこう

発達障害のある方が感じる感覚や物事のとらえ方は、定型発達の人とは違いがあります。就労継続が難しい理由についても、発達障害の特性を理解していない方から「なぜ?」と思われてしまうことが多いものです。そこで大切なのが、相談できる力を身につけておくことです。

とはいえ、いきなり相談をするのは難しいでしょう。そこで事前に、相談のタイミングや、どのように相談すればよいのかというパターンを学習することをおすすめします。就労前で学校に通っている間に相談する力を伸ばせる体験を積むことが大事です。相談の仕方のコツは、後編でご紹介します。

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