【中編】もしバナゲーム開発者インタビュー 開発時に込めた思いと参加者からの反響

「もしバナゲーム」の開発者である3名の医師。今回インタビューにご協力くださった蔵本浩一先生(左)と、原澤慶太朗先生(中央)、大川薫先生(右)

どんなシーンで活用されているのか

試行錯誤のうえで「もしバナゲーム」として2016年に発売となったのですね。実際に、どのようなシーンで活用されているのでしょうか。

蔵本先生:発売当初から医療関係者や福祉、介護の関係者に使用してもらっていました。今でも多くのワークショップなどで活用いただいています。

ユーザー層を細かくは把握していませんが、一般の人にはまだそこまで利用されていないのではと感じています。個人で興味を持ってくださった方のためにも、インターネットで購入できるようになっています。気の合う仲間や職場の仲間など、このゲームに興味のある人同士で、誰とでも楽しんでもらいたいです。

このカードを、実際の臨床の意思決定の場で使用した例はあるのでしょうか?

蔵本先生:実は臨床の意思決定では一度も使用したことはありません。当初は、現場でも役に立てばいいなと思っていたのですが、やはり現場での決定は時間もタイトですし、患者さんや家族はナイーブな状態です。

このカードは時間と心に余裕のあるときに、ざっくばらんにじっくり話す際に向いているのではないかと考えています。

カードゲーム参加者からの反響

実際にワークショップをおこなう中で、様々な反響があったかと思います。どのような感想がありましたか?

蔵本先生:自分自身と向き合えた、考えるきっかけになったという声は多いですね。4人ルールでプレイする場合、手元には5枚しかカードを残せない決まりです。全部捨てたくないカードであっても、どれかを捨てなくてはならない。そこで自分自身と相談して取捨選択し、自分の内なる声に向き合うことになるのです。

また、自分の価値観と他人の価値観の違いに驚いたという感想も多く聞かれます。例えば、自分が迷いなく捨てたカードを、他の人がすぐに拾い大事そうに手元にキープすることもあるのです。それを見て、「あなたはなぜこのカードを選んだのか?」「なぜ捨てたのか?」を話し合う中で、自分の考え方が変化するのを経験する人もいます。他の人の考えはこんなにも多様なのかとびっくりしたという声もありました。

自分自身の声と向き合うだけではなく、誰かと考えを共有しながらおこなうことで、新しい気づきに繋がるのですね。

蔵本先生:それがヨシダルールの醍醐味だと思います。
このゲームではカードの取捨選択をしますが、それによって自分の望みをリスト化できるわけではありません。36種類のカードしかないこのゲームで、自分の本当の望みをあぶりだせるはずはないと思っています。

目的はそこではなく、他人とこのようなテーマについて対話し、考え、価値観の違いを共有して「ゆらぐ」ことです。選んだ価値観(=カード)はあくまでも「入り口」で、その奥に広がる世界をそれぞれに感じてもらいたいのです。「もしバナゲーム」がそのきっかけとなればと願っています。

医療従事者の思いが詰まったゲーム

今回は、「もしバナゲーム」が生まれた経緯や開発時に込めた思いを蔵本先生におうかがいしました。インタビューを通じて医療現場の先生たちの思いが詰まったカードゲームだということがよくわかりました。

次回は、特に印象的だったゲームエピソードや、教育現場での活用事例についてうかがった内容をお伝えします。

もしバナゲーム(iACPホームページ)
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PROFILE

蔵本 浩一(くらもと こういち
亀田総合病院 疼痛・緩和ケア科 医長
亀田総合病院 地域医療連携室 室長
一般社団法人iACP共同代表

医師。北里大学医学部卒業後、横須賀市立うわまち病院、東京北社会保険病院(現:東京北医療センター)、総合病院国保旭中央病院を経て、2009年より総合病院国保旭中央病院の緩和ケア科主任医員となる。 2010年から亀田総合病院勤務。現在は、疼痛・緩和ケア科 医長ならびに地域医療連携室 室長を兼務。 一般社団法人Institute of Advance Care Planning(インスティテュート・オブ・アドバンス・ケア・プランニング)の共同代表も務め、「もしバナゲーム」の普及と実践の手助けもおこなっている。