【第2回】リハビリテーションの4つのステージとは~骨折したらどうなるの?~

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皆さまはけがや病気になったとき、どのような流れでリハビリテーションを受けるかイメージができますか?前回、リハビリには「急性期」「回復期」「維持期・生活期」「終末期」の4つのステージがあることをお伝えしました。では、それぞれのステージで理学療法士がどのような流れで疾患に関わり、どのようなリハビリをおこなうのでしょうか。第2回からは具体的な疾患を例に挙げて見ていきましょう。

今回は、高齢者の方に多い大腿骨頚部骨折を取り上げて、各ステージにおけるリハビリの役割や内容についてご説明します。お話は名古屋第二赤十字病院の高木寛人さん(理学療法士)に伺いました。

大腿骨頚部骨折とは?

今回は大腿骨頚部骨折の患者さんを取り上げて、リハビリの各ステージについてご説明します。大腿骨頚部骨折は転倒が原因となって起こることが多い骨折で、高齢者の方に多い特徴があります。症状としては、太ももの付け根にある大腿骨の頚(くび)の部分が折れるものであり、高齢者に起こる4大骨折の1つです(図)。骨がもろくなる骨粗鬆症の進んだ高齢女性に多く発生します。

原因の多くは転倒によるものですが、尻もちをつく程度の軽微な外傷でも起こり得る、まさに「誰もがなり得る」骨折です。さらに「骨折・転倒」は介護が必要となった主な原因の第4位であり、適切にリハビリをおこなうことが重要となります(図)。

治療方法とリハビリの目的

一般的に、骨折の治療は保存療法と手術療法がありますが、大腿骨頚部骨折は原則として手術療法が選択されます。手術は、受傷後なるべく早い時期におこなわれ、状態が良ければ手術の翌日からリハビリが開始されます。ただし、心疾患や糖尿病などの合併症があり、手術をするまでに数日間かかる場合などには、骨折部位以外の関節の可動域や筋力を維持するために手術前からリハビリをおこなうことがあります。

リハビリの目的は、可能な限り骨折する前の身体の状態に戻し、再び自立した日常生活と社会生活を送れるようにすることです。手術をしてから適切なリハビリをおこなうことで、痛み、足の筋力低下による歩行能力・バランス能力の低下、関節可動域の制限などの後遺症が残ることを防ぎ、介護なしで生活できる状態にします。

それでは、急性期、回復期、維持期・生活期と順を追って、各ステージのリハビリの目的と内容について説明していきます。

急性期のリハビリ

急性期リハビリの目的は、手術前後のベッド上の安静などによって生じる「廃用症候群」を予防することです。廃用症候群とは、身体の不活動状態に起因する二次的な障害で、筋力・関節可動域の低下、骨粗鬆症、肺炎、全身持久力の低下、起立性低血圧、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などが起こります。そのため急性期では手術後のなるべく早い段階からリハビリをおこないます。

急性期リハビリの流れ

手術をした直後
理学療法士の介助を受けながら関節を動かす練習

骨折部の固定性がしっかりしてきたら
手術部位の痛みの程度に応じて体重(荷重)をかけた立位練習

立位が安定したら
身体を支える道具(平行棒)を使いながら歩行練習

杖歩行練習

手術後早期からこれらのリハビリを適切におこなうことにより、術後の廃用症候群を最小限に抑え、歩行能力を十分に回復させることが可能となります。また歩行能力の回復には、術後早期からのリハビリや手術した足に体重をかけることが有用であると言われています。

なお、急性期病院の退院基準(当院の退院基準は38℃以上の発熱がなく、手術部位の傷の状態が良く、術後骨折部位の固定性が良好なこと)を満たすと回復期病院へ転院となります。しかし、急性期の時点ではまだ日常生活の活動は十分に回復できておらず、回復期病院で本格的にリハビリをおこなうことになります。

回復期病院でのリハビリの後は、自宅にすぐ帰る方もいれば、時には維持期の施設を経て自宅へと帰る方もいます。その間、さまざまな施設が関わるため、医療機関は「大腿骨地域連携パス」を用いて、急性期から維持期・生活期まで患者さんの治療に関する情報を共有し、スムーズな治療を実施します。

急性期リハビリの例

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