【第4回】リハビリテーションの4つのステージとは~がんになったらどうなるの?~

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皆さまは骨折や病気にかかったとき、どのような流れでリハビリテーションを受けるかイメージできますか?第1回では、リハビリには「急性期」「回復期」「維持期・生活期」「終末期」の4つのステージがあることをお伝えしました。では、それぞれのステージで理学療法士がどのような流れで疾患に関わり、どのようなリハビリをおこなうのでしょうか。

第3回は脳卒中を取り上げて、各ステージにおけるリハビリの役割や内容についてご説明しました。第4回は日本人の死因の第1位として挙げられている「がん」についてご紹介していきます。お話は村上華林堂病院の北野晃祐さん(理学療法士)に伺いました。

がんとは?

今回はがん患者さんを取り上げて、リハビリの各ステージについてご説明します。がんは生活習慣や遺伝、発がん物質の摂取、ウイルス感染などの原因で遺伝子に傷がつくことで起きる病気といわれています。がんは、癌や腫瘍などさまざまな呼び方がありますが、多くの場合、平仮名で「がん」とすることで悪性腫瘍を示します。がんは、がんそのものから痛みが生じたり、その治療によるむくみ、筋力低下など身体の機能が低下してしまう病気です。

がん患者は増えているか?

現在、国民の2人に1人が生涯のうちにがんを経験し、国内における死因の約30パーセントを占めるといわれています。1年間に新たにがんと診断される人数は、国立がん研究センターの統計情報によると約100万人(2017年)にのぼり、人口の高齢化の影響を受けて年々増加しています(図1)。

図1

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

同様に、医学の進歩による生存率の向上も目覚しく、がんの治療中、あるいは治療を終えた方なども含む、すべてのがん体験者である「がん経験者」(がんサバイバー)も増加しています。発症部位別数では男女差があるものの、大腸がん・胃がん・肺がん・乳がんが多く、原因として、食生活などの欧米化による影響が指摘されており、運動の習慣作りなどによる予防活動が重要視されています。

治療方法とリハビリの目的

治療方法には、がんを切除する手術療法や、抗がん剤などの薬の服用あるいは点滴・注射をすることでがん細胞の増殖を抑える化学療法、そして放射線の照射によってがん細胞を死滅させる放射線療法があります。がんの進行度を踏まえて、これらの治療法を選択し、時には組み合わせて治療をおこないます。

がん患者さんには、身体的にも精神的にも日常生活に負担がないような生活を実現させることが大切です。リハビリテーションは、各ステージに応じて目的を少しずつ変えながらおこなっていきます。がんと診断された早い時期には機能障害の予防、治療が始まります。安静や副作用などによる身体の機能低下や動作の能力低下が生じた際には、最大限の機能回復を図るために筋力トレーニングなどの運動療法をおこなっていきます。

がんが増大し、心身の機能障害が進行しつつある時期には、患者さんの身体機能の維持・向上だけでなく、安全に自立できる動作や痛みを緩和させる姿勢・動作などを一緒に考え、自宅の環境や介護のアドバイスをおこないます。そして、終末期を迎えられた際には、患者さんの思いを尊重しながら、身体的、精神的、社会的に質の高い生活が送れるよう支援していきます。

理学療法士は、予防的活動の支援、進行により出現した症状への対応だけでなく、終末期には精神的なサポートをおこなったりと、がん患者さんに携わる機会が多い専門職といえます。

それでは、維持期・生活期と順を追って、各ステージのリハビリの目的と内容について説明していきます。

維持期・生活期のリハビリ

がんが進行することにより、痛みを感じる、呼吸が苦しいといった症状が出現することがあります。症状は、がんの部位や選択した治療手段によって異なるため個人によってさまざまです。理学療法士らが身体機能や日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)などに対する評価をおこない、それぞれの患者さんの状態に応じたリハビリテーションが有効です。

また、症状や治療による安静に伴う筋力や体力の低下は「廃用症候群」と呼ばれ、悪循環に陥ることで肺炎などの重篤な症状を引き起こすこともあり注意が必要です(図2)。廃用症候群の対策としては、歩行練習や筋力トレーニングがあります。「楽に続けられる」~「ややきつい」の程度で継続的に実施することがポイントです。筋力運動は、椅子からの立ち上がり運動などによって姿勢を保持するために必要な抗重力筋を優先的にトレーニングすることをお勧めします。また、廃用症候群は抑うつ状態をはじめとした精神症状を来たす場合もありますので、地域の公民館サークルなどを利用して社会参加の機会を持つことも検討しましょう。

図2

がんの進行期に注意すべき点として、食欲不振や倦怠感、筋肉量の減少をきたす悪液質と呼ばれる症状があります。悪液質は栄養を摂取しても改善しないケースも多いため、医師の診断を受けて、適切なリハビリテーションをおこないましょう。

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