【第3回】リハビリテーションの4つのステージとは~脳卒中になったらどうなるの?~

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回復期のリハビリ

回復期のリハビリでは、ご自宅や施設へ戻るために重点的にリハビリテーションをおこなっていきます。リハビリをおこなう時間や量がとても増えることにびっくりされる患者さんやご家族がいらっしゃいますが、意識状態や麻痺の改善に効果があるだけではなく、できなくなってしまった日常生活動作を再獲得していくために、この時期に集中的にリハビリをおこなうことがとても重要です。

回復期リハビリの流れ

初めて脳卒中になった場合、ご本人やご家族は退院後の生活をイメージすることが難しいかもしれません。そのため、目標も「歩けるようになりたい」と漠然としていることが多いようです。

そこで、私たちは「孫と一緒に散歩する」や「近くのお店で買い物する」といったその人らしい生活になるような具体的な目標を一緒に考えていきます。その目標を達成するために、筋トレや関節を動かす運動のほかに、寝返りや起き上がりなどの基本的な動作練習、下肢装具を使った立ち上がりや歩行練習などをおこないます。さらには、食事・排泄・更衣・入浴などの日常生活動作の練習、屋外での歩行や実際の買い物動作といった、退院後の生活に即した練習も積極的におこなっていきます。

また、ご本人が退院後に生活する場所を、理学療法士などのリハビリ専門職とともに入院中に訪問し、退院後の課題を明確にしたり、住宅の改修や福祉用具の必要性を検討したりします(一般的には家屋調査といいます)。例えば、椅子や手すりの高さによっても生活のしやすさは変わってきます。また、生活がしやすくなることで介護負担の軽減につながるため、ご家族の生活状況も踏まえて段差の解消やトイレ・浴室の改装も検討する場合があります。

脳卒中後の回復期リハビリは主に麻痺を改善させるものだとイメージしているかと思いますが、実際には、退院後の目標に即した動作練習や、退院後に継続してできる運動の指導、ご家族への介助指導、家屋調査など理学療法士などのリハビリ専門職の関りは多岐にわたります。

維持期・生活期のリハビリ

生活期リハビリは主に介護保険を利用して受ける訪問リハビリ(ご自宅にスタッフが訪問)と通所リハビリ(施設へご本人が通う)があります。訪問リハビリは、家屋環境の再確認やご自宅での動作練習、ご家族への動作指導などをおこないます。

通所リハビリは、施設に半日または一日滞在し、生活機能を維持するために必要な練習をおこなうだけでなく、ご本人の外出機会の提供やご家族の介護負担の軽減も目的としています。つまり、維持期・生活期のリハビリとは脳卒中後の後遺症による身体の機能や動作能力の維持だけを目的としているのではなく、自分らしく、より良い生活を送るという目的に目を向けていく時期であるといえます。

また、脳卒中後に後遺症が残っていることは少なくありません。脳卒中になる前の生活と比べて、運動量が少なくなるため、手足の筋力や体力が低下したり、病院ではできていたことができなくなる場合もあります。そのため、病院を退院してご自宅や施設に戻られてからも継続して運動をおこなっていく必要があります。

ご自宅で簡単にできる運動の1つに、椅子からの立ち上がりがあります。椅子や手すりの高さによっても運動のしやすさが変わってくるため、理学療法士と一緒に、自主練習の方法や場所を決めておくと、ご自宅で継続しやすくなります。

まとめ

今回は急性期、回復期、維持期・生活期においてのリハビリについて紹介しました。脳卒中の後遺症の回復は長期的なリハビリテーション医療や介護が必要となることが多いですが、必ずしも「寝たきり」になるとは限りません。適切な時期に適切なリハビリを積極的におこない、最終的にはご自身で運動する習慣を獲得していくことが脳卒中になっても自分らしさを保つ秘訣だと考えています。

編集部より

脳卒中も、第2回でご説明した大腿骨頚部骨折の場合と同じように、早期のリハビリが大切です。また、後遺症によって、生活様式が変わることの多い病気です。そのため、リハビリの各ステージで、退院後の生活が可能な限りご自身でおこなえるように、また自分らしい生活となるように理学療法士は支援をおこなっています。リハビリに取り組まれている患者様やご家族様の今後の参考になれば幸いです。

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