公益社団法人 日本理学療法士協会は、「2021年度障がい者団体助成事業」を実施し、助成対象として5団体を採用しました。

「障がい者団体助成事業」は、国民の皆様が住み慣れた地域で安心して生活できる社会を構築することを目的におこなわれている取り組みです。日本理学療法士協会では、協会の理念に基づき、すべての方の健康と幸福に寄与するため、障がい者団体助成の対象となる団体を公募しその活動を応援しています。

前編となる今回は、採用された5団体の中から2団体の活動と採択された助成事業についてご紹介します。この記事を機に、障害や障害のある方々の暮らし、それを支える方々の活動について知っていただき、考えていただけたらうれしいです。

頸髄損傷者の力になりたい〜全国頸髄損傷者連絡会のご紹介〜

交通事故やスポーツ事故、労働災害、病気などさまざまな要因により頸髓（※）を損傷し、後遺障害が残ってしまった方のことを頸髄損傷者といいます。四肢体幹の機能麻痺、知覚麻痺、呼吸器機能の低下をはじめ、体温調節機能障害や排泄機能障害等が起こり、その重い障害に悩まれている方も少なくありません。

全国頸髄損傷者連絡会は、頸髄損傷者への情報提供、親睦交流、行政交渉などをおこない、頸髄損傷者の抱える問題を解決するために活動している団体です。頸髄損傷者の課題を解決することが、障害の有無に関わらず、誰もが暮らしやすく平等に社会参加ができる社会へつながっていくという思いで運営されています。

※編集部注：頸髓（けいずい）
身体の神経が通っている脊髄のうち、首の部分にあたるところ。

頸髄損傷者の排泄をめぐる課題解決へ〜採択事業について〜

頸髄損傷者の多くは、排泄の感覚が失われ、障害のない方と同じような排泄をすることは困難です。そのため、多くの頸髄損傷者は看護師や家族、介助者の手を借りることが必要で、ご自身が望んでいる排泄環境とは言い難く、生活に大きな制約を抱える方が多いという実態があります。

そこで「2021年度障がい者団体助成事業」では、本団体により2020～2021年に取りまとめられた「頸損解体新書2020」の調査をさらに具体化し、かつ頸髄損傷者の排泄を巡る課題の解決を目的とする「頸損者の生活を支える基本的問題の基礎調査」が採択されました。

本団体は、頸髄損傷者129名に実施した調査データとその分析結果を元に専門家との勉強会をおこない、各課題に対する提言を示し、それらを「排泄基礎調査報告書」としてまとめました。

この「排泄基礎調査報告書」は、冊子として印刷され、当事者やその家族、支援者、医療専門職、行政関係者に800部が配布されました。また、全国頸髄損傷者連絡会のホームページからも閲覧することができます。詳細については、下記よりぜひご覧ください。

医療的ケア児とその家族がより良い療養生活を〜特定非営利活動法人 かけはしねっとのご紹介〜

新生児・小児医療の急速な進歩を受け、日本では推計約2万人を超える子どもたちが日常的に医療的ケアを必要としています。医療的ケアとは、気管切開部の管理や人工呼吸器の管理、吸引、経管栄養など、生きていく上で必要となる医療的援助のことです。

特定非営利活動法人 かけはしねっとは、茨城県を中心に医療的ケア児とその家族のための交流イベントの開催や、在宅ケアに有用な情報共有などをおこなっています。

同じような立場の方々が孤独を感じないよう、また、医療的ケア児を取り巻く状況を地域の方々に広め、医療ケアのある生活をもっと開かれたものにしたいという思いで運営されています。

役立つ情報をホームページで発信！〜採択事業について〜

「2021年度障がい者団体助成事業」では、医療的ケア児とその家族がより良い療養生活を送るための情報発信事業が採択されました。

今回、本団体のホームページにて情報発信の継続ならびに、子どものリハビリに関する情報を紹介する「リハビリを知ろう」ページが制作されました。「リハビリを知ろう」では、リハビリテーションの分類や子どものリハビリに関するQ&A、先輩ママに聞いたリハビリ経過のケースなどが紹介されています。

また、後日おこなわれた無記名によるアンケートでは、「リハビリを知ろう」ページについて、「とても勉強になりました」「Q&Aもお子さんのリハビリの経過も良かったです」といったコメントも寄せられました。医療的ケア児における理学療法の意義・効果など、参考になる内容が掲載されていますので、ぜひ下記のホームページよりご覧ください。

※この記事は2022年9月7日時点での情報で作成しています。
※この記事は、以下を参考に作成しています。

全国頸髄損傷者連絡会
かけはしねっと～医療的ケアを必要とする子どもの親の会～
医療的ケア児について（厚生労働省）