【第1回】発達障害を知ろう!運動が苦手・手先が不器用なのは、発達障害?〜子どもの「できた!」を育む支援を〜

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運動が苦手・手先が不器用…気になるときは?

運動の不器用さなどが発達性協調運動症(DCD)によるものなのかどうかなどはどのように知ることができるのでしょうか。

深澤さん:発達性協調運動症(DCD)かどうかは、医師によって診断され、以下の項目が確認されます。

  • 運動や動作を学習すること、遂行することが、生活年齢と比べ、期待されているものより明らかに劣っていて、動作に必要以上に時間がかかったり、不正確さがあり、そのことにより日々の生活に支障が起こっている。
  • 生活年齢にふさわしい日常生活動作が著明および持続的に妨げられていて、学校での生産性や遊びに影響を与えている。など
  • 以上のような、症状が発達段階の早期から認められる
  • 運動技能の習得を困難にする他の病気や障害がない

医師により発達性協調運動症(DCD)と診断された場合、DCDの国際ガイドラインでは、支援を受けることが推奨されています。しかし、運動の不器用さが原因で日常生活に支障が出ている場合は、支援を考えていく必要があります。

実際、発達性協調運動症(DCD)の症状に気付くときは、どのような場面なのでしょうか。

深澤さん:成長過程に応じて、様々な気づくきっかけとなる場面があります(表1参照)。

もちろん同様の症状があっても発達性協調運動症(DCD)と診断されない場合もあります。

出典:国立大学法人弘前大学/青森県「青森県子どもの発達支援ガイドブック」(青森県発達障害者支援センター「ステップ」、2022年3月、P102)をリガクラボにて一部改変

発達性協調運動症(DCD)があるとわかったとき、理学療法士として、どのように支援されているのでしょうか。

深澤さん:支援者による具体的な支援は、支援の目的、アセスメント、支援内容の流れで考えます。支援の目的は、子ども自身がどうしたいのか・どうなりたいのか、運動の不器用さでどんなことに困っているのか、その支援を行うことで子どもの生活がより良くなるか、「何のために」支援を行うのかを考えます。アセスメントは、なぜその運動や日常生活の動作が上手くいかないのかを分析します。運動は子ども個人の要因だけではなく、課題や環境からも影響を受けることが知られています。子ども個人、課題、環境の視点で分析し、その相互作用もふまえて、子ども個人への支援、課題の調整、環境の工夫などの支援へ進めていきます。

発達障害の支援者である理学療法士は、「身体づくり」と「生活動作」の専門家として支援します。医療機関で行う医師の指示に基づく個別の理学療法の他、地域では、理学療法士による発達支援やコンサルテーションを行っています。対象のお子さんに合わせてアセスメントから見立てをたて、支援内容について検討します。運動の不器用さに対して、子どもと家族が日常生活で困っていること、子どもが上手になりたいこと、家族が上手になってほしいこと、得意な動作・苦手な動作などを把握し、支援内容の提案に繋げていきます。

発達性協調運動症(DCD)により日常生活で困っている子どもに対して、支援者が行える対応や支援はどのようなことがありますでしょうか。

深澤さん:まずは、子どもの特性を理解することから始まります。子どもの「身体を使って遊びたい、友達と一緒に遊びたい、上手にできたことを見てほしい」という思いは、特性の有無に関わらず多くの子どもが持っています。運動の不器用さにより、通常なら達成されるはずのニーズに困難さがあることを理解し、その特性に配慮した肯定的な関わりが求められます。

「がんばっているね」、「できるように一緒にやってみようか」などの肯定的な関わりが必要であり、「なんでできないの」、「できないのはやる気の問題」などの否定的な関わりにならないよう気をつける必要があります。保護者や支援者が行う基本的な関わり方は、まずは「身体を使って動くことを楽しむこと」、「失敗をさせない学習を心掛けること」、「常に励ます姿勢であること」、「子どものできた!」を少しずつ増やすことなどが挙げられます。

また、発達性協調運動症(DCD)により、日常生活で困っている子どもに対して、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、障害のある人が何らかの対応を必要としている場合、負担が重すぎない範囲で対応してもらうことです。

子ども達に必要な支援を届けよう―深澤さんからのメッセージ―

本記事で発達性協調運動症(DCD)について知った方も多いと思います。深澤さんから読者の皆さんに対してメッセージをお願いいたします。

深澤さん:運動の不器用さが原因で困っている子どもがいます。子ども自身の選択を尊重しつつ、子ども自身が今現在抱えている困難さ、将来困ることが予想される課題に対して、子ども・家族を中心に、福祉、教育、医療で、身体とこころの適切な支援を一緒に考えていきたいと思っています。多くの方に知っていただき、子ども達に必要な支援が届けば、一支援者として大変嬉しく思います。

おわりに

第1回では、発達障害のある方々やご家族、支援者などに理学療法士として関わられている深澤 宏昭さんに、発達協調運動症(DCD)とそれに対する理学療法士としての関わり、周囲が行える気遣いや支援などについてご紹介いただきました。さまざまな特性に応じて、肯定的な関わりをするなど、事前に知っていると関わり方に配慮することができますね。
第2回は、発達性協調運動症(DCD)として診断のある運動の悩みごとについて、事例を通して支援や制度、関わり方などを深澤さんにご紹介していただきます。お楽しみに。

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PROFILE

深澤 宏昭(ふかさわ ひろあき)理学療法士、保育士、公認心理師

深澤 宏昭(ふかさわ ひろあき)理学療法士、保育士、公認心理師

2009年理学療法士免許取得。同年、相模原療育園に入職し、現在に至る。 医療機関での外来理学療法を中心に、児童発達支援センター理学療法士訪問や特別支援学校訪問、非常勤で小児科クリニック、作業所巡回相談などで、発達障害(神経発達症)の方々とご家族、支援者の相談に対応している。