暮らしの中で健康になるまちづくり【後編】-実践事例とまちづくりのこれから
-
1
2
超高齢社会を生きる私たち。実は今、“暮らしの中で健康になるまちづくり”が、注目されています。
理学療法士として活躍されたのち研究の道へと進み、現在は暮らしの中で「健康になるまちづくり」に取り組まれている、千葉大学予防医学センターの井手一茂さんにお話を伺いました。
後編では、実際のプロジェクトを例に取り、より具体的に「健康になるまちづくり」の姿に迫ります。
【特集】暮らしの中で健康になるまちづくり
具体的な実例について
井手さんの所属する千葉大学予防医学センターにて、「健康になるまちづくり」として実際に取り組まれた事例を教えてください。
井手さん:2018年に国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の助成事業「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)」に採択された、「WACo : Well Active Community」は、千葉大学が主導したプロジェクト(2018〜2023年)です。
基本的に、私たち千葉大学予防医学センターは人とのつながり、つまり、社会的な交流を持たせるという点をとても大切にして、まちづくりをしてきました。また、建築を専門とする先生方もいらっしゃるので、まちのデザインについてもこだわっています。
いくつか、WACoのプロジェクトレポートに掲載している事例をご紹介します。
出典:「WACo -Well Active Community- プロジェクトレポート 2018-2024」(Well Active Community 共創コンソーシアム)
井手さん:「歩きに行こう」と思って行動する人は、少ないと思うんです。しかし、人との交流だったり、買い物だったり、なにか楽しいことがあるから行こうと行動する人は結構多いんですよね。
また、今注目されているのが、一緒に食事をとることです。「共食」とも言われますが、これが人の健康に寄与しているとされていて、健康日本21(第三次)でも地域等での共食する人を増やすことが目標に掲げられています。
私たちは今、千葉県四街道市さんと岩渕薬品株式会社さんと一緒に、自然に心も体も健康になる四街道をつくる「四つ葉プロジェクト」に取り組んでいます<5>。その一環で、四街道市立図書館で実施した取り組みが、「朝飯図書館」です。開館前の図書館でゆっくり勉強や読書をする「朝活図書館」という取り組みがあるのですが、そこで朝ごはんを提供します。千葉大学予防医学センターと岩渕薬品株式会社さんが設置した「健康まちづくり共同研究部門」を軸に2024年から始めて、今年で2年目です。
朝飯図書館を手伝うボランティアメンバー 井手さん:皆さん、健康になろうと思って図書館に来るわけではないけれども、身体活動の機会になる。地域の方もボランティアとして参加してくださっており、地域の見守りにもつながってきていると感じています。
今年はお米の手配が難しかったのですが、四つ葉プロジェクトでつながったお米の会社にお勤めの地域の方が寄付してくれました。本当にありがたいです。
<注釈5>
井手一茂,河口謙二郎,近藤克則,片桐大輔,中込敦士: 産官学民連携で取り組む四街道市における健康まちづくり:コレクティブ・インパクトのコンセプトに沿って整理した初年度の成果と課題.日本公衆衛生雑誌 2025; 72(10): 808–818. doi:10.11236/jph.24-120
-
1
2



