多世代の交流が生まれる、四街道市鷹の台公園で開催されている「四街道こどもまちづくりプロジェクト」 暮らしの中で健康になるまちづくり【後編】-実践事例とまちづくりのこれから
「健康になるまちづくり」のこれから
多世代の交流が生まれる、四街道市鷹の台公園で開催されている「四街道こどもまちづくりプロジェクト」 それぞれの地域に合った形で、多様な施策をおこなわれているのですね。さて、今、住んでいる場所で私たちはどのような点に注意したら良いか、アドバイスをいただけますか?
井手さん:すでに地域でおこなわれているようなイベントや、ずっと続いてほしいと思う取り組みに、ぜひ参加してみてもらいたいですね。何か一歩アクションを起こしてみると、運営の方にとっては、とても励みになると思うんです。
ご両親が住んでいる地域でソフト面の取り組みを探してみるのも良いかもしれません。何に興味を持つのか、何がきっかけになるのかはわかりませんが、情報を伝えてあげるというのも大事ですね。
「健康になるまちづくり」をより全国に広げるためには、何が必要でしょうか。未来への展望を教えてください。
井手さん:ゼロ次予防の考え方はそんなに難しく捉える必要はありません。環境がとても大切なんだ、ということが常識になってくれればいいなと思っています。
かつて公害が叫ばれた時代がありました。「ここに住むと健康を害する」という負の側面だと、理解しやすいと思うのですが、「暮らしの中で健康になる」というのは、まだ理解が進んでいない現状があります。もっとみなさんに知ってもらう必要があると感じますね。私でよかったら喜んで伺いますので、いろいろなところに呼んでいただきたいです。
また、環境や地域にアプローチしていくまちづくりは、個人を対象にすることの多い現場の方々からすると私たちには関係ない、ともすると対立構造として捉える方もいらっしゃる気がします。しかし、環境や地域への間接的なアプローチの結果、直接的に介入する方を減らすことができれば、現場のリハビリテーションをはじめとする専門職の人員に余裕ができるでしょう。人材不足が懸念されている今、メリットが大きいのではないでしょうか。究極をいえば、誰もがまちに暮らしている中で、関係しない人はいないと思っています。ひとりひとりの日々の取り組みの1つ1つが「暮らしの中で健康になるまちづくり」につながっていくと私は信じています。
一研究者としては、まだまだ微力ですが、健康なまちづくりに関するエビデンスを積み重ねることやその社会実装を進め、かつ、関係者の方々の頑張りを見える化して、書き残していくことでも貢献していきたいですね。
おわりに
研究で全国各地を訪れるという井手さん。近年、地域で活躍する理学療法士が増えてきているように感じているそうです。
自分自身が理学療法士だからバイアスがかかっているかもしれないと前置きをしながら、「健康指標が良い自治体には、現場に近いところに理学療法士の方がいらっしゃることも増えてきたように感じる」と教えてくださいました。
ゼロ次予防で、健康長寿社会へ。
暮らしの中で健康になるまちづくり、今後も注目していきたいテーマですね。
PROFILE
井手 一茂(いで かずしげ)理学療法士
2020年千葉大で医学博士号取得後、同大予防医学センター社会予防医学部門特任研究員。2023年4月より健康まちづくり共同研究部門特任助教。千葉県を中心に各地の介護予防・障害福祉・まちづくりにも従事する。