発達障害のある人が生き生きと働くには【前編】-お子さんの特性に合う仕事・職場の探し方
いつから始めればいい?就労準備のポイント
発達障害は脳機能の発達に関連する障害ですが、発達障害があるかどうかが発覚する時期には、個人差があります。ここでは、幼児期から学童期にかけてお子さんに発達障害の特性があることがわかった保護者の方向けに、就労準備を進めていくうえでどのような準備をいつ頃からするとよいかをご紹介します。
早めに将来の就労について考えよう
幼児期から学童期にかけて、お子さんに発達障害の特性があるとわかった場合、学校教育においてすでに支援を受けているというケースが多いかもしれません。とはいえ、中学校、高等学校をどう選ぶのか、さらにその先の専門学校や大学などへ進学するのか、就職するのか等々、ご本人はもちろんですが保護者の方の心配も尽きないものです。
保護者の方には、今のお子さんの状態を理解したうえで「将来、どのような仕事に就きたいか、どのような生活を送りたいか」を、早い段階から一緒に考えていただきたいと思います。中学校入学の頃から保護者も意識を持つことで、お子さんの就学先や療育など、将来に向けての準備を早めに進めることができます。
以下、就労準備のポイントを見ていきましょう。
ポイント1:特性を踏まえて進学先を検討する
小学校、中学校では特別支援学級を併設する学校も増えており、発達障害のあるお子さんもサポートを受けやすくなってきています。しかし、高等学校で特別支援学級を併設している学校はほとんどありません。お子さんの発達障害の特性や希望を鑑みて、まずは適切な進学先を見つけることが大事です。
中学校卒業後の進学先は、特別支援学校(高等部)のほか、全日制高校、定時制高校、通信制高校など、多様な選択肢があります。特別支援学校の高等部では、就労に向けた支援が比較的整っています。 特に就業技術科や職能開発科がある特別支援学校高等部は、就職率が高くなっています。
一般の全日制高校、定時制高校などに進学される場合、発達障害に関する支援が不足している現状があります。その場合は必要に応じて、学齢後期(中学校~高校卒業)向けの療育や放課後等デイサービスといった外部の支援制度を利用すると良いでしょう。
ポイント2:学校以外の場とつながりを持っておく
学校教育以外に、発達障害があるお子さんとそのご家族をサポートしてくれる場がいくつかあります。お子さんを長期的に見てくれる療育機関や放課後等デイサービスなどとつながっておくことで、特性の理解に役立ったり、将来の方向性を考える時に相談に乗ってもらえたりします。
また、学校での支援がお子さんにとって適切かどうか迷うような場合は、療育機関や医療機関、発達障害者支援センター等で専門職のアセスメントを受けて、学校が支援計画を立てるうえでの参考にしてもらうとよいでしょう。
ポイント3:子どもが自信を持ち、自発的に相談できる場所を増やす
お子さんが得意なところに目を向けて、お子さんの自己肯定感が高まるように心がけましょう。また、好きなことをたくさんやらせて、自信を持てることをできれば2つ以上持たせてあげましょう。
さらに、学校を卒業して社会に出る前に、お子さんご自身が自発的に答えを出せるようにしておくため、相談できる場所を増やしていくことも大事です。
発達障害のある方の働き方について知っておこう
発達障害のある方の働き方には、雇用形態としては「一般雇用」と「障害者雇用」があります。一般雇用では、配慮が受けられない場合もあるので注意が必要ですが、特例子会社(※)がある会社は障害に理解がある傾向が強いようです。
さらに、自分の障害を会社に開示して働く「オープン就労」と、開示せずに働く「クローズ就労」があります。開示するかしないかを選択することは、当事者の権利です。お子さん自身がどのような働き方を望んでいるのかということや、それぞれのメリット・デメリットを理解しておく必要があります。
これは私が関わっていた方の例ですが、一般雇用のクローズ就労で頑張って働いていたASDの方が、ストレスからASD特有の常同行動(繰り返し同じ行為をすること)が強く見られるようになっていったことがあります。どのような働き方を選ぶかは、その人に合わせて慎重に考える必要があると思います。
※障害者の雇用の促進及び安定を図るため、障害者の雇用に特別の配慮がされて設立された子会社で、一定の要件を満たす企業
就労をゴールとせず、継続して働ける職場を探そう
発達障害のある方が就労するには、特性に合う仕事・職場を探すことが大事だとお伝えしてきました。さらに大切なことは、就労がゴールではなく、継続して生き生きと働いていける職場を見つけることです。
また、安定して働いていくためには、心身の健康管理、日常の生活リズム、社会生活能力といった、1つ1つのスキルの積み上げが大切になります。その職業生活に必要な個人のスキルを5つの項目に分けて整理したものを「就労準備性のピラミッド」といいます。こちらについては、中編で詳しく紹介いたします。
※この記事は2026年1月14日時点での情報で作成しています。
※この記事は、以下を参考に作成しています。
おわりに
前編では、発達障害のある方の特性に合う仕事・職場の探し方について、発達障害のある生徒を長年指導されている竹田智之先生に解説いただきました。特性の短所を強みに変えるリフレーミングや、発達障害の方が強みを生かせる仕事の選び方などを知ることで、お子さんが自分に合った就労先を見つける一歩を踏み出せていただけたらうれしいです。
中編は、発達障害のある方が仕事を続けていくうえで大切なことを、ご紹介していきます。
PROFILE
竹田 智之(たけだ ともゆき)
横浜市教育委員会事務局 学校教育部
特別支援教育相談課 主任指導主事
2006年横浜国立大学教育人間科学部学校教育課程卒業、2008年横浜国立大学教育学研究科修士課程修了、2009年より横浜市立新治特別支援学校常勤講師として勤務。2012年日本リハビリテーション専門学校卒業。理学療法士としての病院勤務、教諭としての特別支援学校勤務を経て、2019年横浜市教育委員会事務局に出向。特別支援教育相談課指導主事として勤務。理学療法士、特別支援学校教諭のキャリアを生かして、障害のある子どもたちの支援を長年おこなっている。