発達障害のある人が生き生きと働くには【中編】-お子さんが仕事を続けていくうえで大切なこと
仕事中の休憩のタイミングやリラックスできる方法を工夫しよう
仕事を無理なく続けていくには、うまくリラックスできる時間を持つことが大切です。しかしASDやADHDの方には、特定の作業に時間を忘れてのめり込む「過集中」をしてしまう方も多くいらっしゃいます。
また、ASDなどの発達障害がある方は、いわゆる正しい姿勢で立ったり、長時間椅子に座ったりするのが難しいことがあります。バランスの影響や筋肉の張りを調整する力などが原因で姿勢が崩れやすい「発達性協調運動障害(DCD)」がある場合もあります。私が見てきた生徒の中には、姿勢の悪さから猫背で肩が凝りやすいという方も多くいらっしゃいました。
しかし、工夫すればうまくリラックスできたり、姿勢も改善できたり、仕事に支障が出ないよう調整できます。それでは、理学療法士の視点も交えながら、休憩のタイミングやリラックス方法など、具体例をご紹介します。
1. 休憩できる仕組みを作る
過集中しがちな方だったら「10分頑張ったら一度休む」など、無理せずに働ける方法を模索しましょう。そして、職場でも上長に相談して、休憩への理解を得たり、一定の時間が経ったら声をかけてもらったり、タイマーを使えるようにしてもらうなど、合理的配慮を求められるような力を身につけましょう。
2. モニターやキーボードの位置などを調整する
パソコン仕事の方は、モニターやキーボードの位置を調整することで、姿勢の悪さが改善されます。そして、疲れが軽減されて仕事の効率アップにつながります。
3. 感覚の違和感を減らす
足の下にタオルを丸めたものを敷いて、足を乗せるなど、足の裏に感覚の刺激を入れることにより、感覚が整って座りやすくなることがあります。デスクワークの際の姿勢保持や集中力にもつながるかもしれません。
4. タオルを使った運動で、肩こりを解消する
発達障害がある方の中には、猫背で肩が凝りやすい方が多いですが、肩こりの予防や解消には、肩甲骨を柔らかくすることが大事です。仕事の休憩時間にタオルを使って腕を捻るなどの体操をしてみましょう。
5. バランスボールに座って集中力を高める
バランスボールは姿勢を改善する効果があります。また、ASDの方の中には感覚が過敏だったり、逆に鈍かったりする方がいますが、バランスボールに座って仕事をすると集中力が高まるケースもあります。職場環境が許せば、導入しても良いかもしれません。
6. 身体をリラックスさせる
休憩時間にラジオ体操を、スピードを少し変えて実施してみたり、見本役の方の動きを皆が真似する模倣動作などをおこなうとよいでしょう。人によってはヨガも効果的です。
なお、職場では取り入れづらいかもしれませんが、在宅ワークの方は、けん玉やお手玉などの昔遊びをベースにしたレクリエーションをおこなったりするのも身体のリラックスに効果があります。昔遊びには、姿勢を保持する筋肉の使い方を求められるものが多く、普段の身体の使い方とは違ったバリエーションになることが多いため、身体の土台作りに役立ちます。
こうした遊びを通して、普段活用していない筋肉が刺激されることで、エンドルフィンやセロトニンといった脳内物質が放出され、リラックスや気分の改善といった、一般的な運動によるリラックス効果をもたらしやすいと考えられます。
7. 身体を思い切り動かしてストレスを発散する
ストレスを解消するには、身体を思い切り動かして発散するとよいでしょう。少しの時間でも良いので、休憩時間に散歩やランニングなど手軽にできる運動を取り入れてみましょう。
8. 運動でリラックス
昼休みに筋力トレーニングをするのも、エンドルフィンやセロトニンといった脳内物質が放出され、心身のリラックスに効果があります。
ただし、発達障害の特性に応じて分量やルーティンに配慮することも重要です。理学療法士などの専門家の助言を受けながら、適切な距離や時間を検討しましょう。
ご紹介した休憩方法やリラックスできるコツは、ご自身にあったものから取り入れてみましょう。
※この記事は2026年1月21日時点での情報で作成しています。
※この記事は、以下を参考に作成しています。
厚労省作成資料「第9回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 事務局説明資料」P20 (厚生労働省)
高齢・障害・求職者雇用支援機構作成資料(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)
おわりに
中編では、発達障害のある方が仕事を続けていくうえで大切なことについて、発達障害のある生徒の指導を長年おこなってきた竹田智之先生にお話を伺いました。
困った時に相談できる力を身につけること、疲れをため過ぎないようにリラックス方法を工夫することなどは、本人にとって重要なのはもちろん、家族や職場の上司・同僚とのコミュニケーションを円滑に進めるうえでも大切なポイントとなります。仕事を長く続けられるよう、自分に合った工夫を取り入れてみましょう。
後編では、業務を円滑に進める相談のコツや支援制度について、詳しくご紹介していきます。
PROFILE
竹田 智之(たけだ ともゆき)
横浜市教育委員会事務局 学校教育部
特別支援教育相談課 主任指導主事
2006年横浜国立大学教育人間科学部学校教育課程卒業、2008年横浜国立大学教育学研究科修士課程修了、2009年より横浜市立新治特別支援学校常勤講師として勤務。2012年日本リハビリテーション専門学校卒業。理学療法士としての病院勤務、教諭としての特別支援学校勤務を経て、2019年横浜市教育委員会事務局に出向。特別支援教育相談課指導主事として勤務。理学療法士、特別支援学校教諭のキャリアを生かして、障害のある子どもたちの支援を長年おこなっている。