楽しく身体を動かそう!【後編】-医療的ケアが必要な子どもたちが外出・スポーツを楽しむコツ

子どもの心身の健康のためには、遊びや運動は欠かせない要素です。医療的ケアが必要な子どもたちにとっても例外ではなく、可能な範囲で身体活動を高めていくことが大切です。
日本理学療法士協会が発行している「Enjoy Your Life」子どもシリーズでは、そうした子どもたちの身体活動や発育をサポートする内容を発信しています。
リガクラボでは、「Enjoy Your Life」に掲載されている内容から、前編として子どもの運動を習慣化して、運動能力を高めるコツなどについて紹介しました。後編となる今回は、医療的ケアが必要な子どもたちが外出やスポーツを楽しめるよう、お出かけ先でアクティビティをする際のポイントや事前準備などについて事例別でご紹介します。
医療的ケアが必要なお子さんも外出・スポーツを楽しもう!
障害があったとしても、外出やスポーツを楽しむ方法は十分にあります。ここでは、医療的ケアが必要なお子さんがお出かけする際の考え方や、楽しめるアクティビティの内容を解説します。
医療的ケアが必要なお子さんはお出かけが難しい?
医療的ケアが必要なお子さんのご家族などから、「気軽に外出ができない」という声をよく聞きます。確かに、医療機器の持参や体調変化への対応など、一般的な外出よりも配慮すべき点が多く、出かけること自体が大変なことも少なくないでしょう。
そんな時は、お出かけが難しい理由ではなく、どうすれば安全で楽しい外出ができるかを考えてみるのが良いかもしれません。外出先での新しい体験ができれば、お子さんの成長にとって貴重な機会となります。
お出かけ先で楽しめるアクティビティ
「身体の状態に配慮が必要だと、活動の選択肢が少ないのでは?」と思う方もいるでしょう。しかし、実際には医療的ケアが必要な子どもたちが参加できる活動はたくさんあります。アクティビティの準備や方法についてわからないことがあれば、理学療法士や専門機関に相談してみましょう。
【主なスポーツやレクリエーション例】
車いすバスケ、電動車いすサッカー、車いすテニス、陸上競技(短距離、長距離他)、フライングディスク、ボッチャ、シッティングバレーボール、野球、ティーボール、チェアスキー・バイスキー、アーチェリー、乗馬、水泳、パラアーティスティックスイム、e-スポーツ、ドローンなど
【ケース別】スポーツの楽しみ方
医療的ケアが必要なお子さんとの外出では、状態に応じた適切な準備と配慮が大切です。ここでは、実際の外出先でのアクティビティについて、ケース別に、準備から実践までの流れを詳しく解説します。
ケース1:重度の肢体不自由で、気管孔・胃ろうのあるお子さんとプールへお出かけ

【事前準備】
水中トラブル防止のために、必要な医療的ケア機器を準備しましょう。例えば気管カニューレ周囲の防水保護や胃ろうチューブなどです。水着は着脱が簡単なものを用意し、ラッシュガードで胃ろう部を保護します。そのほかにも、酸素ボンベを運ぶためのバッグや骨折予防のための浮き具などがあるといいでしょう。
呼吸器を使う方は、お風呂でバッグバルブマスク(鼻や口に空気を送りこみ呼吸をサポートする道具)の使用に慣れておくのもおすすめです。酸素療法を実施している場合は、ボンベを容易に運べるバッグや容器も準備しましょう。
【場所の確認と移動】
バリアフリー設備が整った施設を選び、車いすでの移動ルートを事前に確認しておきましょう。更衣室は家族更衣室があるか、座ったり横になれる場所があるかも重要です。プールサイドに車いすを置く場合、レジャーシートやビニール袋で濡れないような対策をしておくと良いでしょう。
【いざ実践!】
まずは楽しむことを優先に。浮き輪を活用して、水に浮いてみたり流れてみたりすることから始めてみましょう。慣れてきたら自力で泳いでみましょう。水中では体温が下がりやすいため、適度な休憩を心がけて低体温に注意してください。気管切開がある場合は水の侵入を防ぐため、胸部を水面上に保つ姿勢を維持することも大切です。