【第8回:後編】生涯現役!理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法~訪問リハビリテーションで患者さんの在宅生活を支える伊藤清弘さん~

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本企画では長きにわたりお仕事をされていて、現在も生涯現役として活躍されているベテラン理学療法士の方々をピックアップし、現在のお仕事(セカンドキャリア)や、生涯現役を目指すために実践している健康法などをご紹介します。

第8回は脳神経外科と整形外科の急性期から慢性期医療の患者さんを理学療法士として支え、現在では訪問リハビリテーションを中心に活動を続けられている伊藤清弘さんにご登場いただきます。

後編では伊藤さんの健康法について伺っていきます。

PROFILE

伊藤 清弘さん(いとう きよひろ)

伊藤 清弘さん(いとう きよひろ

1955年、京都府舞鶴市で生まれる。岡山大学卒業後、1984年国立近畿中央病院附属リハビリテーション学院卒業。同年、市立舞鶴市民病院入職、脳神経外科と整形外科の急性期から慢性期医療に従事。退職後は岸本病院にて訪問リハビリテーションを中心に在宅を飛びまわっている。専門は地域リハ、福祉用具と住宅改修。行政の住宅改修相談に参画、これまでに1千棟余りの改修に携わる。また高齢者の介護予防事業など幅広く地域活動にも従事している。

伊藤さんの健康管理法について

前編の記事では伊藤さんのキャリアについてお話を伺いました。訪問リハビリテーションを中心に、福祉用具や住宅改修に関するサポートなど、幅広くご活躍されています。お仕事を続けられている中で、健康管理のために具体的にどのようなことをされていますか?

伊藤さん:健康管理といえば、やはり運動と食事でしょうか。実は、特別に運動らしい運動をしているわけではありません。訪問リハビリテーションは外回りの仕事です。そのため、「よく動いていますね」と言われることもありますが、実際は車で家から家へ移動することが多く、思ったほど身体を動かしているわけではないのです。

もともと運動は好きで、学生の頃は剣道やテニスをしていました。社会人になってからも、水泳やジム通い、社交ダンスなどいろいろ試しましたが、なかなか長続きはしませんでした。その代わりというわけでもありませんが、街をぶらぶら歩くのが好きなので、時間があるとよく歩いています。人はよく「アイデアはふとした瞬間にひらめく」と言いますが、私の場合はこの“ブラ歩き”か、食器を洗っているときにアイデアを思いつくことが多いですね。

お気に入りの海岸散歩コースをブラ歩き!

伊藤さん:実は学生時代、私はかなりひどい腰痛に悩まされていました。当時、理学療法士は「白衣の土方」と言われることもあり、急性期の病院で本当にやっていけるのだろうかと不安を感じていたのを覚えています。

そんな私にとって大きな転機となったのが、神奈川リハビリテーション病院でおこなわれていたリフティング講習でした。患者さん、つまり“重量物”である人を動かすにも、きちんとした技術がある、そのことを初めて学びました。以後、ボディメカニクス(人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したもの)やモーションエイド(動かす相手の動きを理解し介助に利用する)といった、身体に負担をかけない対処法を身につけていくことになりました。

また、当時は「腰が痛いときは安静にする」という考え方が一般的でしたが、次第に「動かしながら治す」という発想へと変わっていきました。私自身も、痛みのない範囲でこまめに身体を動かしながら、体幹を中心としたトレーニングを継続するようになりました。身長164センチ、体重57キロと決して恵まれた体格ではありませんが、現在では腰痛への不安はほとんどありません。

介護に関わる方へ指導する際には、あえて自分自身の腰痛の体験をお話しするようにしています。実体験として伝えることで、腰を守る介助の大切さを、より実感をもって理解していただけると感じているからです。

食事については野菜を中心に、たんぱく質を意識して摂るようにしています。ただ、実際の食事管理はすべて妻がしてくれているので、頭が上がりません。

もう一つ心がけていることがあります。一流のアスリートがよく言う「今日の失敗を明日に持ち越さない」という考え方です。負のイメージはその日のうちに整理して、引きずらないようにしています。

運動と食事、そして、心の持ちようも大切にされているのですね。これらを意識されてきて変化したエピソードなどがあれば、お聞かせください。

伊藤さん:江戸時代の儒学者である貝原益軒の著書『養生訓』の中に、「腹八分目」や「体の養生が心の養生となり、心の養生が体の養生になる」という教えがあります。私はこの教えを、自分の経験からまさにその通りだと感じています。

若い頃はかなり不摂生で、身体にも心にも大きな負担をかけていました。30〜40代の頃には高度の高脂血症に悩まされ、トリグリセリド(中性脂肪)が1500mg/㎗を超えることもありました……。正常値が150mg/㎗以内ですから、いわば乳び※状態で、いつ心筋梗塞や脳梗塞が起きてもおかしくないような、いわゆる“ドロドロ血”の状態でした。

また、当時は急性期病院で忙しく働いており、強いストレスも抱えていました。その影響もあって心因性の蕁麻疹を発症し、首から背中にかけて痛みとかゆみが続き、気分も沈みがちな日々を過ごしていました。

転機になったのは40歳で結婚してからです。食生活が大きく変わり、野菜を中心としたバランスのよい食事になりました。するとトリグリセリド(中性脂肪)の値も徐々に下がり、やがて正常範囲に落ち着きました。

さらに子どもが生まれ、家庭で笑顔が増え、気持ちの面でも余裕が生まれました。心のコントロールができるようになると、不思議なことに蕁麻疹も自然と出なくなっていきました。今振り返ると、身体と心は本当に密接につながっているのだと実感します。そういう意味でも、妻と子どもにはとても感謝しています。

※乳び(にゅうび):血液(血清)の中に高濃度の脂質が含まれている状態のこと。

伊藤さんとご家族
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