【助成事業・後編】2022年度障がい者団体助成事業紹介〜病気や障害があっても暮らしやすい社会へ〜医療的ケアを必要とする児童に対する就学支援の拡充をめざす会

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公益社団法人 日本理学療法士協会は、「2022年度障がい者団体助成事業」を実施し、助成対象として3団体を採用しました。

「障がい者団体助成事業」は、国民の皆様が住み慣れた地域で安心して生活できる社会を構築することを目的におこなわれている取り組みです。日本理学療法士協会では、協会の理念に基づき、すべての方の健康と幸福に寄与するため、障がい者団体助成の対象となる団体を公募しその活動を応援しています。

前編では、採用された3団体の中から2団体の活動と採択された助成事業についてご紹介しました。後編となる今回は、1団体の活動と採択された助成事業についてご紹介します。この記事を機に、障害や障害のある方々の暮らし、それを支える方々の活動について知っていただき、考えていただけたらうれしいです。

医療的ケアを必要とする児童に対する就学支援の拡充をめざす会

医療的ケア児の就学及び教育参加に対する支援の拡充を

団体が目指す医療的ケア児と健常者の児童が同じ環境で教育を受けられる様子をイラスト化したもの

医療的ケア児を家庭外に預ける際には、医療的ケアの担い手の確保や施設側の受け入れ体制等で大変苦慮する現状があります。また、医療的ケア児の保護者の悩みとして、「家庭外で子どもの医療的ケアに対応してもらえるのか」という強い不安感が挙げられます。

一方で、医療的ケア児の保護者は、子どもの成長に合わせて、医療的ケア児も健常の子どもと同様の選択として、家庭外での学びの場である「保育園(所)」「幼稚園」「学校」などへの参加を希望しています。「医療的ケア」に対応できる環境が整えば可能です。

そこで、「医療的ケアを必要とする児童に対する就学支援の拡充をめざす会」では、医療的ケア児が特別支援学校に就学するにあたり、送迎や課業時間中の付き添いなど家族が過度な負担を求められている現状を変え、健常児と同様の環境で教育を受けられるように環境整備を進めることを目指し、大阪府を中心に活動されています。

医療的ケアを必要とする児童に対する就学支援の拡充をめざす会 ホームページ

医療的ケア児の就学環境の向上と整備に向けた取り組み〜採択事業について〜

「2022年度障がい者団体助成事業」では、医療的ケア通学支援事業に関するアンケート調査、大阪府教育庁への要望書提出、医療的ケア児支援についてのイベント実施の3つの活動が採択されました。

1)医療的ケア通学支援事業に関するアンケート調査
大阪府下の医療的ケア児を取り巻く状況の詳細な情報を集約し、医療的ケア児に適切な支援が提供される社会を実現するための方策を考察する目的で、「大阪府医療的ケア児就学WEBアンケート」調査が実施されました。

アンケートでは、大阪府下の「医療的ケア通学支援事業」で医療的ケア児の支援に携わっている医療・福祉事業者の方々に、「医療的ケア通学支援事業」への参入状況や考えを伺いました。

また、大阪府立支援学校ならびに地域小中学校に在籍している医療的ケア児保護者、または、医療的ケア児ご本人に加え、未就学の医療的ケア児も調査対象とし、就学や教育への参加についての現状や意見を伺いました。

そして、アンケート結果から以下を考察されたとのことです。

  • 制度をより円滑に運用していくためには、「医療的ケア通学支援事業」に携わる事業者や医療的ケア児の保護者のニーズを大阪府教育庁が把握し、制度の利用促進に向けて、制度の普及・啓発活動や行政機関内の関係各部署間の連携の強化など、具体的かつ効果的な方策を遅滞なく実行していかなければならない
  • 保護者の常態的な付添いをなくし、高度な医療的ケアが必要な児童生徒であっても安心・安全に学校生活を送ることができる体制を構築していくことが求められる
「大阪府医療的ケア児就学WEBアンケート」結果はこちら

2)大阪府教育庁への要望書提出
医療的ケアを必要とする児童に対する就学支援の拡充をめざす会は、アンケート結果の考察から導き出した課題と具体的な解決策を、「大阪府下の医療的ケア児における教育環境改善及び整備に向けた提言書」としてまとめて大阪府教育庁に提出し、大阪府教育庁との意見交換会が実施されました。

医療的ケア児支援法施行から2年目にあたる2022年9月16日、大阪府教育庁橋本教育長に提言書を提出

意見交換会では、医療的ケア児も健常の児童生徒と同様に教育環境に参加することができ、その保護者や家族も豊かな社会生活を営むことのできる社会の実現を強く要望したとのことです。また、そのような社会を実現するためには、大阪府立の支援学校が「大阪府立支援学校における医療的ケアの実施についてのガイドライン」を遵守していく体制を構築し、各種民間医療・福祉事業者との連携を強化して、高度な医療的ケアを要する児童生徒に対応できる支援体制を整えていかなければならないことなどをお伝えしたとのことです。

3)医療的ケア児支援についてのイベント実施
医療的ケアを必要とする児童に対する就学支援の拡充をめざす会の本拠地となる大阪府茨木市の福祉事業を担う茨木市社会福祉協議会において、医療的ケア児の現状に関する認識を深めてもらうことを目的として研修会が開催されました。

茨木市社会福祉協議会での研修会の様子

日本理学療法士協会は、障がい者を支える活動を支援しています

後編では、助成対象として採択された1団体の取り組みと助成事業の活動内容についてご紹介しました。今回の記事で、医療的ケア児を取り巻く現状とその解決に向け行動する団体について知っていただけたら幸いです。

世の中には様々な病気や障害のある方々、そして当事者の方々を支えようとご尽力されている方々もたくさんいらっしゃいます。ぜひこの機会に理解を深め、考えていただけたらうれしいです。

日本理学療法士協会では、障がい者団体助成事業を設け、前編・後編でご紹介した3団体のような障がい者の生活を支える団体を支援しています。障がい者団体助成事業の詳細や、昨年度のレポートは、下記よりご覧ください。

日本理学療法士協会 障がい者団体助成事業 【助成事業・前編】障がい者の自分らしい暮らしやその家族を応援!〜2021年度障がい者団体助成事業紹介〜全国頸髄損傷者連絡会・特定非営利活動法人かけはしねっと 【助成事業・中編】障がい者の自分らしい暮らしやその家族を応援!〜2021年度障がい者団体助成事業紹介〜公益社団法人 銀鈴会・西宮市肢体不自由児者父母の会 【助成事業・後編】障がい者の自分らしい暮らしやその家族を応援!〜2021年度障がい者団体助成事業紹介〜こころリカバリーフットボール協会