【第1回】発達障害を知ろう!運動が苦手・手先が不器用なのは、発達障害?〜子どもの「できた!」を育む支援を〜
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近年、テレビや新聞などのメディアで発達障害が取り上げられるようになり、「発達障害」という用語をよく耳にするようになりました。しかし、発達障害のひとつとして、運動や手先の不器用さに支援が必要な子ども達がいることは、まだ多くの方が知らないのではないでしょうか。
今回からスタートする「発達障害を知ろう!」では、発達障害のある方々やご家族、支援者などに理学療法士として関わられている深澤 宏昭さんに、発達障害の中でも運動の苦手さ、手先の不器用さに関わる特性とその支援について連載記事としてお話を伺います。
【特集】発達障害を知ろう!
発達障害とは?
まず、発達障害とはどのような疾患か教えてください。
深澤さん:発達障害支援法の発達障害の定義によると、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」となっています。
出典:「発達障害の理解のために」(厚生労働省)
医療分野では発達障害は「神経発達症」に含まれます。そして、発達障害(神経発達症)には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)、知的発達症(ID)、発達性協調運動症(DCD)などの名称を使用します。
自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係や社会的コミュニケーションの困難さ、反復的な行動や特定のものへのこだわり、感覚の過敏さまたは鈍感さなどの症状があり、注意欠如多動症(ADHD)は、不注意さや、多動性および衝動性などの症状があり、発達性協調運動症(DCD)は、運動が苦手・手先が不器用などの症状があります。
発達障害(神経発達症)は、診断基準には満たない程度の特性をもつ方や、知的能力のばらつきが認められることも多く、複数の症状が重複して現れることもよく知られています。
発達性協調運動症(DCD)とは?
発達障害は、様々な特性があるのですね。発達性協調運動症(DCD)は、あまり馴染みのない用語のように感じますが、どのような障害で、特性があるのでしょうか。
深澤さん:発達性協調運動症(DCD)は、発達障害(神経発達症)の一つのタイプとして知られています。発達性協調運動症(DCD)の運動や動作のぎこちなさは、運動だから筋肉に問題があるのではないかと認識されがちですが、別々の部位を同時に動かす協調的な運動をコントロールすることや新しい運動を学習することを含む、脳システムの問題といわれています。
運動の動作にぎこちなさがあると、例えば、体育での縄跳びや鉄棒、跳び箱、ボール運動だけでなく、遊びやレクリエーションなどの活動、身体を洗うなどの入浴動作、スプーン・フォーク・箸などの食事動作、字を書くなどの書字動作など、日常生活の動作においても、運動の遂行が上手くいかないことがあります。
発達性協調運動症(DCD)は、単独の診断だけでなく、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)、知的発達症(ID)と合併することも知られています。自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)と合併し、発達性協調運動症(DCD)の症状がある子どもに対しては、対人関係や社会的コミュケーション面、行動面の困難さの支援だけでなく、運動の不器用さに対する支援が必要といわれています。
出典:藪中良彦、ほか「小児理学療法学 第1版 第4刷」(メジカルビュー社、2024年2月10日発行、P404)をリガクラボにて一部改変
昔から、運動の不器用さがある子ども達は広く知られていました。発育発達とともに症状は改善していくと思われていましたが、研究が進み、青年期や成人になっても症状が残り、自己評価や自己肯定感の低下などの二次的な問題と関連することが分かってきました。そのため、発達性協調運動症(DCD)の症状がある子ども達の運動の不器用さに対して、日常生活の困り感を和らげていく支援が必要です。
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