【第1回】私と理学療法~封入体筋炎を発症、筋肉の萎縮に負けず運動に励む日々~

タイトルとURLをコピーしました。
    1 2

新連載「私と理学療法」では、ご自身やご家族が、ケガや病気の治療で理学療法を受けた方の体験談をご紹介していきます。

第1回となる今回は、封入体筋炎(ふうにゅうたいきんえん)という難病を発症し、治療法がない中、筋力を保つために今も理学療法士の指導を受けている方の体験談です。

PROFILE

高木 ひとみさん(76歳・女性

神奈川県在住
理学療法のきっかけ:封入体筋炎

封入体筋炎を発症、筋肉の萎縮に負けず運動に励む日々

難病を発症し初めて理学療法を受けることに

私は2021年に「封入体筋炎」という難病を発症しました。数年前からなんとなく立ち上がるのが辛くなったり、瓶の蓋を開けるのが困難になってきたことから、念のためと受診したところ、病気が見つかりました。

封入体筋炎は、大腿部や手指の筋肉が萎縮する病気です。筋力が低下するため、階段を登りにくい、指先で物がつまみにくいなどの症状が出ます。(※)今のところ治療法が確立されておらず、筋力をキープするために継続的な運動が必要で、発症当時は病院で、ゴム製のチューブに脚を通し両足を開く、脚の間にボールを挟んで締める、といった運動を理学療法の治療としておこないました。病気が見つかった時はこれで人生が終わってしまうのでは…とショックでしたが、運動を始めてからは、まだまだ頑張ることができると感じ、生きる希望が湧いてきて前向きな気持ちになりました。

病院での理学療法は順調に進んでいましたが、医療保険の適用を受けながら理学療法を継続できるのは3か月間とのことでした。そのため、その後は要介護認定を受け、2022年11月より理学療法士の方が所属するデイサービスに通いながら、引き続き運動をおこなうことになりました。

※「難病情報センターホームページ(2024年4月現在)」から引用、改変

デイサービスの頼れる理学療法士との出会い

新たに通うことになったデイサービスで理学療法士の指導を受ける高木さん

デイサービスではおもに病院でおこなっていた内容に加えて、平行棒をつかんでのスクワットや足の上げ下げ・ステップを使用した昇降運動、下半身の筋力を鍛えるためのレッグプレス、バランスクッションで体幹を整える、といったプログラムを受けています。

このデイサービスで出会った理学療法士の方がとても頼りになる方でした。施術に加え、的確なアドバイスのもと、今でも筋力をキープできている状態です。

私は大腿部の筋肉がほぼなくなっているため、歩く時に腰・背中等に大きな負担がかかり、痛みが出るのですが、その都度理学療法士の方が身体を見ながら状態に合わせたメニューを考えてくださいます。また、身体の歪みを治す、痛みを考慮した運動をおこなう、身体のバランスを整える等の調整もしてくださり、とてもありがたいです。

このほか、日常生活での様々な動作のコツも教えてくださいます。例えば、日常生活では特に歩行や立ち上がる際、困っていましたが、「姿勢を変えると良いですよ」「足の裏全体に力を入れて」「今日の歩くフォームは良いですね」など、日によって様々なアドバイスをくださり、実践したところスムーズに歩けるようになりました。病める人の側に立って親切にアドバイスや施術をしていただけるので、大変感謝しています。

平行棒を使って自宅の段差を想定した歩行の練習をおこなっている様子

また、デイサービスで私が特に感心したのは、病気の後遺症で当初は車椅子で通所されていた方が、理学療法士の方のきめ細やかな施術とアドバイスのおかげで、杖を使って一人で歩くことが可能になり、最終的にはご自宅に帰るまでに快復したことです。

そして、理学療法士の方は、利用者一人ひとりに丁寧に施術するだけでなく、何よりも心を込めて接してくださいます。他の利用者の方も、マンツーマンの親身なサポートで良くなっているように見受けられます。運動中にほめて励ますなど、前向きな声かけがみんなの力になっているようにも感じます。

私は、病院では治療としての理学療法を、デイサービスでは患者の生活に沿ったサポートとしての理学療法を提供してくださっているように感じています。日常生活へ復帰するお手伝いをしてくださる理学療法士の姿には敬服するばかりです。 デイサービスに理学療法士がいない施設もあるので、理学療法士がいる施設に通うことができて本当に良かったと思いました。

私にとって必要不可欠な理学療法士の支え

私は封入体筋炎になるまで、病院での理学療法を3か月で終えた後に、このような介護保険適用のデイサービスを受けられることを知りませんでした。そして、デイサービスでの理学療法士の支えがこんなにも私の力になり、いかに必要で大切なものか、初めて知りました。

後遺症で何年も通所せざるを得ない方や、私のように難病に罹患した者は、筋力を保つために理学療法を受ける必要があります。私を担当してくださった方のように、熱心で誠実な理学療法士の方が、今後たくさん増えていってほしいと切に願います。

また、私と同じように病気で筋力が落ちてしまった方も、時間は要しても必ず快復に向かうと信じて、頑張っていただきたいです。

せっかく理学療法士の方にいただいたこの機会を活かし、これからも今と変わらない生活を維持できるように、難病に負けず運動を頑張っていきたいと思います。息子たちを含めた家族での旅行なども、今後もたくさん行きたいです。

担当理学療法士からの応援メッセージ

お名前:鈴木宏通さん

ご自身の病気を理解し、前向きに取り組まれています。進行性の疾患ではありますが、今の生活を続けていきたいという高木さんの希望に沿えるよう、一緒にプログラムを考えています。生活する中で気になるところや、痛み、メンタル面など含めフォローしていきたいと思います。

ご利用後は心身ともに改善がみられています。これからも一緒に取り組んでいきたいと思います。より良い在宅生活を続けられるよう頑張っていきましょう。

次へ:おわりに
    1 2