【前編】熱中症やケガを予防して野球を楽しもう!~クーリングを活用した熱中症対策編~

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皆さんは2023年から全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)に導入された「クーリングタイム」をご存じでしょうか。クーリングタイムは、熱中症対策として、10分間の休憩時間に、選手たちが身体を冷却したり、水分を補給したりします。選手生活をより長く安全に続けるには、こうした熱中症やケガの予防が欠かせません。

今回は前・中・後編の3回にわたって、中高生が野球をプレーする際の熱中症対策や、ストレッチや投球フォームのチェックでケガを防ぐ方法などについて、2023年に開催された第105回全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)のサポート活動にも従事した理学療法士の稲田竜太さんにお話を伺います。

中高生の野球における熱中症の実態について

独立行政法人日本スポーツ振興センターの調査によると、高校生の部活動において2023年に熱中症が発生した件数は、野球が最も多く、全体の発生件数の約2割を占めていました。

また、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)期間中の気温が年々上昇しており、それに伴って熱中症発生の危険性が高まっています。

気象庁のデータによると、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)が開催される兵庫県西宮市に近い神戸市の8月の平均気温は、1970年代では27.2度だったのに対して、2020年代では約29.2度です。(※1)さらに「猛暑日」と呼ばれる最高気温35度を超える日は、中日新聞によると「1970~80年代の4~5倍に達するペース」で増えています。(※2)

そこで、暑さ対策・熱中症対策の1つとしてクーリングタイムが始まりました。

※1 気象庁「各種データ・資料」神戸(兵庫市)2020年(月ごとの値)主な要素をもとに算出
※2 出典:「真夏の開催に批判も…実際、甲子園はどれだけ暑くなったのか!? “怪物”江川、KKコンビの時代から猛暑日は“データ上”で5倍に」 2023年8月18日付け 中日スポーツ 東京中日スポーツから引用

熱中症とは

熱中症とは、熱にあたるという意味で、「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」など炎天下で暑さがある環境によって生じる障害の総称です。

熱中症の症状

症状には、以下のような種類があります。

中でも、「熱射病」は重症な病型です。適切な処置が遅れると高体温から多臓器不全を併発し、亡くなってしまう可能性があり、特に注意が必要です。

野球の現場では、熱中症の症状の1つとして「足がつる」という筋けいれんなどの症状が発生することが多いです。

熱中症を発症しやすい状況

熱中症が起こりやすい状況として、気温や湿度の高さ、日差しが強く風が弱いといった環境面の他、暑さに身体が慣れていないこと(暑熱順化不足)や睡眠不足・体調不良(下痢など)等の身体面の状況が原因となることもあります。また、高校球児たちにとっては、大会初戦などで緊張状態が強い中でのプレーという心理面も熱中症を起こしやすくする可能性があります。

熱中症が疑われたらするべき応急処置

熱中症が疑われる場合、まずは、直射日光があたる場所や高温の場所から、日陰やクーラーの効いている室内など涼しい場所に移動することが大切です。そして、水分や塩分を補給しましょう。OS-1などの経口補水液の補給も効果的です。

水分の補給と同時に、氷などを使って身体を冷やして体温を下げることも重要です。また、野球の練習や試合中の場合は、ユニフォームのベルトを緩めたり、スパイクを脱いでリラックスしたりすることも対処方法の1つとなります。

熱中症の予防方法

熱中症の予防方法で最も大切なのは、こまめな水分補給です。飲み物は、水やお茶よりも多くの栄養素を含んでいるスポーツドリンクが良いでしょう。

さらに、スポーツドリンクを液体と微細な氷が混ざったアイススラリー(シャーベット状)にして補給すると、身体の中から体温を下げる「内部冷却」として熱中症の予防に有効です。アイススラリーは、氷よりも流動性があり、水よりも冷却能力があるため、効率よく身体を冷却できます。

なお、アイススラリーと同程度の冷却効果があるクラッシュドアイスは、ご自宅でも簡単に作製できます。氷とスポーツ飲料を6:4の割合でミキサーにかけたものを、魔法瓶に注いで保存し、練習や試合に持っていきましょう。

さらに、塩分を程よく摂取することも熱中症予防に効果的です。

他には、休憩のタイミングで、身体を冷やす「クーリング」も効果的な予防法の1つです。冷やしたペットボトルを握ったり、バケツなどに冷たい水を溜めて手をつけたりして手のひらを冷やす「手掌冷却」などがあります。詳しくは次項で紹介します。

また、練習中・試合中だけ注意するのではなく、毎日の生活において、バランスの良い食事を摂取し、十分な睡眠時間を確保することも日頃から実施できる熱中症対策です。

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