【前編】仕事と介護の両立 家族の介護が必要になる前に~事前準備しませんか?~
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「介護は突然訪れる」という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
介護はいつ始まるか分からず、突然仕事と介護の両立が必要になることや離職せざるを得ない必要に迫られることもあります。
今回リガクラボでは、株式会社日本総合研究所にて仕事と介護の両立支援に関するプロジェクトに携わられている城岡 秀彦さん(理学療法士)と石田 遥太郎さんに、仕事と介護の両立についてお話を伺いました。
お二人から伺った内容は、前編と後編の全2回にわたってご紹介していきます。前編では、仕事と介護の両立の現状や背景、事前準備のためのポイントなどをお伝えします。
【特集】仕事と介護の両立
仕事をしながら介護を行うために~事前のチェック~
城岡さん:仕事をしながら介護を行うためには、事前準備が大切です。事前準備すべき項目は、主に、親や親族の状況把握と、介護に関連する仕組み・制度の把握です。
【親や親族の状況の把握】
- 親が今後どう生きたいか、希望を話し合っておく
- 親の生活パターンや趣味趣向、経済状況、大切な書類の保管場所を把握しておく
- 親の健康状況を把握しておく
- 兄弟姉妹など親族の健康状態や、家庭・仕事の状況を把握しておく
【介護に関連する仕組・制度の把握】
- 介護保険制度、介護サービスの概要を把握しておく
- 介護に直面した時にどこに相談すればよいか、その窓口を知っておく
- 勤務先で活用できる両立支援制度の概要を把握しておく
なぜ、事前準備をすることが大切なのでしょうか。
城岡さん:どのような介護が必要となるか、将来予測が困難であることが理由です。
認知症等によって生じる心身状況の変化は、緩やかに進行すると思われがちですが、急激に重度化する場合があります。一度介護が必要になると、いつ終わりが来るかもわからず、10年以上、仕事と介護の両立が必要になる場合もあります。
そのため、介護に直面する前に介護の準備を始めておくことが、適切なサービスや支援を受けるための選択肢の確保や、心や身体の負担軽減などに繋がります。
現状と背景
現在、仕事をしながら介護を行っている方は、どのくらいいるのでしょうか。
石田さん:仕事をしながら介護を行う方の数は約300万人にものぼります。また、厚生労働省の雇用動向調査によると、介護離職者の数は毎年おおむね10万人前後で推移していることから、仕事をしながら介護を行う方は、介護離職者に対して数十倍にも達します。
※この作図は、以下を参考にリガクラボにて作成
「経済産業省における介護分野の取り組みについて」(経済産業省)
仕事をしながら介護をされている方は、随分といるのですね。家族の介護は、身近で一緒に時間を過ごすことができる一方、介護者に時間的な制約や身体的な負担もあるのではないでしょうか。
石田さん:そうですね。経済産業省が東証プライム上場企業を対象に行った調査によると、家族の介護を始めて以降に感じる仕事への影響について「自身の仕事のパフォーマンスが低下している」と回答した方が3割を超えています。特に、女性管理職では41.7%と、半数近くがパフォーマンスの低下を感じています※1。
仕事をしながら介護をされている方が両立できるような支援が必要不可欠ですね。社会全体や企業にとっては、どのような影響があるのでしょうか。
石田さん:2030年には、仕事をしながら介護を行う方の離職や労働生産性の低下に伴う経済損失額は約9兆円に上るとされており、国家的なインパクトも非常に大きくなっています。
さらに、3人に1人が高齢者の社会となる日本では、介護需要がさらに高まり、社会保障費がひっ迫していくことが予想されます。そのような状況にもかかわらず、介護人材は不足しているため、高齢者は十分に介護を受けられない可能性があります。そのため、家族は仕事と介護を両立することが求められ、それにより労働生産性が落ち、企業活動が低迷してしまう事態が予想されます。
今後、「介護」の問題は、個人の問題だけでなく、家族、企業、そして社会全体の問題として目を向けていかなくてはならないと思います。
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