【第3回】リハビリテーションの4つのステージとは~脳卒中になったらどうなるの?~
-
1
2
皆さまは骨折や病気にかかったとき、どのような流れでリハビリテーションを受けるかイメージできますか?第1回では、リハビリには「急性期」「回復期」「維持期・生活期」「終末期」の4つのステージがあることをお伝えしました。では、それぞれのステージで理学療法士がどのような流れで疾患に関わり、どのようなリハビリをおこなうのでしょうか。
第2回は大腿骨頚部骨折を取り上げて、各ステージにおけるリハビリの役割や内容についてご説明しました。第3回は、介護が必要となる原因の疾患としても知られている「脳卒中」を取り上げてご紹介していきます。お話は桜十字福岡病院の久保田勝徳さん(理学療法士)に伺いました。
【特集】リハビリテーションの4つのステージとは
脳卒中とは?
今回は脳卒中で半身が麻痺してしまった患者さんを取り上げて、リハビリの各ステージについてご説明します。脳卒中は脳にある血管が破れたり詰まったりすることで、脳に血液が届かなくなり、運動や感覚、自律神経に障害が生じる病気で、脳の血管が破れる脳出血やくも膜下出血、そして脳の血管が詰まる脳梗塞があります。
その症状は損傷した脳の場所によってさまざまです。顔面や手足の麻痺だけではなく、しびれや身体の感覚がつかみにくくなる感覚障害や身体の動きを調節できずにふらついてしまう失調症状、さらには注意機能や認知機能の低下を引き起こし1つのことに集中できない、物忘れなどの症状もあります。これらの症状によって座っている姿勢が崩れたり、日常生活の介助が必要となることが多いとされています。
また、空間の半分が認識できなくなる「半側空間無視」や、麻痺した手足を忘れてしまう「身体失認」といったような高次脳機能障害と呼ばれる症状が出てしまうこともあります。高次脳機能障害はパッと見ただけでは分からないことが多いため、ご家族や周囲の人たちの理解が得られにくいこともあります。
これらの症状が複雑に絡み合うため、脳卒中になると「寝たきり」になってしまうというイメージがあるかもしれません。しかし、適切な時期に適切なリハビリを受けることによって「寝たきり」になるリスクを軽減することができます。そこで、今回は急性期、回復期、維持期・生活期においてのリハビリについて紹介したいと思います。
出典:厚労省 第9回社会保障審議会介護保険部会 資料7「高齢者リハビリテーションの3つのモデル」改変
治療方法とリハビリの目的
治療方法には、血栓を溶かす薬剤を点滴で注入する治療(血栓溶解療法)、血管内にカテーテルを入れて血栓を取り除く治療(血管内治療)、血液を固まりにくくしたり脳の血流を良くしたりする薬を使った投薬の治療などがあります。
さらに脳卒中の患者さんには、麻痺の改善や筋力の増加、歩行や日常生活動作の再獲得につながるリハビリをおこないます。また、退院後の目標に即した動作練習や、退院後に継続してできる運動の指導、ご家族への介助指導、家屋調査なども実施します。
リハビリの目的は、脳の機能の回復、残されている機能の強化、そして住宅や日常生活の環境を整えることです。動作練習や筋力トレーニングだけではなく、患者さんが元の生活に戻ってから自分らしい生活を送れるようになることが大切です。
それでは、急性期、回復期、維持期・生活期と順を追って、各ステージのリハビリの目的と内容について説明していきます。
急性期のリハビリ
脳卒中になって一命を取り留めた急性期では、意識状態の低下や重篤な麻痺によって手足が動かせないことが多いです。また、呼吸管理のための人工呼吸器などさまざまなチューブ類が挿入されていることも少なくありません。
病気になったら安静が一番と考えてしまうかもしれませんが、このような状態であっても何もしなければ全身の筋力や体力が衰えるだけでなく、手足の関節が硬くなってしまいます。そして、いざ目覚めたときには「寝たきり」の状態から抜け出すことができなくなる可能性が高まります。そこで重要となるのが早期からの「理学療法」です。
急性期リハビリの流れ
人工呼吸器を装着していて、一見起こすなんてできない状態の患者さんでも、徹底した医学的管理のもとでベッドから起こし、座っている姿勢や立っている姿勢を保つ練習をしていきます。
また、重篤な麻痺によって足に力が入らず、立っている姿勢を保つことができない患者さんの場合、膝や足の動きを固定して身体を支える「長下肢装具」と呼ばれる補助具で足の力を補います。そうすることで立位時の安定を図り、早期からの立ち上がり練習や歩く練習がおこないやすくなります。
急変などに対するリスク管理を徹底したうえで早期から理学療法をおこなうことは、効率的な麻痺の改善や筋力の増加、歩行などの日常生活動作の再獲得につながっていきます。
-
1
2