【前編】三浦豪太さんインタビュー 楽しみながらトレーニングできる。三浦さんが語る登山の魅力

写真:アコンカグア登頂を目指す三浦雄一郎さん(左)と豪太さん(右)

健康を意識して、日常に山登りを取り入れるメリット

―健康を意識したトレーニングとして、山登りを取り入れる場合のポイントは何でしょうか

三浦さん:山登りにトレーニング目標を設定するのだったら、1か月に累計標高(注:登山において、上りで獲得した標高の合計のこと。)2,000メートル分の高さを登ってみることですね。ビル1階の高さが3メートルとすると、10階登ったらだいたい30メートルくらいになります。標高差を利用するトレーニングは。実はすごく効率がいいんです。駅の階段を上がると結構疲れますよね。横に1メートル移動するよりも標高で1メートル上がるエネルギーは全然違うんです。標高1メートルは横の距離に換算すると30倍、つまり30メートル歩くのと同じエネルギーともいわれています。

つまり、累計標高2,000メートルを横の距離にすると、約60キロメートル走るのと同じとも言えます。1か月60キロメートル走ることは、フルマラソンで4時間切るランナーがトレーニングの目標にするくらいの距離です。それと同等のエネルギーということですね。

でも普段の生活では、累計標高2,000メートルって結構大変ですよね。ビルを10階まで上がって30メートルと考えると、平日に毎日上っても1か月で900メートルにしかなりません。ところが「山登り」だと、標高差が最低でも500メートル以上はありますから、週末に2回登れば1,000メートル以上になるわけです。

―1メートル登るのに、すごいエネルギーを使っているんですね。山登りをするうえで、初心者の方が気をつけることはありますか?

三浦さん:『上り』よりも『下り』に気をつけてほしいですね。山下りにはそのための技術があるので、下りで使う筋肉をいかに働かせるかが大事です。膝を曲げずに、勢いよく下っていってしまう人がいますが、そうするとわずか20㎝くらいの段でも1トンくらいの重さがかかってしまうんです。そんなことをしたら膝が壊れてしまうので、体重を移す前になるべく衝撃がかからないように、後ろ足を深く曲げて、つま先から着地します。関節内は血管が無く、一度傷がつくとなかなか治らないので大事に使いましょう。

このように、山登りは理想的な有酸素運動である上りと、理想的な筋力運動の下りの組み合わせです。山登りをしっかりできるということは、筋肉の特性を理解して生かしているとも言えますね。

―ありがとうございました。山登りをするときは、上りと下り、使う筋肉をしっかり意識して挑みたいと思います!

次の記事では、「三浦豪太さんが父・雄一郎さんから受け継いだものとは?」をお伺いします。

前へ:山登りの魅力とは?

PROFILE

三浦 豪太(みうら ごうた

1969年8月10日生まれ。プロスキーヤーであり登山家である三浦雄一郎さんを父に持ち、自身もスキーのモーグル競技において長野オリンピック13位、ワールドカップ5位になるなど活躍。その一方で、米国ユタ大学スポーツ生理学部を卒業、順天堂大学大学院で博士課程を取得した医学博士でもある。11歳で最年少のキリマンジャロ登頂を達成。2013年には、雄一郎さんと2度目のエベレスト登頂を果たし、世界初である親子で2度の登頂記録を樹立した。ソチオリンピックでの、独特な解説も話題に。NPO法人ナスターレース協会理事長。慶應義塾大学特任准教授。