【後編】三浦豪太さんインタビュー 子どもたちに、世界の大会に出られるドキドキ感を。三浦さんの次の夢は―

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プロスキーヤーであり登山家の三浦豪太さんへのインタビュー最終回は、日本の未来を担う子どもたちへのメッセージをお伝えします。

何かに打ち込むなかで仲間を作ろう―子どもたちへのメッセージ

―お父様である雄一郎さんから教わった教訓や、ご自身のお子様への思いなど、ご家族との関わりの中でいろいろなことを感じられているかと思いますが、今の子どもたちへのメッセージはありますか?

三浦さん:学校は何をする場所なんだろう、ということなんですが、僕は、学校では興味があることを学べればいいと思っています。
「学校は学ぶだけの場所ではなく、友達を作る場所」という意見もあります。しかし、今の時代に友達づくりを目的に学校に行くと、友達を作れないことが不幸に感じられてしまいます。もちろん、友達を作るのも大事ですが、それが目的ではないと思っています。

僕は、勉強を通じて、あるいはスポーツを通じて仲間意識が生まれるのはいいと思うけれど、「仲間」のための「仲間」は上手くいかないと思っています。山でもスポーツでも、何かテーマを持って打ち込んでいく中で、共通項を持っている子どもたちなら自然発生的に仲良くなれると思います。

―何かに打ち込めば、自然と仲間が集まってくる、ということでしょうか。

三浦さん:そうですね、そこでユニークな考え方をいろいろと吸収できるのではないかと思います。テーマを持っていなければ、ユニークな考え方へのアプローチも分からないでしょうし。僕も長い間留学をしていたけど、語学留学だけ、言葉を話すことだけが目的の人はだいたい続いていなかったですね。それよりも、大学の研究とかスキーとか、その他のスポーツとか、何かテーマがあると、それを通じて良い仲間ができる。人間関係で煩わしいことがあったら、そっちが目的じゃないよって、子どもたちに伝えたいです。

父、雄一郎さんと叶えたい夢

―50代を前に描いている夢、例えば、これから登りたい山はありますか?

三浦さん:ひとつは、アコンカグアで今回行けなかったポーランド氷河ルート(注:Polish Glacier Route。アコンカグア北東面の登山ルートでノーマルルートに比べ登山技術が必要とされている)はスキーで滑ってみたいですね。お父さんがかつて滑った、エベレストのサウスコル(注:標高7900メートル、世界最高峰エベレストと第4位ローツェの間にある峠)にも行ってみたい。

雄一郎さんと登る予定もありますか?

三浦さん:お父さんは90歳でエベレストって言っていたけど、先日エベレスト頂上で4人くらい亡くなったニュースを聞いて、キリマンジャロにしようかな、と言っていました。お父さんの夢なので、やりたいようにやってほしい。

写真:アコンカグア登頂中、標高4,200メートルのプラザ・アルゼンティーナにて親子撮影

―雄一郎さんのアコンカグア登頂断念の際は、断念するよう説得されたのですか?

三浦さん:それが僕の役割でした。同行した大城和恵先生(チームドクター)から、お父さんの健康状態を聞いて、続行は難しいとの判断だったので説得しました。お父さんが80歳の時のエベレスト登頂でもお世話になった先生なので、医師と患者の信頼感があるうえでの判断だと感じました。チームを作って登山する意義はそういうところにあります。僕が分からない専門的な部分のインプットをしてくれる。

ドクターストップという重い判断を大城先生がされた時は、まず僕と先生でじっくり話して、山岳プランナーの倉岡裕之さん(登攀リーダー)とも話して、僕の考えをまとめてから、「お父さん、今回はここまでだ」と伝えました。

でもお父さん、全然首を縦に振らなくて…。今でも納得はしていないかもしれないけれど、自分なりの落としどころをつけて、次につなげるというのは大事だと思っています。目標が山だとしても、人生はそれだけじゃないから。それをやることを目的に、その過程も大事だし、そこに行くという姿勢も大事だし、行動に移すのも大事。ただその夢がその人のすべてじゃないし、それが今回できなかったからと言って、次もできないわけじゃない。
今回ドクターストップで下山したことは事実だけど、次どうしようっていう答えはお父さんが見つけてくるので、その気持ちや姿勢が僕らにとっての救いです。

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