三浦豪太さんインタビュー(3)子どもたちに、世界の大会に出られるドキドキ感を。三浦さんの次の夢は―

プロスキーヤーであり登山家の三浦豪太さんへのインタビュー最終回は、日本の未来を担う子どもたちへのメッセージをお伝えします。

何かに打ち込むなかで仲間を作ろう―子どもたちへのメッセージ

―お父様である雄一郎さんから教わった教訓や、ご自身のお子様への思いなど、ご家族との関わりの中でいろいろなことを感じられているかと思いますが、今の子どもたちへのメッセージはありますか?

三浦さん:学校は何をする場所なんだろう、ということなんですが、僕は、学校では興味があることを学べればいいと思っています。
「学校は学ぶだけの場所ではなく、友達を作る場所」という意見もあります。しかし、今の時代に友達づくりを目的に学校に行くと、友達を作れないことが不幸に感じられてしまいます。もちろん、友達を作るのも大事ですが、それが目的ではないと思っています。

僕は、勉強を通じて、あるいはスポーツを通じて仲間意識が生まれるのはいいと思うけれど、「仲間」のための「仲間」は上手くいかないと思っています。山でもスポーツでも、何かテーマを持って打ち込んでいく中で、共通項を持っている子どもたちなら自然発生的に仲良くなれると思います。

―何かに打ち込めば、自然と仲間が集まってくる、ということでしょうか。

三浦さん:そうですね、そこでユニークな考え方をいろいろと吸収できるのではないかと思います。テーマを持っていなければ、ユニークな考え方へのアプローチも分からないでしょうし。僕も長い間留学をしていたけど、語学留学だけ、言葉を話すことだけが目的の人はだいたい続いていなかったですね。それよりも、大学の研究とかスキーとか、その他のスポーツとか、何かテーマがあると、それを通じて良い仲間ができる。人間関係で煩わしいことがあったら、そっちが目的じゃないよって、子どもたちに伝えたいです。

父、雄一郎さんと叶えたい夢

―50代を前に描いている夢、例えば、これから登りたい山はありますか?

三浦さん:ひとつは、アコンカグアで今回行けなかったポーランド氷河ルート(注:Polish Glacier Route。アコンカグア北東面の登山ルートでノーマルルートに比べ登山技術が必要とされている)はスキーで滑ってみたいですね。お父さんがかつて滑った、エベレストのサウスコル(注:標高7900メートル、世界最高峰エベレストと第4位ローツェの間にある峠)にも行ってみたい。

雄一郎さんと登る予定もありますか?

三浦さん:お父さんは90歳でエベレストって言っていたけど、先日エベレスト頂上で4人くらい亡くなったニュースを聞いて、キリマンジャロにしようかな、と言っていました。お父さんの夢なので、やりたいようにやってほしい。

写真:アコンカグア登頂中、標高4,200メートルのプラザ・アルゼンティーナにて親子撮影

―雄一郎さんのアコンカグア登頂断念の際は、断念するよう説得されたのですか?

三浦さん:それが僕の役割でした。同行した大城和恵先生(チームドクター)から、お父さんの健康状態を聞いて、続行は難しいとの判断だったので説得しました。お父さんが80歳の時のエベレスト登頂でもお世話になった先生なので、医師と患者の信頼感があるうえでの判断だと感じました。チームを作って登山する意義はそういうところにあります。僕が分からない専門的な部分のインプットをしてくれる。

ドクターストップという重い判断を大城先生がされた時は、まず僕と先生でじっくり話して、山岳プランナーの倉岡裕之さん(登攀リーダー)とも話して、僕の考えをまとめてから、「お父さん、今回はここまでだ」と伝えました。

でもお父さん、全然首を縦に振らなくて…。今でも納得はしていないかもしれないけれど、自分なりの落としどころをつけて、次につなげるというのは大事だと思っています。目標が山だとしても、人生はそれだけじゃないから。それをやることを目的に、その過程も大事だし、そこに行くという姿勢も大事だし、行動に移すのも大事。ただその夢がその人のすべてじゃないし、それが今回できなかったからと言って、次もできないわけじゃない。
今回ドクターストップで下山したことは事実だけど、次どうしようっていう答えはお父さんが見つけてくるので、その気持ちや姿勢が僕らにとっての救いです。

2020年ユースアルペンスキー世界大会の日本開催を成功させたい

―雄一郎さんと叶えたい夢についてお話いただきましたが、ご自身の目標は何かありますか?

三浦さん:僕が理事長を務めるナスターレース協会が、来年(2020年)2月に日本の苗場で開催される16歳以下のユースアルペンスキー世界大会を主催します。そこで、世界中からアルペンスキーをやる子どもたちを一堂に集めて、日本の同じ世代の子どもたちと一緒にレースをやるんです。世界大会の開催は、スキーをやっている僕としては究極の夢といえますね。

世界レベルの大会に出られるというドキドキ感を子どもが味わえるのは、とても貴重な経験です。僕が子どもの頃は、インゲマル・ステンマルク選手やアルベルト・トンバ選手といった世界の名だたるトップ選手に憧れていました。今は、グローバル化しているのにも関わらず、憧れの対象が「先輩」だったり、「コーチ」だったりと、少し身近すぎる気がします。

日本のスキー界は、16歳まではとても強いんですが、そこから上の年代で勝てなくなる。これまで、協会として日本のトップ10の選手を海外の世界大会に連れて行きました。日本で世界大会を開催すれば日本人の出場枠も増え、より多くの子どもたちが世界レベルの滑りを目の当たりにできます。

僕が子どもの頃、初めて世界大会に出た時に世界のトップ選手に感じたあの憧れと、その先の目標がより明確になる経験を日本の子どもたちにも味わってほしいですね。

登りたい山はまだまだたくさんあるけど、まずは来年の世界大会の成功が最優先の目標だし、僕の夢ですね。

PROFILE

三浦 豪太(みうら ごうた

1969年8月10日生まれ。プロスキーヤーであり登山家である三浦雄一郎さんを父に持ち、自身もスキーのモーグル競技において長野オリンピック13位、ワールドカップ5位になるなど活躍。その一方で、米国ユタ大学スポーツ生理学部を卒業、順天堂大学大学院で博士課程を取得した医学博士でもある。11歳で最年少のキリマンジャロ登頂を達成。2013年には、雄一郎さんと2度目のエベレスト登頂を果たし、世界初である親子で2度の登頂記録を樹立した。ソチオリンピックでの、独特な解説も話題に。NPO法人ナスターレース協会理事長。慶應義塾大学特任准教授。