【後編】女性とスポーツ 女性に起きやすい疾患と、健康にスポーツをするためのコンディショニングを教えます
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こちらの記事では、スポーツを楽しみたいすべての女性のために、「女性とスポーツ」についての情報をお伝えしています。
第3回の今回は、女性に起きやすい疾患とコンディショニングについて、北海道大学大学院保健科学研究院の寒川美奈さん(理学療法士)にうかがいました。
【特集】女性とスポーツ
女性がスポーツを続けていく上で、選手生命に影響を及ぼす三主徴とは?
近年の健康志向の高まりから、スポーツを積極的に楽しむ女性が増加してきています。
その一方で、成長に伴う身体の変化や、仕事や結婚、出産、育児などのライフイベントによる環境変化によって、スポーツを行いたいけれど時間がないという女性も少なくないでしょう。スポーツ庁が実施した「平成29年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」では、10代から40代の男性の運動実施率(46.7%〜67.5%)と比べ、女性は約10%低い(37.8%〜58.8%)という結果が出ています。
スポーツを継続していくためには、身体のコンディションとその変化に常に目を向けることが大切です。
国際オリンピック委員会は、女性がスポーツを行う上で起こりやすい心や身体の問題、疾患を紹介しています。なかでも「女性アスリートの三主徴(注釈:よく見られる主な3つの特徴のこと)」と呼ばれる、選手生命に影響を及ぼしやすく危険な症状は、以下の3つです。
- 利用可能エネルギー量の不足
(注釈:運動などによる消費エネルギーが摂取エネルギーを上回る状態) - 無月経
- 骨粗鬆症
この3つは連動しており、「利用可能エネルギー量の不足(low energy availability)」が続くと、無月経や女性ホルモンの分泌低下につながって、骨が弱くなるといわれています。
では、これらを予防するにはどうしたらよいのでしょうか。
まずは、自分の身体を知ることが大切です。その指標として、BMI(body mass index)を活用しましょう。
BMIは体重キログラム/(身長メートル)2で算出される体格の指標ですが、数値が17.5以下になると「利用可能エネルギーの不足」状態といわれています。
また、BMIは無月経とも関係している数値です。エネルギーが不足すると、身体は生命維持のために排卵を阻害します。加えて、無月経になることで骨量が減少し、疲労骨折の危険性が高まります。これらにより、アスリートなどは選手生命が絶たれるケースも少なくありません。
エネルギー不足を起こさないためには、摂取エネルギーが低下しないよう食事に気をつけることが重要です。また、自分のBMI(身長や体重)を定期的に計測することで、月経周期や症状の出る時期を理解しておくこととよいでしょう。特にアスリートの場合は、大会で高いパフォーマンスを発揮するためのコンディション維持につながります。
月経随伴症状とは?辛さを軽減させるストレッチ
月経前3〜10日に頭痛やイライラ、下腹部痛、腰痛などが起こることを「月経前症候群」、そして月経中に起こる下腹部痛、腰痛、頭痛などを「月経困難症」と呼びます。これらの症状を総称して「月経随伴症状」と言います。
月経随伴症状を改善するには、ヨガや股関節周りのストレッチ、呼吸法によるリラクセーションなどが有効といわれています。以下で骨盤周囲のストレッチを解説しているのでぜひ行ってみてください。
骨盤周囲のストレッチ
骨盤周りの筋のストレッチ(①〜③)は、筋(赤色の線)に伸びを感じるところで、ゆっくりと息を吐きながら15〜30秒ほど行ってみましょう。
- 両手・両足を床につけます。
※両手がつかない場合は、両手はできるところまで下げる、膝を曲げて両手を床につけるなど、太ももの筋を意識して体勢を調整してください。 - 四つ這いから、片方の膝を前に出し、上半身と一緒に少し前に出します。
- 座って足裏を合わせて、無理のない範囲で足を床に近づけます。
※股関節に痛みを感じる場合、足裏の位置を前に出してみてください。それでも痛い場合は、この運動は控えましょう。
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