【後編】女性とスポーツ 女性に起きやすい疾患と、健康にスポーツをするためのコンディショニングを教えます
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いつまでも楽しくスポーツをするために。尿もれ予防のトレーニングを紹介
尿もれは女性に多く、加齢とともに増加します。70歳以上では、女性の約40%近くにみられています。大半の方は軽度なので、家族や友人にも相談しづらく、病院を受診せずに我慢してしまう方も多いのが実情です。
また、出産や肥満との関係も示されてきていますが、若い世代の方の中には「育児に手がかかって自分のことは後回しになる」という声もよく聞かれます。
このように、ライフステージによる身体の変化で尿もれに悩む女性がいる一方、スポーツを楽しむ女性の多くが尿もれに悩まされている現状もわかってきました。例えば、育児がひと段落してスポーツを再開したら、スポーツにはジャンプやランニングなど腹圧のかかる動作が多いことから尿もれが生じてしまう、といった状況に直面してしまうのです。
また、海外で実施された女性のトップアスリートを対象にした研究においても、トランポリンなど腹圧が強くかかるようなジャンプを行うスポーツ、「審美系」といわれる美しさを競うような体操や新体操などのスポーツでは、実に半数以上が尿もれを経験しているという報告もありました。
尿もれにはいくつかタイプがあります。そのうち最も多いのは、咳やくしゃみ、重い物を持ったとき、走る、ジャンプといった運動時に腹圧がかかることで尿がもれる「腹圧性」です。次に、トイレへ行く途中や水回りの作業をしていると我慢できず尿もれが起こってしまう「切迫性」。そして腹圧性と切迫性を合わせた「混合性」もあります。
今回は尿もれの中で最も多い、腹圧性の尿もれを防止するトレーニングを紹介します。
腹圧性の尿もれを防止するトレーニング
腹圧性のケースでは、膀胱や子宮、膣などの臓器を身体の下から支える「骨盤底筋」のトレーニングが治療や予防の第一選択として薦められています。骨盤底筋が弱ることで、尿もれが起こりやすくなってしまうからです。骨盤底筋は、排尿の途中で止めたり、肛門を締めたりするときに使う筋肉です。
骨盤底筋体操の方法とポイント
仰向けや肘をついた状態、前かがみや座位など姿勢を変えながら、骨盤底筋に力を入れたり、抜いたりを繰り返す運動を行います。
- 仰向けになって足を肩幅に開いて膝を立てた姿勢で、肛門、膣、尿道を「締める、ゆるめる」という動きを繰り返します。
慣れてきたら、以下のようにいろいろ姿勢を変えて「締める、ゆるめる」の運動を繰り返し行います。 - うつぶせ(足は肩幅に開く)から肘が直角になる位置で上半身を上げる
- 足を肩幅に開き、手をテーブルなどの台の上に置き、前傾姿勢を取る
- 椅子に座り膝をそろえ、背中を伸ばす
力を思い切り入れたり、10秒ほど入れ続けたり、と力の入れ方や時間など様々に工夫を加えながら、背中は丸めずに、背すじを真っ直ぐに伸ばして行ってみましょう。
骨盤底筋の動かし方がわかりづらい場合には、肛門を締めるように意識するとよいでしょう。
この骨盤底筋体操は、1950年頃から世界中で行われているトレーニングです。軽度の尿もれに対し多くの有効性が報告されており、効果のある方法といえるでしょう。
尿もれ症状が改善することで外出しやすくなった、運動を積極的にできるようになったなど、「生活の質(quality of life)」に対する改善効果もみられています。骨盤底筋体操は、いつでもどこでも「ながら運動」でできますので、ぜひ日々の暮らしの中で試してみて下さい。
いくつになってもどんなときも、健康的にスポーツを楽しもう
先に紹介したスポーツ庁による世論調査結果では、女性がやってみたい運動で、エアロビクスやヨガ(2位)、ランニング(3位)を抑えて、ウォーキングが年代を問わず1位となりました。ウォーキングは、気軽に行える運動で、ダイエットや身体の循環もよくなり、長く続けることで病気の予防にもつながるといわれています。まずは日常生活の中で、行いやすい運動をできる範囲から始めてみるとよいかもしれません。
女性とスポーツに関する豆知識をお伝えするシリーズ、いかがでしたでしょうか。女性ならではの身体の特徴を理解することで、防げるケガや疾患は少なくありません。日々、自分の身体に目を向け、コンディショニングをしていくことで、ちょっとした変化を感じられるようになります。手軽に始められることから取り組んでみましょう。
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