【第7回】シカクの人物図鑑 糟谷明範さん:医療と地域社会の間にある壁をなくしたい。誰もがいていい“村づくり”をおこなう理学療法士

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地域が抱える問題を解決できるような“村”をつくりたい。糟谷さんのこれから

「村づくり」とは、壮大な構想ですね!どのような村なのでしょうか?

糟谷さん:「タマレ」という村を、まちの人たちと一緒につくっています。最寄り駅が多磨霊園駅なので、「タマレ」。また、みんなに集まって欲しいので「溜まれ」という意味も込めました。考案者は、村にお菓子工房を構えるパティシエさんです。

2019年から現在まで、さまざまな方たちが村に入ってくれています。前述したお菓子工房をはじめ、地元の野菜を扱うお店や子どものあそびのアトリエ、銅版画工房、デザインスタジオ、府中発のアパレルブランド、リラクゼーションサロンなどです。

「タマレ」のコンセプトは大きく2つあります。1つ目は、「誰でもいていいんだよ」という、半生(はんなま)で未完成の村づくりです。「コミュニティとかイベントには参加したくないけれど、その場にはいたい」という人もいると思います。また、まちづくりとかコミュニティづくりって聞くと、「ワクワク、楽しい、うれしい、キラキラ」みたいな想像をされる人が多いと思うんですが、これだとまた壁ができてしまう。

そうではなくて、「悲しい、嫌だ、恥ずかしい、辛い」、そんな想いも一緒にいられる場をつくっていきたいです。僕らの村は誰も主役になりませんし、場所自体にも色を持たない。人の暮らしは365日、毎日違います。半生で未完成という余白があるから、その時々によって形を変えていける、そんな場づくりをまちのみんなと続けていきたいなと。

2つ目は、新しい在宅医療・福祉の形をまちの人たちと一緒につくることです。医療保険や介護保険という制度の枠に人の暮らしを当てはめることはあまりにも狭過ぎて、枠ありきで考えたときに人の暮らしが見えなくなってしまいます。

この枠を溶かすために、有事には圧倒的な医療福祉が提供できる専門職として研鑽を続け、平時は1人の人としてまちの人たちと一緒に暮らし、まちや人を知る。この2つの軸で動くことによって、医療福祉の質を保ちつつ、制度という枠を超えていくことに期待しています。

下記は10年後にイメージしている「タマレ」の完成予想図です。ツバメアーキテクツというクリエイターさんと、シンクハピネスのスタッフ、まちのみなさんで半年くらいかけて話し合い、完成した画です。おそらくこの画の通りにはならないと思いますが、理想として掲げています。

素敵な村です。こんな場所があったら、小さな子どもから高齢者まで、安心して過ごせるのではないかと感じました。シンクハピネスでの活動を進めるなかで、特にやりがいを感じることはありますか?

糟谷さん:1つは、答えが無いこと。僕の役割は、未来を妄想し続けることと、それをみんなと共有し続けることです。前進したり、後退したり、立ち止まったりと、コツコツと時を溜めながら、少しずつ変化が生まれていくのを見ることがやりがいになっています。

もう1つは、人の支えです。自分で会社を持って6年が経とうとしています。事業を終わらせるという判断をすることもありましたし、スタッフの退職により事業継続の危機になることもありました。振り返ってみると大変な6年でしたが、いつも支えてくれたのはスタッフとまちの人たちです。年々、たくさんの方と知り合い、一緒に動く仲間が増えていくことが、僕にとって1番の励みになっています。

先日、事務所の引っ越しがあったのですが、タマレの中にある「あそびのアトリエ ズッコロッカ」に来ている小学生たちに、廃棄予定のパーテーションに絵を描いてもらって。入居までの間、街ゆく人にも見ていただけるようにしばらく展示しました。

“みんなでつくっている場”という意味を社内でも改めて共有できましたし、街の人にも見てもらえる機会をつくれたことが良かったと思っています。

“村づくり”という壮大なプロジェクトを実現しようとされている糟谷さんですが、将来の夢はなんでしょうか?

糟谷さん:“誰かのために”ではなく、”自分のために”と言える地域社会へ。

夢と呼べるかわかりませんが、強いて言えば、もっともっとたくさんの人たちに会いたいです。たくさんの人に出会って、僕が困ったときに相談できる先がたくさん欲しい(笑)

僕がおもしろがって暮らしていなければ、周りの人たちのしあわせはつくれないですし、そこからしあわせが人から人へと伝わり、まち全体がしあわせいっぱいになれたら最高ですね。
そんな地域で暮らして、死んでいきたいです。

FLAT STAND主宰の「coco marché」(ココ・マルシェ)の様子(2019年6月撮影)

おわりに

シカクの人物図鑑第7回は、医療と地域をつなげる活動に力を注ぐ、糟谷明範さんを特集しました。

医療に限らず、教育や就労などさまざまな課題に問題意識を向け、それを地域の方と一緒に行動を起こしていく糟谷さんの熱い思いや、リーダーシップが感じられました。今後のタマレの活動や完成に夢が膨らみますね。

糟谷先生に直接お会いしたい、株式会社シンクハピネスが運営するカフェに行ってみたいという方は、ぜひホームページをチェックしてみてください。

the town stand FLAT
東京都府中市清水が丘3-29-3 京王線 多磨霊園駅より徒歩1分

the town stand FLAT 公式サイト

シカクの人物図鑑では、今後も理学療法士の資格をお持ちの方のお仕事や活躍をご紹介していきます。次回もお楽しみに。

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