【第5回:前編】生涯現役!理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法~理学療法の未来のため行政との橋渡しに力を注ぐ山本克己さん~

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リガクラボの連載「生涯現役!理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法」。長きにわたりお仕事をされていて、現在も生涯現役を目指して活躍されているベテラン理学療法士の方々に、前編では現在のお仕事(セカンドキャリア)について、後編では日々実践している健康管理法についてお話を伺っていきます。

第5回は行政分野で理学療法士として勤務された後、現在は一般社団法人 兵庫県理学療法士会にて後進の未来のために活動を続ける山本克己さんにご登場いただきます。

PROFILE

山本 克己さん(やまもと かつみ)

山本 克己さん(やまもと かつみ

1956年神戸市生まれ。1986年養成校卒業後、神戸市役所に入職、行政内での政策立案や区役所での訪問指導事業、通所の機能訓練事業に従事。地域住民や団体、他の専門職と連携し、地域リハビリテーション、地域理学療法の充実に努め、介護予防やフレイル予防の普及、啓発にも携わるなど、行政一筋で30年間勤務した。2016年神戸市を定年退職し、兵庫県理学療法士会へ入職。日本理学療法士協会協会賞、兵庫県功労者表彰、厚生労働大臣表彰などを受賞。

山本さんの現在のお仕事(セカンドキャリア)

山本さんは、神戸市役所にて理学療法士として30年勤務された後、現在は兵庫県理学療法士会にて事務局長を勤めていらっしゃいます。まず、山本さんご所属の兵庫県理学療法士会とはどのような組織なのでしょうか。

山本さん:兵庫県理学療法士会を含む都道府県理学療法士会は、全国47都道府県に設置されており、士会と呼ばれています。理学療法士の教育・学術振興や、地域の特性に応じた理学療法の普及向上を通じて、国民の医療・介護・保健・福祉の質の向上などに取り組む地域組織です。

特に兵庫県理学療法士会は1967年に全国で初めて設立された都道府県理学療法士会です。現在6,000名を超える理学療法士が所属しており、質の高い理学療法を県民の皆様に提供できるよう研鑽を続けています。

兵庫県理学療法士会の外観と山本さん

士会の業務は事務局運営、渉外業務など多岐にわたると思いますが、山本さんは兵庫県理学療法士会で主にどのような業務を担当されているのでしょうか?

山本さん:私は、兵庫県理学療法士会の事務局長として士会、地域、行政のパイプ役を担っています。具体的には、高齢者の方々がいつまでも住み慣れた場所で自立した生活を送れるように、行政の担当課と協働して介護予防やフレイル予防事業のプランニングをおこなっています。

また、地域の住民同士が気軽に集い、一緒に活動内容を企画し、ふれあいを通して「生きがいづくり」「仲間づくり」の輪を広げる「つどいの場」という場所があります。地域の介護予防の拠点でもある「つどいの場」では、生きがい活動の提供や健康寿命の延伸といった取り組みをおこなっており、理学療法士が生活の場での身体活動の取り入れ方や転倒、生活機能の低下予防の相談・指導という形で関わっています。そのような「つどいの場」へのリハビリテーション専門職の講師派遣も行政と協働しておこなっています。

さらに、これらの地域での介護予防やフレイル予防を進めるため、兵庫県や神戸市の会議に委員として出席しています。

各所と連携し、調整や折衝などをおこなうお仕事なのですね。上記の活動の中で、やりがいを感じたことがありましたら教えてください。

山本さん:行政の担当者と何度も協議して企画した地域連携のプランが実際に目に見える形で実践できていくことや、リハビリテーション専門職同士、あるいは、地域のコーディネーターやお世話役の方とのコミュニケーションで相互理解が深まっていくことにやりがいを感じます。

そして何より、現場での参加者の方々の笑顔と、「いつも来てくれてありがとう」「また来てくださいね」などのお声掛けや触れ合いは、ひとしおのうれしさがあります。

兵庫県理学療法士会で各所との橋渡し役として活動される山本さん

人と人とをつなぎ施策を実現されていく活動は、神戸市役所でのご経験あってこそのお仕事ですね。神戸市役所にご勤務されていたときの取り組みで、現在に活きていると感じることはありますか?

山本さん:神戸市役所では、事業企画や予算案の策定、法律的な裏付けなど事務的な業務のノウハウを習得できました。国・県、各医療職団体との関係性・交渉などもいい経験になっています。

そして、県・役所の医師や保健師等の医療職、医療事務の方々、障がい者団体の関係者の方々等と机を並べて仕事したことが、現在の人脈になっています。その方々を中心に、今でも委託事業の相談をいただいたり、士会及び私個人へ介護予防、フレイル予防、健康増進、健康教室への諸会議・事業への参画依頼が来たりと、現在の仕事にもつながっています。

保健所の仕事を兼務した際には、医療機関や老人保健施設への実地指導で様々な現場を拝見しました。現場の方々と意見交換することが、多面的な理学療法の理解と状況把握に役立っています。

こういった行政内で培ってきたノウハウや、県、市町、関係団体との連携手法、組織内管理体制の整備のための経験などが現在の事務局長職に活きていると感じています。

また、市役所を退職した直後には、市より地域リハビリテーションに協力できる職種の窓口の役割を依頼されました。市と協働して市内の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が連携して動ける組織「神戸市リハ職種地域支援協議会」を代表幹事として立ち上げ、市のリハビリテーション事業に協力できる体制を構築しました。こちらも良い経験であったと感じています。

発足時の神戸市リハ職種地域支援協議会

やはりこれまでのご経験、人脈などすべてが現在に活きているのですね。市役所に入職されたばかりの頃と現在で、理学療法(士)の認識や活動の場がどのように変化したと感じていらっしゃいますか?

山本さん:市役所に入った当時は行政内でも理学療法士の専門性はあまり理解されておらず、訪問リハや通所リハなどのサービスはほとんどない状況でした。そこから士会や自治体の理学療法士などと連動して、地域リハビリテーションの進展に努めてきました。

現在では、介護保険制度などの導入もあり、当時と比べると目を見張るほどサービスも普及し、地域リハビリテーションや介護予防の話があれば、当然のように理学療法士に声がかかる時代になったと感じています。

「地域で普通に訪問や通所リハが受けられるようにしていきたい」と常々私が言っていたのを覚えている当時の担当者の方から、「山本さんの思っていたようになってきましたね」とおっしゃっていただきました。まだまだ不十分なところもありますが、時代の流れに少し感慨深いものがあります。

思い描いていた未来に近づいていると実感されている山本さんですが、どういった課題があるとお考えですか?

山本さん:後進の方々が将来にわたって前向きに理学療法士としての業務を遂行し、安定した生活を送るためには、技術的な裏付けと収入の確保が前提になってきます。現状ではそのための様々な取り組みや方策などが十分に浸透していないことが課題だと感じています。

学術活動や技術研鑽の場の提供、職能活動の推進など、士会がおこなっている活動の理解を深めて、多くの理学療法士が諸活動に参加しやすくなる環境づくりを、今までに得たノウハウと立場を基に進めていきたいと考えています。

おわりに

神戸市役所でのキャリアを活かし、現在は兵庫県理学療法士会の事務局長として士会、地域、行政をつなげる重要な役割を担っている山本さん。県民の皆さんのみならず、後進の未来のためにもと、熱意を持って多角的なアプローチをされています。

後編では、山本さんの活動を支える健康管理法について伺っていきます。お楽しみに。

なお、リガクラボでは、山本さんがご所属されている兵庫県理学療法士会のような、全国にある都道府県の理学療法士会が発信する”健康に役立つ情報”や、イベント情報などを連載中です。各都道府県にある士会の取り組みを知りたい方は、あわせてご覧ください。

【特集】全国の都道府県理学療法士会をご紹介