【第5回】暮らしに理学療法士の視点を:最適な福祉用具の選び方~座っているときも支えが必要な場合

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睡眠:床ずれを防ぎましょう!

自分で身体を動かすことが難しくなると、血液の循環や代謝といった身体の機能も低下してしまいます。また、ベッド上で過ごす時間が多くなると「床ずれ」(医学用語では褥瘡(じょくそう))ができやすくなります。床ずれは傷口の皮膚が壊死(えし)したり、傷が細菌に感染して膿が出たりすることもあります。悪化すると感染は骨まで達し重篤な状況になることもあるため、床ずれにならないようにしましょう。

床ずれは一定の場所に身体の重さが持続的にかかり続けることで、皮膚の血液の流れを妨げてしまうことが原因です。予防するためには以下の3つが大切です。

  • 持続的に同じ場所に重さがかかり続けないように、定期的に寝返りをおこなうこと
  • ベッドのマットレスを身体の重さが集中しにくい体圧分散型の柔らかめのものにすること
  • エアーマットのように定期的にマットレス面の柔らかさが変化するものを使うこと

また、原因には皮膚表面の汚れなどもあります。この汚れは細菌を増殖させることになりますので、汗が多い方は定期的にマットレスと接している面を清潔に保つことや衣服の交換をお勧めします。同様に尿や便なども皮膚の汚れとなり、細菌増殖の原因になりますので、おむつも早めに交換することが大切です。

福祉用具ワンポイントレッスン③ マットレスの選び方と考え方

体圧分散マットレスやエアーマットレスは、床ずれを作らない予防や、すでに床ずれがある場合、悪化を防ぐために使うものです。床ずれもほんのり赤くなっている初期の段階と傷口が開いている段階とで程度が違います。その傷の状態に合わせたものを使うことになりますので、ここは医師や看護師などに相談して選択することをお勧めします。

ただし、誰にでも使ってよいわけではないので注意が必要です。床ずれが心配だからといって、ご自分で寝返りなどができる動ける方に高機能の体圧分散マットレスやエアーマットを使うと、マットレスが柔らかくなりすぎて身体を動かせなくなることもありますので気をつけましょう。

福祉用具ワンポイントレッスン④ ポジショニングピローを活用しましょう

ベッド上にいる時間の長いCさんがベッドの上で楽な姿勢を取るには「ポジショニングピロー」といわれる専用の枕を使うと便利です。また、床ずれ予防で横向きになっているときにも姿勢の安定に役立つのでぜひ活用しましょう。

一般的な枕で代用ができるものもありますが、ビーズクッションなどのように身体を預けると中身のビーズが移動して身体にフィットし、形を変えるものは支えにならないため、適していません。代用する場合はどこに入れたらよいのか、どのようなものを使ったらよいのかなど理学療法士に相談しましょう。

入浴:負担の少ない浴室にカスタマイズしましょう!

Cさんがある程度安定して座っていられる場合は、シャワー用の車いすを使ってシャワーを浴びることができます。ただし、この場合は洗い場までの段差をなくす改修が必要です。また、このとき室内に設置できるリフトがあると、浴槽にも入ることができます。

シャワー用の車いすに座ることができない場合には、身体を洗うにも広いスペースが必要ですので、広めの浴室でないと入浴は難しくなります。浴室の改修か、自宅に来てもらう巡回入浴サービス、あるいは通所施設での入浴といった介護保険サービスを利用することになりますので、ケアマネージャーさんとしっかりと相談しましょう。

ベッドの上で洗髪するような用具もありますが、慣れていないとベッド上を水浸しにすることがあるので、安易に使わないほうがよいでしょう。

ご本人と介助者も快適な福祉用具を選びましょう!

Cさんの福祉用具選びでは、できる限りベッドから離れる時間を作ること、ベッドを離れて過ごす場所が快適であることが欠かせません。その際に介助者の負担を最小限にすることも重要です。介助者の負担を軽くすることは、その他の場面でも大切なことなので、訪問介護や訪問看護などのサービスを利用して、介助者の精神的にも肉体的にも負担が少なくなるようにしましょう。

また、床ずれや関節が固くなるなど、長期間寝ることで起きる二次的な障害が発生しやすくなります。このような障害を防ぐためには、理学療法士と十分に相談して介護をおこなうことが大切です。ご家族が「もうダメ…」となる前に、負担の少ない介護環境を整えましょう。

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