【第5回】教えて!初めての在宅介護~働きながら認知症の母を介護するには?~

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リガクラボの連載「教えて!初めての在宅介護」では、初めての介護への疑問・不安についてお答えするべく、在宅介護に関する情報を紹介しています。

前回は番外編として、介護老人福祉施設(特養)の費用の目安についてお話ししました。第5回となる今回は、働きながら認知症のご家族を介護する場合に利用できる制度等、仕事と介護を両立させるために役立つ情報についてお話ししていきます。

PROFILE

今回の質問者:Dさん (45歳・女性

・70代の母親が軽度の認知症となり、介護が必要になった。
・平日は正社員としてフルタイムで働いている。
・母親と二人で暮らしており、日中母親が一人になってしまうのが心配。
・母親の要介護度:要介護2

Q. 70代の母と二人で暮らしているのですが、軽度の認知症と診断されました。私は平日、正社員としてフルタイムで働いているのですが、仕事を続けながら在宅介護をするのは可能でしょうか?

A. お母様が軽度の認知症と診断されたとのこと、心配ですよね。またフルタイムのお仕事と介護の両立にも不安を感じられることでしょう。

しかし仕事と介護とを両立させるための支援制度等を活用すれば、働きながら在宅介護ができるかもしれません。まずは介護をしながら働き続けるためのポイントをお話ししていきましょう。

厚生労働省では、仕事と介護を両立させるための6つのポイントを掲げています。ポイントと、主な内容は以下となります。

ポイント①:職場に「家族等の介護を行っていること」を伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用する

介護をしていることを職場の上司や同僚に伝えるのは、気が引けるという方が多いかもしれません。しかし、介護は誰もが直面する可能性があります。職場に介護をしていることを伝えておけば、協力を得られやすくなります。また、勤務先には「仕事と介護の両立制度」が整備されています。勤務先により制度の詳細は異なりますが、必要に応じて制度を活用しましょう。

ポイント②:介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」

介護をすべて自分だけでおこなうとなると、かなりの時間と体力を要します。頑張りすぎてしまうと“介護うつ”になってしまう可能性もあります。要介護認定を受ければ、介護保険サービスを利用できます。介護保険制度等による支援やサービスを受けて、自分で介護をしすぎないことが大切です。

ポイント③:介護保険の申請は早めにおこない、要介護認定前から調整を開始する

介護保険の利用申請をおこなってから要介護認定されるまでの期間は、原則として申請から30日以内とされています。そのため要介護度が決定するまでに1カ月ほどかかる場合もあります。早めに申請をおこない、必要なサービスが受けられるように準備しましょう。

ポイント④:ケアマネジャーを信頼し、「何でも相談する」

ケアマネジャーは、要介護者および介護をおこなう方の希望をくみながらケアプランを作成します。必要に応じて見直しが可能なので、仕事状況の変化により利用中の介護保険サービスを変更したい場合など、困ったことや悩みがあったら何でも相談してみましょう。

ポイント⑤:日頃から「家族や要介護者宅の近所の方々等と良好な関係」を築く

介護はいつ始まるかわかりません。介護に直面したときにどうするかを、両親や配偶者、子ども、兄弟姉妹等と、お互いに元気なうちから話し合っておくことが重要です。また認知症の症状から、徘徊等で要介護者の近所の方々にもお世話になることがあるかもしれません。日頃から家族だけでなく近所の方々とも積極的にコミュニケーションをとっておくといいでしょう。

ポイント⑥:介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間を確保」する

介護はいつ始まるかだけでなく、いつ終わるかもわかりません。介護サービス等を利用して、自分の時間を確保して、息抜きすることも必要です。

6つのポイントでも挙げているように、仕事と介護の両立には「仕事と介護の両立支援制度」と「介護保険制度等による支援やサービス」を上手く組み合わせて、介護と両立しながら働くための体制を作っていくことが大切です。

「仕事と介護の両立支援制度」でどの制度やサービスを利用するかは、職場では上司や同僚、人事労務担当者等に相談をしてみましょう。また、介護保険サービス等の利用については、ケアマネジャーや地域包括支援センター、介護保険サービス事業所等に相談してみてください。

なお介護保険サービスを利用するには、介護保険の申請が必要です。介護が必要になった場合の手続きについては下記で紹介しているので参考にしてくださいね。

【第1回】教えて!初めての在宅介護~介護が必要になったら?~

Q. なるほど、仕事と介護の両立にあたっては環境を整える制度やサービスをうまく活用することが大切なのですね。「仕事と介護の両立支援制度」とは、具体的にどのような制度なのですか?

A. 家族の介護をおこなう労働者の仕事と介護の両立を支援する法律として、「育児・介護休業法」があります。この法律に基づいた「仕事と介護の両立支援制度」では、介護休業、介護休暇をはじめとした制度が整備されています(下記の図参照)。

またこの法律で定められている各種制度のほか、各企業が独自で支援制度を設けている場合があります。Dさんの勤務先の会社にどのような制度があるのかは、人事労務担当者等に確認をしてみてください。なお、制度を利用しなくても、職場の上司や同僚の協力を得ながら、介護の状況に応じて勤務時間の調整が可能な場合もあります。

出典:平成29年度版「仕事と介護両立のポイント あなたが介護離職しないために」(厚生労働省)

育児・介護休業法についての詳細や最新情報は、下記の厚生労働省ホームページより確認できますので、こちらもあわせてご覧ください。

育児・介護休業法について(厚生労働省)
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