【第6回】私と理学療法〜祖父の末期がん闘病。在宅リハビリで最期まで自分らしく生きる~

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連載「私と理学療法」では、ご自身やご家族が、ケガや病気の治療で理学療法を受けた方の体験談をご紹介していきます。

第6回は、がんを発症した祖父を持つお孫さんから寄せられた体験談です。末期がんと診断されたご祖父様がご自宅での療養を選択し、在宅で理学療法を受けたことで、亡くなる直前まで歩くことができ、最期まで自分らしく過ごされたというエピソードです。ぜひご覧ください。

PROFILE

春野 さとみさん(39歳・女性

愛知県在住
理学療法士を受けた方:祖父
理学療法のきっかけ:祖父の肺がん

祖父の末期がん闘病、在宅リハビリで最期まで自分らしく生きる

病気知らずだった祖父に、突然のがんの告知

私の祖父はこれまで病気知らず、医者知らずで過ごしてきました。とても優しく、私にも、ひ孫である私の子どもたちにも、いつも温かく接してくれる自慢の祖父でした。家が近かったこともあり、家族でしょっちゅう遊びに行く、そんな日常が当たり前でした。

しかし、そんな祖父に2019年、「肺がん」という診断が下されました。発見時にはすでに他の臓器にも転移が進んでおり、医師からは余命3ヶ月程度と告げられました。

病院で抗がん剤治療を受けて延命を図るか、それとも残された時間を家族と自宅で過ごすか、祖父が選んだのは後者でした。在宅医療を受けながら家族とともに過ごすことを決めたのです。

「歩きたい」という祖父の希望で理学療法を開始

在宅医療が始まってから、私はなるべく毎日祖父の家に顔を出すようにしていました。痛みがあったり、倦怠感があったり、とても辛い状況だったと思いますが、祖父はいつも気丈に、優しく迎えてくれました。

訪問医療では、医師や看護師、そして理学療法士の方もいらっしゃいました。私は、末期がんで自宅にいる祖父がリハビリテーションを受けられるなんて思ってもいませんでした。リハビリテーションは病気や障害のある方が、より良く生活するためにおこなうものだと思っていたからです。

理学療法士の方は、祖父の「歩きたい」という希望を叶えるために、運動を提案してくれました。立ち上がりや起き上がりといった基本動作の練習や、実際に家の中を歩く練習もおこない、調子の良い時には庭に出て歩くこともありました。

また、祖父の話を聞きながら、肩や腰、足など、祖父が痛がっているところを丁寧にマッサージしてくれました。祖父がとても気持ち良さそうにしていたのを覚えています。

さらに、福祉用具が必要なときにはケアマネジャーさんに連絡を取ってくれました。祖父は介護ベッド、歩行器、外出時には車椅子を使用していました。

大好きな場所で、大好きな家族に看取られた祖父

祖父の家は、大工だった祖父がずいぶん昔に建てたものですが、「いつか車椅子生活になっても家で過ごせるように」と考え、平屋で段差がなく、歩行器のままトイレに入れるよう工夫された造りでした。

理学療法のおかげで、祖父は亡くなる数日前まで自分でトイレまで歩いていくことができました。これは私たち家族にとっても、本当に大きな意味を持つことでした。

5年ほど前、過ごしやすい秋の季節になる頃に、祖父は大好きな自宅で、大好きな家族に囲まれて天国へと旅立ちました。きっと幸せな最期だったと思います。理学療法士の方がいてくださったからこそ、祖父は旅立つその日まで自分らしく生きることができたと思います。本当に感謝しています。

祖父に寄り添ってくれた理学療法士への感謝

この体験を通して、私は理学療法や在宅医療について多くのことを学びました。理学療法士はさまざまな場所で活躍していること、そして末期がんをはじめとした病気でも理学療法を受けられることを知りました。

祖父は家が大好きな人でした。多少長生きできる可能性があっても、副作用の強い抗がん剤治療を受けるために入院するより、祖母と一緒に大好きな家で過ごす「在宅医療」を選んだのかな、と思っています。最後まで自宅で、好きなものを食べ、ベッドから庭を眺めながら穏やかに過ごしていた祖父の姿がとても印象に残っています。

今、闘病中の方やそのご家族の方は、病気やケガで辛い時、弱音を吐きたい時があると思います。そんな時は、その気持ちを正直に理学療法士の方に伝えてみてください。きっとその気持ちを受け止めて、どうしたら良いか適切なアドバイスをしてくれるはずです。

祖父の姿を見て、私も「最期まで自分らしく生きる」ことができるよう、育児に仕事にと頑張っています。祖父が教えてくれた生き方を、今度は私が次の世代に伝えていきたいと思っています。

おわりに

第6回は、末期のがんを患っても、在宅で理学療法を受けることで自分らしく過ごされたご祖父様の姿を、お孫さんの視点から綴った体験談をご紹介しました。

「最後まで歩きたい」というご祖父様の希望を叶えた理学療法士の存在は、身体機能の維持だけでなく、ご家族の心の支えにもなったようです。ご投稿者様は、ご祖父様が示してくれた前向きな姿勢を胸に、現在は育児と仕事にと励まれているとのこと。闘病時の経験が今も家族の絆につながっていることを感じる素敵なエピソードでした。

ご紹介した体験談が、現在治療中や闘病中の方、リハビリテーションに取り組まれている方の励みになりますように。次回もお楽しみに。

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