【第7回】みんなのリハビリ体験記〜小児麻痺の後遺症がある私が、初めてのリハビリで感じた思い~

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連載「みんなのリハビリ体験記」では、ご自身やご家族が、病気やケガによるリハビリをこうやって乗り越えた、こんな素敵なエピソードがあった、現在前向きに取り組んでいる…など、読者の皆さんのリハビリに関する体験談を紹介しています。

第7回は、乳児期から小児麻痺の後遺症をお持ちの方が病気による入院を機に初めてのリハビリを経験、その効果を実感しリハビリの重要性を強く感じたという体験記をお伝えします。

PROFILE

ペンネーム:小玉拙郎 さん (73歳・男性

埼玉県在住
リハビリのきっかけ:腸腰筋の細菌感染

小児麻痺の後遺症がある私が、初めてのリハビリで感じた思い

突然始まった寝たきりの生活

私は1948年生まれですが、生後8カ月目に小児麻痺に罹患してしまいました。後遺症で左腕に麻痺が残りはしたものの、なんとか折り合いをつけてここまで元気に生きてきました。ところが70歳を過ぎたとき、突然、腸腰筋に細菌が入り激痛で動けなくなってしまった。

腸腰筋は上半身と下半身をつなぐ筋肉で、腰のカーブを保ち、腿や膝を持ち上げるなど体の動きに欠かせない筋肉とのこと。

医師からは「1日3回の点滴で菌を殺す以外に治療の方法はない」と診断を受け、8週間ベッドに寝たままで、動かないようにと言われました。毎日の点滴に飽き飽きし、ただひたすら退屈でした。細菌を殺せても身体が弱ってしまい、まともに生活ができないのではないかと不安を感じていました。

私の身体の具合を把握してくれる理学療法士

入院から6週間が過ぎた頃に「このままでは身体の快復が難しくなりますので、リハビリを始めます」と医師から告げられました。新しい状況がうれしかった。

そこで、理学療法士が登場。「今どきこういう若者がいるんだなぁ」と感じ入ってしまう好青年で、年寄りの扱いに慣れているように感じた。

そして、どの動きができるのか、どこに力が入らないのかなど、ベッドの上でフニャフニャになってしまった私の身体を調べてくれた。その上で、小児麻痺の影響で「こういう動きはできない」というところも把握してもらった。

彼の頭の中で、たぶん「こういう段階を踏んで治していこう」とプランを立ててくれたのでしょう。私は「元に戻るためなら、辛くても必死に頑張ろう」と思いましたね。

その日のリハビリは「腹筋を3回」で終わった。仰向けの状態で両足を少し持ち上げる腹筋運動、それを3回だけ。「たったこれだけ?」と思い、この程度で身体は快復できるのだろうかと、少し心配になりました。

しかし、翌朝、腹筋が痛い!あの程度でこの筋肉痛かと、自分で想像していたよりはるかに身体が弱っていたことを実感。あの理学療法士さんは、私の身体の状態をよくわかってくれていたのだと納得した。

リハビリ開始直後に思わず出た笑みと「やりやがったな」の言葉

次の朝、彼が来たとき、笑いながら「やりやがったな」と言いました。彼も笑いながら「痛いですか?」と、まるでそうなることがわかっていた様子で言葉をかけてくれた。思っていた通りだという自信ありの表情をしていましたね。

このやり取りで私は彼をすっかり信用して、言うことを聞くようになりました。

ところが、昭和生まれのいけないところで、どうしても「頑張りすぎてしまう」。繰り返し「やり過ぎないように」と言われたにもかかわらず、ベッドの上の退屈から逃れるために、教わった運動を時間のある夕方や夜中にやってしまうのだ。そして強い筋肉痛に襲われるのだった。

担当の理学療法士さんに「痛みが消えるまで次のリハビリに進めなくなるので、頑張らないでください」としみじみ言われて、「よし、頑張らないように頑張る」と決意したのだった。

リハビリや理学療法がもっと社会に広まって欲しい

その後もリハビリを続け、現在は全身の筋肉はたぶん「歳相応」ぐらいには戻り、ゆっくり動く前提ならば日常生活に困らない程度になりました。特に力を失っていた腹筋は、理学療法士さんの「やり過ぎないように」との言いつけを守りリハビリに努めたことで、「腹筋がある」というところまで回復してきました。

また、普通に歩けるように戻るだろうかと懸念していたが、ほぼつまずくことなく、ウォーキングや買い物に行ける程度に戻りました。とは言っても、歩幅が狭くなり、歩く速度が遅くなっている実感があるので、ここからさらに回復できるかどうかが課題です。

今が歳相応なのか、まだ少し「弱った状態か」を考えながら、もう少し動けるように、少しでも身体の柔軟性を取り戻したいと強く思っています。

今回初めて受けたリハビリを通じて、もしリハビリの存在をもっと早く知り、理学療法士というプロがいることを教えてもらえていたら、生後すぐに罹った小児麻痺の運動機能障害も少しは回復できたのではないかと悔やんでいます。理学療法士とじっくり話してみた方がいいとアドバイスをくれる人が周囲にいなかったので、私自身、誰にどう相談したらいいのか知らなかったのが非常に残念です。

理学療法士の方たちと知り合ったことで、私のように身体に不具合を持つ人たちも、彼らと話し、身体の状態を調べてもらい、的確なアドバイスに基づいてリハビリをすることで、回復できる可能性があることがわかりました。

こういった機会を増やすような、社会的な動きが広まることを期待しています。私の体験記が少しでもそれに役立つならば、と思っています。

おわりに

第7回は、病気で長期入院となり、寝たきりで弱った身体機能を回復するためにリハビリを経験した際のエピソードや、生後間もなく罹った小児麻痺ではリハビリをせずに後遺症が残った経験を踏まえて、理学療法、理学療法士について感じたことなどをご紹介しました。

「頑張らないように頑張る」という投稿者様の言葉のとおりに、無理をせずご自身のペースで前向きにリハビリを継続されることの大切さが伝わる体験記でしたね。また、リハビリの存在をもっと早く知っていたら…という悔やしい気持ちも伝わってきました。今回のリハビリや理学療法士との出会いを機に、さらに身体機能の回復が進み、投稿者様らしい日常生活が不自由なく送れるよう心より願っております。

ご紹介した体験談が、現在治療中や闘病中の方、リハビリに励んでいる方の励みになりますように。
次回もお楽しみに。