【第1回:前編】健康寿命をのばして生涯現役!ベテラン理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法~視覚障がい者の支援に尽力する大内厚さん~
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今回からスタートする新企画「健康寿命をのばして生涯現役!ベテラン理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法」。
長きにわたりお仕事をされていて、現在も生涯現役を目指して活躍されているベテラン理学療法士の方々をピックアップし、現在のお仕事(セカンドキャリア)や、日々実践している健康法などをご紹介します。
第1回目を飾るのは視覚障がい者の社会参加と健康増進を図るための様々な活動に参加し、支援に尽力されている大内厚さんです。前編となる今回は大内さんのお仕事について、後編では大内さんが日頃実践されている健康管理法についてお話を伺っていきます。
【特集】健康寿命をのばして生涯現役!ベテラン理学療法士に聞く、キャリアと健康管理法
PROFILE
大内 厚さん(おおうち あつし)
日立リハビリコンサル、シーサイドパークタンデムサイクリングクラブ世話人。
1947年10月11日生まれ。1974年養成校卒業後、日立製作所日立総合病院に入職。系列病院や施設のリハビリテーション部門の立ち上げにも関わり、基盤整備や人材育成に貢献。また、茨城県理学療法士会会長として組織整備、会員獲得、養成校開設に力を注ぐ。日本理学療法士協会代議員、組織強化部部員、関東甲信越ブロック代表士会長を歴任し、養成校の非常勤講師や臨床実習の指導にも携わった。現在、視覚障がい者の情報収集と移動の障害に関する調査研究をおこなっている。
大内さんの現在のお仕事(セカンドキャリア)
まずは大内さんの現在のお仕事について伺います。大内さんは臨床現場や、茨城県理学療法士会での活動などに力を注がれた後、現在は視覚障がい者のための活動に参加されているとのことですが、主な活動の内容を教えてください。
大内さん:2016年に大学院修士課程に進学し、医療安全、人間工学、健康増進、統計を中心に学びました。現在は、一般社団法人音声ナビネットや視覚障害リハビリテ-ション協会に所属しながら、視覚障がい者の歩行支援に関する調査研究をおこなっています。
視覚障がい者は視覚からの情報がないため、外からの情報の80パーセントを失ってしまうと言われています。それが、情報収集や移動の障害となってしまうのです。そのため、視覚障がい者の情報収集や安全な歩行支援をおこなうための活動をしています。
また、視覚障がい者の社会参加と健康増進を図るため、「シーサイドパークタンデムサイクリングクラブ」を立ち上げ、その世話人としても活動しています。
視覚障がい者の支援を軸に幅広く活動をされているんですね。なぜ、このような活動をされようと思われたのですか?
大内さん:私自身、視力が低下して方向感覚が悪くなったため、方向感覚について調査をしてみようと考えたのがきっかけです。その後、視覚障がい者が安全に道路を歩行するにはどうしたら良いのか…との思いから、障害物の検知や道案内の調査研究などをするうちに、視覚障がい者の歩行支援に携わるようになりました。
ご自身の体験がきっかけだったのですね。視覚障がい者の情報収集や安全な歩行支援をされているとのことですが、詳しく教えていただけますか?
大内さん:視覚情報のない視覚障がい者は、メンタルマップという、いわゆる記憶の中の地図を作り、ランドマークを頼りに歩行します。これらを支援するため、一般社団法人 音声ナビネットと視覚障がい者リハビリテ-ション協会に参加し、安全な歩行支援を目指しています。
一般社団法人 音声ナビネットでの活動内容を教えてください。
大内さん:一般社団法人 音声ナビネットでは、スマートフォンの視覚障がい者用音声道案内アプリ「ナビレコ」を使用し、案内地図の作成をしたり、ガイド地図公開サイト「ナビ広場」で地図の公開をしたりと道案内のサポートをしています。
また、オンライン会議を毎月開催し、アプリの普及と使用方法についての指導もおこなっています。
アプリを使用することで、利便性が高まりそうですね。しかし、視覚障がい者にスマートフォン自体は普及しているのでしょうか?
大内さん:近年、スマートフォンから様々な情報を取得することが多くなっていると思います。しかし、視覚障がい者は画面が見えないためにタッチパネルの操作が困難であり、スマートフォンの使用率は20パーセント程度とかなり少ないのが実情です。
しかし、スマートフォンには画面読み上げ機能や音声入力機能、便利なアプリがあり、使い方さえ分かれば視覚障がい者の生活に非常に役立ちます。これらの使い方をサポートするため、iPhone・iPad活用ラウンジやITサロン・IT塾などの活動に参加し、情報収集の支援もおこなっています。
iPhone・iPad活用ラウンジは、毎月1回オンラインで開催しています。視覚障がい者や支援者の方が、iPhoneの便利なアプリの紹介や操作の疑問に答える形式でおこなっており、約90名の方にご参加いただいています。
約70名が参加するITサロンでは、オンラインでパソコンの画面読み上げソフトを使用しての操作時の疑問や問題点について、情報交換と問題点の相談会を隔月1回おこなっています。
視覚障がい者とITを繋げる、とても大切な活動ですね。視覚障害リハビリテーション協会では、どういった活動をされていますか?
大内さん:視覚障害リハビリテーション協会では、鉄道駅ホーム転落事故や交通事故防止の検討をする会を3カ月に1回開催しています。そこでは、事故の検証や当事者・関係者からの聞き取りなどをおこなうことで、事故を分析し、事故防止の対策を検討しています。
視覚障がい者にとっては、駅ホームは欄干のない橋を渡るように危険です。また、横断歩道は信号機の色がわからず、車の停止音を聞き分けて渡るために命がけの横断となっています。これらの事故防止のために活動しています。
視覚障がい者の困難を、多くの側面からサポートする必要があることがわかります。最後に、ご自身で立ち上げられたという「シーサイドパークタンデムサイクリングクラブ」についてもお聞かせください。
大内さん:視覚障がい者は、社会参加しづらくなってしまったり、運動不足になりやすかったりします。そのため、2019年9月年に「シーサイドパークタンデムサイクリングクラブ」を立ち上げ、以来、世話人として活動しています。
そのクラブでは、複数人が前後に乗り、同時に漕ぐことができるタンデム自転車を活用し、視覚障がい者の方と同乗し、サイクリングをします。視覚障がい者、ボランティアなど12名の会員が参加してくださっています。
サイクリングは、ひたちなか市国営海浜公園内にあるサイクリングロードにて、隔月1回開催(※)していますが、参加者の方々は、さわやかな風を感じながら楽しまれている様子です。日頃の運動不足解消にもなりますね。
(※)2022年12月現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催は未定となります。
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