バリアフリー地図アプリ開発者 織田友理子さんに聞く(3) 患者会の活動と周囲の支援、理学療法士との関わり

車椅子生活を送る多くの方の外出環境を支えるバリアフリー地図アプリ「WheeLog!」。世界中どこからでも無料で投稿・閲覧することができ、Googleマップ上に集約されたバリアフリー情報をチェックすることができます。

本連載では、このサービスの立案・開発者である織田友理子さんにインタビューをしています。最終回である第3回目は、織田さんが発症した希少疾病の患者さんや関係者などが集う「遠位型ミオパチー患者会」の活動について、また、理学療法士との関わりについてうかがっていきます。

患者会の活動を通じて、社会を変えていきたい

写真:2008年5月、初めての街頭署名活動(大宮)

織田さんは、遠位型ミオパチー患者会の代表でいらっしゃるのですね。どのような活動をされているのでしょうか。

織田さん:私は、2008年に発足したNPO法人 遠位型ミオパチー患者会(Patients Association for Distal Myopathies、以下PADM :パダム)という団体の代表を務めています。PADMでは、行政機関や製薬会社に対する新薬の開発の働き掛けや、病気の認知度向上のための活動などを行なっています。

現在PADMには、日本全国から130人ほどの患者が所属しており、年に1回以上はシンポジウムを開催しているほか、患者同士が直接顔を合わせて繋がれるように、全国各地で交流会も実施しています。

遠位型ミオパチーは患者数が日本に400人ほどという、とても希少性の高い病気(注釈:厚生労働省の「難病の患者に対する医療等に関する法律第5条第1項に規定する指定難病」に指定)です。私が発病した当時はまだインターネットがそれほど普及していなかったので、お医者様に「患者の数からして、同じ病気の人と今後出会うことはほぼないと思うよ」と言われていました。しかし今ではインターネットを通して、こうした希少疾病でも患者が団結して様々な活動ができるようになっています。

インターネットを活用して、リアルの場でもコミュニティーが作られているのですね。先ほどの「新薬の開発を働き掛ける活動」とは、どのようなものなのでしょうか。

織田さん:希少疾病では特に、患者側が声を上げていかなければ、研究や開発について国や医療機関がアクションしてくれる可能性が低いのが現実です。そこで私たちは何社もの製薬会社にあたり、新薬の開発を行ってくれる会社を探しました。確実なことは分かりませんが、もう少ししたら遠位型ミオパチーのための薬ができるかも知れないと思っています。

希少性の高い病気では特に、患者の声が重要になってくるのですね。国や医療機関を動かすというのは、とてもエネルギーが必要そうです。

織田さん:このように患者の自主的な活動が必要な希少疾病は世の中にまだまだたくさんあります。PADMには活発に声を上げる雰囲気がありますが、そこまでできない患者会も多いのではないかと思います。患者が声を上げること自体、決して簡単なことではないのです。

だからこそ、私たちPADMが特例で助成金が得られて治療開発にたどり着けても、それで終わってはいけないと思います。他の病気のためにも、治療開発の促進を制度化できないかと考えています。まだまだ改善の必要はあるものの、状況はしっかり前進しているので、引き続きこのような形で社会に貢献していけたらと思います。

NPO法人PADM 遠位型ミオパチー患者会

遠位型ミオパチーのガイドブックを自主制作。医療従事者にも読んで欲しい

遠位型ミオパチーのガイドブックもPADMで作成されたそうですね。

織田さん:そもそもこの病気についての解説書や専門書がほとんどなく、もっと病気のことを知ってほしいとの思いから自主制作しました。医者と患者それぞれの視点でのコメントや病気の解説、最新の研究状況について、また福祉機器の情報なども集約しています。

この病気の権威である医師の方にも執筆を協力していただきました。遠位型ミオパチーの情報に特化した書籍がないなかで、患者をはじめ、情報を求めている方々にしっかりと届けるにはどうしたらよいか、内容を考え抜きました。

デザインやレイアウトも、とても見やすいものに仕上がっていますね。

織田さん:デザインやレイアウトはこだわった部分です。医療書籍は難易度も高く、一見すると取り組みづらい印象になりがちです。このガイドブックでは、あたかもファッション誌のようなデザインになるよう工夫しました。かなり手に取りやすいものになっていると思いますよ。

一般の人と医療従事者、どちらのニーズも満たすような冊子になるように、ちょうどいい専門書を目指すためとても気をつかいました。

患者だけでなく、医療従事者にも読んでもらえるように制作したのですね。

織田さん:はい。自分と関わりのある医療従事者が、自分の病気に対して詳しい知識を持っていることは、患者から見てとても重要なことだと思います。それだけでとても安心することができますから。

書店等には置いていないのですが、患者会で関わった方に無料配布しています。また、どなたでも閲覧できるように、インターネット上でPDFを無償提供していますので、ぜひダウンロードして一度読んでいただきたいです。

遠位型ミオパチー ガイドブック

「患者がどう生きていくかを考えてほしい」―理学療法士に伝えたいこと

織田さんのリハビリテーションと関わりのある理学療法士について聞かせてください。患者からの目線で、理学療法士に求めることは何でしょうか。

織田さん:知識や技術だけではなく、色々な話題や情報が豊富な理学療法士さんとのリハビリテーションは楽しいですね。きついことも多いリハビリテーションが楽しくなるように時間を過ごさせてくれる理学療法士さんはありがたいなと思います。

例えば、私の周りには医療機器の最新情報などを教えてくれる理学療法士さんがいます。そのタイミングで必要ない場合は聞き流してしまうことも多いのですが、ある時必要になってふと思い出して医療機器を購入したりします。

そのような形で紹介してもらったのが電動エアマットでした。当時の私は、電動エアマットというと障害がもっと重くて大変な人が使うものだというイメージを持っていましたが、勧められて実際に利用してみると生活の充実度が格段にあがりました。今では自宅用と出張用の2個持ちするほどです。

このように、情報が手元にあるだけで生活が便利になることを体感しているので、今では最新の情報を自分でも入手できるようにアンテナを張っています。

患者の立場になって、役立つ情報を教えてくれたり、その患者がどう生きていくかまで考えてもらえると嬉しいですね。リハビリテーションだけでなく、患者一人ひとりの人生に向き合ってくれている理学療法士さんの姿勢は、患者も感じ取ることができると思います。

最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願い致します。

織田さん:サービスの質と量を向上させていくためにも、「WheeLog!」のユーザーを少しでも増やせたらと思っています。車椅子ユーザーだけではなく一般の方々にも利用していただいて、アプリユーザーの裾野を広げていきたいです。どんどんユーザーの輪が大きくなっていけたらと願っています。

3回にわたって織田友理子さんにお話をうかがいました。織田さん自身の前向きなエネルギーが、遠位型ミオパチーの患者さんや車椅子ユーザー、そして世界中の多くの人々を巻き込み、大きなコミュニティーが出来上がりつつあることがわかりました。

ここまでお読みくださった皆様も一度、「WheeLog!」のアプリをチェックしてみてください。そして情報を登録してみて、いつかその情報が世界の誰かの役に立つかもしれないと想像していただけると、新しい気付きがあるかもしれません。

WheeLog! 公式ウェブサイト
WheeLog! アプリ:iOS用(App Store) WheeLog! アプリ:Android用(Google Play)

PROFILE

織田 友理子(おだ ゆりこ
車椅子ウォーカー 代表
NPO法人PADM 遠位型ミオパチー患者会 代表
一般社団法人WheeLog 代表

20代の時に発症した希少疾病「遠位型ミオパチー」により車椅子生活を送ることになる。患者会代表として、また、「WheeLog!」代表として国内外で活動をおこないながら、現地で車椅子の実地調査をおこなう。一児の母。