【前編】防災の日特集 災害時の新型コロナ感染を防ぐために~災害時にできること~

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近年、台風に加え、豪雨による災害も全国各地に甚大な被害をもたらしています。また、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の拡大が不安視される中、避難が必要になった場合の感染対策も警戒していかなければなりません。

そこで、リガクラボでは、9月1日の防災の日に向けて、湘南医療大学の下田栄次さん(理学療法士)に、COVID-19流行下における災害対策についてうかがいました。

第一回目は、災害発生時の避難時の感染症対策についての情報をお伝えします。

密を避けた避難とは

※写真はイメージです。

災害が発生した際、避難所が開設される場合には、感染症対策に万全を期すことが重要となります。そこで、避難所の過密状態を防ぐために、政府は避難所以外に3つの「避難方法」を提案しています。どのような状況であれば、どの避難が適切か、あらかじめ想定しておきましょう。

  • 在宅避難
  • 親族や友人の家等への避難
  • ホテルや旅館等を活用した分散避難

ただし、水害時には感染拡大を恐れて避難を躊躇せず、まずは安全な場所への避難を最優先してください。

避難する施設について事前に検討しておきましょう

従来の避難所は、避難者が一定数集まってから少しずつ避難所のレイアウトや環境を整えていましたが、COVID-19に代表される感染症の対策を取るためには不十分です。事前に感染症対策を前提としたレイアウトの検討や衛生環境の準備と計画をしておくことが必要です。

  • 事前に地域で感染症について学ぶようにし、感染対策に関する意識を高く持ちましょう。
  • 避難所の中では、居住スペースを家族などの世帯単位で確保できるようにしましょう。
  • 居住スペースは、各世帯2メートル以上の間隔(ソーシャルディスタンス ※1)を空けたうえで、座った状態で頭の高さよりも高いパーテーション等で区切ることが推奨されています。
  • 受け入れが可能な避難者の数が、従来より少なくなることを想定しておきましょう(※2)。

※1 ソーシャルディスタンス(social distancing)という表記について
日本ではソーシャルディスタンスという表記を多く目にします。しかし、社会的な分断をイメージされてしまうため、海外では、physical distancing(フィジカルディスタンス:身体的距離)という表記が推奨されています。

※2 筆者が防災アドバイザーとして関わっている自治体では、地域防災計画で定められている一人あたりの面積2.0平方メートルを4.0平方メートルで試算したところ、想定している避難者数よりも約4割削減する必要があることが明らかになっています。

※写真はイメージです。

避難の判断基準を知りましょう

実際に避難することになった場合、どういった基準で避難を判断すればよいのでしょうか?
自宅の状況と、公式の基準をそれぞれ見ていきましょう。

家庭での判断

自宅や職場周辺では、土砂災害警戒区域や浸水リスクといった「災害ハザード」を自治体から配布されている防災マップ等で把握しておくことが非常に重要です。
防災マップ上の災害ハザードから住居環境、家族構成、最寄りの避難所までの場所などを総合的に判断して、そもそも避難所に行く(避難する)必要があるのか、ということも考えておきましょう。

特にマンション等の頑丈な住宅に住んでいる方は、在宅避難、垂直避難(上の階への避難)が可能であるか検討をおこないましょう。3世代の同居世帯や自宅療養中のご家族がいる場合は、事前に連絡手段を確認しておきましょう。事前に「避難をする」、「避難しない」の判断基準、そして避難経路について検討をしておくことをおすすめします。

全国のハザードマップ(災害の被害を予測したマップ)を国土交通省が取りまとめたWEBサイトがあります。このサイトを使用して、あなたの地域の災害予測を確認してみましょう。

ハザードマップポータルサイト
※写真はイメージです。

公式の避難基準

風水害では、お住まいの地域に出される、防災気象情報における警戒レベル3(赤)に相当するのは「大雨警報(土砂災害)」、「洪水警報」、「氾濫警戒情報」、「高潮注意報」などです。こうした自治体が避難準備・高齢者等避難開始を発令する目安となる情報が発出された時点で、「避難をする」、「避難しない」について、また避難方法を検討する必要があります。

「非常に危険」とされる警戒レベル4(紫)に相当する「土砂災害警戒情報」、「氾濫危険情報」、「高潮特別警報」、「高潮警報」といった避難勧告発令の目安となる情報が発出された時点で、身の安全を確保しましょう(図1)。

図1「避難勧告等に関するガイドライン」(内閣府)より一部改変(筆者作図)

また、地震発生時の対応では、震度5以上の地震が発生した場合、窓ガラスの飛散や家具・家電の転倒に注意し、火元の確認、安全確保と出口の確保をおこない、携帯電話もしくはラジオやテレビ等のメディアより情報収集をおこないます。
状況の把握、自身と周囲の安全確認をおこなうとともに、負傷者がいる場合は、救急要請もおこなう必要があります。

次回のコラムでは、COVID-19対策として必要になる衛生用品、そして災害ハザードマップ(防災マップ)などから事前に準備できることについて紹介したいと思います。

※写真はイメージです。

 【参考文献】 

New Zealand COVID-19 Alert Levels Summary
Guide on Tsunami Evacuation during COVID-19

PROFILE

下田 栄次(しもだ えいじ
湘南医療大学 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 助教
独立行政法人 国際協力機構 国際緊急援助隊 医療調整員(理学療法士)
公益社団法人 神奈川県理学療法士会 災害対策委員会 委員長
一般社団法人 日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)本部 広報委員
一般社団法人日本災害リハビリテーション支援協会 かながわJRAT 事務局長
登山者遭難救助隊(山岳救助隊)

自身の事故経験から理学療法士を志し、資格を取得。東日本大震災を機に、災害リハビリテーション支援チーム「Physical Support Volunteer Team」を結成。ボランティアとして、被災者の支援活動をおこなう。現在は、湘南医療大学にて教鞭を取りながら、災害時における避難所生活環境支援と、登山活動における外傷・障害予防の実践に関する研究活動を実施。ほかにも国際緊急援助隊(JDR)隊員、 神奈川県理学療法士会 災害対策委員会 委員長、日本災害リハビリテーション支援協会 かながわJRAT 事務局長、秦野市丹沢遭難対策協議会 登山者遭難救助隊など、その活動は多岐にわたる。

【第4回】シカクの人物図鑑 下田 栄次さん:大学で教鞭を取りながら、災害リハビリテーション支援や山岳救助に尽力する理学療法士