【後編】防災の日特集 災害時の新型コロナ感染を防ぐために~介護や医療ケアが必要な家族に向けて~

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こちらの記事では、9月1日の防災の日に合わせて、新型コロナウイルス流行下における災害対策についての情報をお伝えしています。

第3回目も、引き続き湘南医療大学の下田栄次さん(理学療法士)にうかがっています。
最後となる今回は、高齢の方や障害のある方、在宅にて医療的なケアや介護が必要な方に向けた事前の準備や災害対策について紹介いただきます。

お薬と歩行補助具の準備をしましょう

災害時に備えて、障害の有無に関わらず準備をしておいて欲しいことが2つあります。1つ目は「お薬」、2つ目は移動の際に使用する杖などの「歩行補助具」です。
まずはお薬の準備から見ていきましょう。

「お薬」の準備

災害時に備えて、普段服用しているお薬の情報をしっかりと確実に記録・保管しておくことが大切です。前回ご紹介した特別用途食品の準備とセットで、服用しているお薬の内容を確認しておきましょう。

災害時はかかりつけ医に診てもらえるとは限らず、医療に関わる支援者にお薬の情報を正確に伝える必要があるためです。そうでないと、お薬を処方するにあたって慎重に確認していく必要があり、迅速かつ適切な対応ができなくなってしまいます。服薬の内容によっては、薬のリバウンド現象(反動で一時的に症状が悪化する現象)や離脱症状(禁断症状や特異な症状)といった、重大な副作用を引き起こしてしまう可能性もあります。

普段から災害時に備えた服薬情報の管理を

避難する際には、お薬手帳(もしくは処方シール、薬剤情報提供書)を必ず持参するようにしましょう。用意できない場合は、お薬のメモやかかりつけの病院名などを記載しておきましょう。お薬やお薬手帳などの写真を携帯電話等に記録しておいても良いです。そして記録したお薬の情報(お薬の名前、用量、かかりつけ医)のメモは避難袋や財布、バック等に入れておきましょう。

また、お薬の処方内容は変化するため、少なくとも1~2ヵ月ごとにお薬の記載情報を更新するように心がけましょう。調剤薬局によっては、お薬の情報を「QRコード」にして配信しているところもあるので活用してみてください。そして、お薬の情報を記録したものを家族にも渡しておくことで、ダブルチェックにもなりますので家族とも共有することをおすすめします。

「歩行補助具」の準備

杖や膝・足などの装具といった歩行補助具を普段から使用している方は、避難の際に忘れないよう必ず持ち出し袋にも予備を準備しておきましょう。加えて「新しい生活様式」での感染予防の観点から、避難所内で転倒しないような履き慣れた室内履きの準備をしておくことが大切です。

東日本大震災後の福祉避難所立ち上げ時の支援では、津波によって、義歯や日常で使用している杖、歩行補助具、靴が流されてしまった方が多くいました。加えて、お薬の情報もはっきりとわからないために、食事内容の確認やお薬の調整に時間を要し、屋内外の移動方法にも難渋した経験があります。

図1 避難所に持って行ったほうがいいもの(非常用持ち出しバッグ)リスト(筆者作成)

災害時の生活不活発病対策

災害が起きると活動量は減ってしまう傾向にあります。医学的にも1ヵ月身体を動かさずに安静にしていると、低下した体力を回復するためには、その倍以上の期間を要するといわれています。さらに活動量が低下した状態が続くと、心や身体に様々な悪影響が出てきます。このような状態を生活不活発病(廃用症候群)ともいいます。生活不活発病とは、動かない(生活が不活発な)状態が続くことにより、心と身体の機能が低下して「動けなくなる」ことを言います。

【第1回】新型コロナ対策:生活不活発病予防のすすめ~家の中で身体を動かそう!

生活不活発病の予防には、バランスの良い食事と適度な運動(生活の中でなるべく動くこと)が重要です。病気をお持ちの方も過度に安静にせず、家の中や避難所でも工夫をして動くことで、予防ができます。スマートフォンやスマートウォッチで日々の歩数や活動量をモニタリング(確認)できるアプリもあります。積極的に活用してみましょう。

また、日本理学療法士協会で発行しているハンドブックにも、座ったままおこなう「ひざのばし運動」や室内でできる体操などを紹介していますので、そちらもぜひご活用ください。

※参考 生活不活発病の予防について(本会ホームページより) 

外出できない時に体力を落とさないためのリハビリ 生活不活発病予防リーフレット
膝を伸ばす体操(座位)
タオルを使った体操(立位)
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