【第2回】暮らしに理学療法士の視点を:最適な福祉用具の選び方~自立していてもふらつきがある場合(後編)

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トイレ:安全に、楽にできる環境づくりを

トイレの心配があると外出の機会も減り、活動する意欲もなくなってしまうため、トイレに不安がないような環境が大切です。

高齢になるとトイレに行く回数も増え、うまく我慢ができず尿が漏れてしまう心配などが出てきます。尿意を感じてからトイレへ行くまでの時間的な余裕もなくなるので、その時間内にトイレで一連の排せつ動作を安全にかつ確実にすることが大切です。

トイレまで移動し、便座に座るなどの動作には、手すりがあると安全です。特に、便座に座る際など身体の向きを変えるときは転倒しやすいので、手すりを持って安全におこないましょう。また、その手すりは、着座、便器からの立ち上がりやズボンや下着の上げ下げのときにも、身体の安定に役に立つので、これらの行動がしやすい適切な位置に付けておきましょう。

手すりだけでは立ち上がりが難しくなった場合には、昇降便座など座面の高さを変える用具を便器に取り付けると立ち上がりが楽になります。

どのような動作のやり方や福祉用具がよいかについては、地域で働く理学療法士に相談してみてください。

福祉用具ワンポイントレッスン② 服の選び方

トイレで急いでズボンや下着を下ろすとき、ボタンやベルト、ファスナーなどは扱いにくいものです。腰ゴムで伸びやすい素材のズボンなどが脱ぎやすくなります。

特に服を脱ぐときや着るときに立っている姿勢を安定させるには、片手で手すりを持ちます。その場合、脱ぎ着が片手で簡単にできる服を選びましょう。

入浴:快適にできる工夫をしましょう!

入浴は身体をきれいにするばかりではなく、疲れを取り除き、温熱効果で身体を柔らかくしてくれます。また、快眠、癒しの効果ももたらします。安心してゆっくりと入浴できる方法について見ていきましょう。

入浴の動作は、「滑りやすく狭い場所を歩く」「身体を洗う椅子に座ったり立ったりする」「浴槽にまたいで入る」「浴槽内で立ち上がる」など、難しい動作がすべてそろっています。濡れて滑りやすい環境なので、必要な場所に手すりを取り付けて、身体を安定させることが大切です。

家の中では手すりや杖を使わずに歩いている人でも、安全のために手すりを取り付けることをお勧めします。特に、浴槽に入るときに立ったまま、またいで入ろうとするとバランスを崩す危険があるので、浴槽のふちに腰かけてから足を入れましょう。

浴槽内の手すりの位置や、安全な動作の方法などは地域で働く理学療法士に相談してみてください。

福祉用具ワンポイントレッスン③ シャワーチェアの選び方

身体を洗うときは、立ち上がりやすい高さのシャワーチェアを用いると安全です。シャワーチェアには広めの座面やひじ掛けがあると、椅子の位置を確認しながら座れるので安心です。購入する際には実際に座って試してみましょう。

また、蛇口が下の方にある洗い場では、床に洗面器を置くと身体をかがめなくてはならないので、洗面器を使いやすい高さにするために台を置くとよいでしょう。ホームセンターなどで購入できます。

福祉用具を活用してできることを増やしましょう!

Aさんは、まだ介助は必要ではないものの歩くことに不安を抱えている方です。A さんのような方の場合、ご自身でできることを尊重することも大事ですが、無理をして転倒・骨折につながったり、不安で家や寝室に閉じこもってしまうことで、体力の低下とともに今までできていたことも徐々にできなくなる場合があります。

手すりや福祉用具などの環境を整えることで、安心安全に活動できる環境があれば、今の身体の機能と生活を継続できるので、早めに手すりや福祉用具を導入することが大切です。

いかがでしたでしょうか。身体や居住環境を整えつつ適切な福祉用具を使うことで、Aさんが安全に社会活動へ参加できるように応援できるとよいですね。

次回は、座ることはできても、立ち上がりは介助が必要なBさんの悩みごとについて見ていきましょう。

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