【第4回】みんなのリハビリ体験記〜急性心筋梗塞後の心臓リハビリを乗り越えて~

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連載「みんなのリハビリ体験記」では、ご自身やご家族が、病気やケガによるリハビリをこうやって乗り越えた、こんな素敵なエピソードがあった、現在前向きに取り組んでいる…など、読者の皆さんのリハビリに関する体験談を紹介しています。

第4回は、ご自身が急性心筋梗塞を患い、心筋梗塞の再発や心不全発症の予防、心臓機能の活性化のためにリハビリテーションに取り組み、快復に向かっている方の体験記をお伝えします。

PROFILE

ペンネーム:tktm ashr さん (62歳・男性

神奈川県在住
リハビリのきっかけ:急性心筋梗塞

急性心筋梗塞後の心臓リハビリを乗り越えて

急性心筋梗塞の発症と闘病生活の始まり

定年退職後に購入したロードバイクと江の島の美しい日の出

3年前に定年退職した私は、ほぼ一日置きにジムに通い、毎回1時間程度筋トレに励む日々を送っていました。それだけでなく、サプリメントでプロテインや亜鉛、クレアチン、グルタミンを飲むなど、さらに効率的な筋力の増強を目指して真剣に取り組んでいました。また、ロードバイクを購入して車に載せ、全国の観光地や温泉地巡りをするなど、楽しい毎日を過ごしていました。

そんな健康や体力に自信を持っていた私が救急車で搬送されたのは、2021年11月でした。広島県の実家に帰省していた際の早朝、上半身に冷や汗をかき始め、胸を絞めつけられるような激痛に襲われ、息苦しくなりました。急性心筋梗塞でした。

幸い、ステント留置術という血管を内側から補強して拡げたままにする処置により命をつなぎとめることができました。しかし、冠動脈の主管部に梗塞が起きたため心臓にひどいダメージを受けました。主治医からは「即死のケースに当てはまる状況でした」と伝えられました。

この日から私の闘病生活が始まりました。

不安でいっぱいの”心臓リハビリ“がスタート

集中治療室から一般病棟へ移動して、私は経験したことのない未知の生活にどのように対応したらいいのかわからず、不安な気持ちでいっぱいでした。

手術後は、不整脈が起き看護師が私の部屋に駆け込んでくることが何度もありました。ベッドから起き上がる、飲食する、歩く、トイレに行くなど、身体を動かすことに恐怖と不安を感じる日々を過ごしていました。

手術から10日ほど経った頃、「来週から心臓リハビリテーションをやりましょう」と主治医に伝えられました。”心臓リハビリテーション“という言葉を耳にして、何をするのだろう?と疑心暗鬼になったのを覚えています。

リハビリ開始当日、理学療法士から動脈硬化の進行や心不全発症の予防、心臓機能の活性化、運動療法の必要性などについて説明があり、加えて、退院までの心臓リハビリのプログラムについての説明があったように思います。しかし正直に言って、その説明をしっかり受け止め、理解できるほどの心の余裕が当時の私にはありませんでした。

理学療法士のサポートに、少しずつ自信を取り戻す日々

私は不安な気持ちから溢れ出る質問を、一方的に担当の理学療法士に尋ねました。理学療法士は私の質問をしっかり聞き取り、今の心臓の状態やこれからどのように心臓機能を改善させるかなど、ひとつひとつ丁寧に説明してくださいました。今振り返っても、とても感謝しています。

心電図の装置を身体にセットして、2キログラムのアンクルウエイトを付け、足の上げ下げ、階段の昇降、リハビリ用の自転車乗車、廊下での歩行など、さまざまなプログラムに慎重に取り組む日々。理学療法士には「不整脈が出ていますが少しずつ治まります」「昨日より不整脈が減っていますよ」「数値が少しずつ良くなっていますね」「この調子でがんばりましょう」など声を掛けていただきました。

そういった助言や支援、励ましの言葉は、折れかけていた私の心の支えになり、本当に感謝しています。少しずつ不安が軽減して自信を取り戻し、リハビリに取り組む意欲の向上につながりました。

また、リハビリをおこなう中で、私は担当の理学療法士が心電図の結果やエコー検査の数値、処方された薬について事前に把握していることを知りました。患者に寄り添って支援や指導をおこなう理学療法士のこのような姿勢を見て、私は安心してリハビリに取り組むことができたと思います。

退院後の生活について

退院後しばらく療養した 広島県の山間部でのリハビリの様子

退院の日に、事前に実施した運動負荷検査の結果を踏まえ、理学療法士から今後実施可能な運動内容と実施不可の運動内容について説明がありました。その指導内容にそって、自宅に戻ってからも、引き続き毎日30分以上の歩行を中心に、意欲的に運動療法に取り組んでいます。

退院後は、ずっと不安な日々を過ごしていた妻も病院内のリハビリセンターに付き添ってくれました。私がリハビリに取り組む様子を少し離れて見ていた妻に対して、担当の理学療法士がこれまでのリハビリの内容や今後の取り組みなどについて直接説明してくださったことを、リハビリ終了後に聞きました。その日は久々に妻の安心した笑顔を見ながら、おいしく夕食をとったことを今も思い出します。

術後は体重が10キログラム以上減り、筋力と体力の低下が顕著でしたが、幸いにも検査結果の数値は安定、少しずつ体力も回復し、自信を取り戻しつつあります。私はもともと身体を動かすことが大好きで、性格的にせっかちで早食い、何事もかなりやり過ぎてしまうところがあります。そのような私は、理学療法士から「この半年から1年間、心臓機能の回復にはリハビリが大切ですが、決してやり過ぎないように!」とお灸を据えられました。

趣味を継続しつつ、穏やかに過ごしたい

今後は心臓機能の様子を見ながら、全国の温泉地巡りに行きたいです。また、やり過ぎない程度に筋トレを再開したいと思っています。温泉とダンベルが私を待っているように感じます(笑)残された時間を、季節の移り変わりを楽しみながら夫婦で穏やかに過ごしたいですね。

術後、絶望と失望のどん底にいた私たち夫婦に、担当の理学療法士はカウンセリングマインドを持って温かく寄り添ってくださいました。私たちが希望を持って、前向きな気持ちになるよう支援してくださった理学療法士の方々に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

おわりに

今回は、急性心筋梗塞を発症し、その再発防止や心不全発症予防、心臓機能の活性化のためにリハビリに励んだ方の体験談をご紹介しました。

日頃から身体を鍛え、積極的に趣味を楽しみ、ご自身の健康にも気を配っていた方だからこそ、最初はご病気に驚かれたと思います。しかし、趣味を再開したいという思いはリハビリの励みになったのではないでしょうか。また、理学療法士や奥様といった身近な方のサポートや励ましで辛い期間を乗り越えられたのだと感じるエピソードでした。これからも趣味の筋トレや、全国の温泉巡りも奥様と一緒に楽しんでいただきたいなと思います。

ご紹介した体験談が、現在治療中や闘病中の方、リハビリに励んでいる方の励みになりますように。
次回もお楽しみに。