【第4回】教えて!初めての在宅介護~福祉用具・住宅改修について~
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リガクラボの連載「教えて!初めての在宅介護」では、初めての介護への疑問・不安についてお答えするべく、在宅介護に関する情報を紹介しています。
前回は番外編として、在宅介護が難しくなった場合の選択肢のひとつとなる介護保険施設についてお話ししました。第4回となる今回は、在宅介護で必要となる福祉用具や、住宅改修についてお話ししていきます。
【特集】教えて!初めての在宅介護
PROFILE
今回の質問者:Bさん (47歳・男性 )
・70代の父親が脳梗塞となり、在宅介護をおこなっている。
・同じく70代の母親も同居している。
・Bさんと父親の住まい:神奈川県(戸建・2階建て)
・父親の要介護度:要介護2
Q. 要介護2の父親の在宅介護をおこなっています。父は1人で立ち上がるのも難しい状態のため生活をサポートする福祉用具を揃えたいと考えていますが、介護用品売り場を見に行ったところ高額なものも多く驚きました。福祉用具は必要であれば購入するほかないのでしょうか?
A. 福祉用具は種類も値段もさまざまなので、初めて見る方は驚かれるかもしれませんね。福祉用具は介護保険のサービスで、借りることや購入することができます。
介護保険の給付対象となる福祉用具は、要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練(※)のための用具で、利用者が居住している場所で自立した日常生活を営むことができるよう助けるものです。
利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて適時・適切な福祉用具を利用者に提供できるよう、貸与が原則となっています。
しかし、貸与になじまない性質のもの(他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が伴うもの、使用によって元の形態・品質が変化し再利用できないもの)については、その購入費が保険給付の対象となります。
(※)編集部注:機能訓練
病気や怪我、老化などで喪失または減退した機能を回復するためにおこなう、運動療法などの訓練のこと。
では、どんな福祉用具が原則貸与の対象となっているのか、また貸与になじまないもの(購入となるもの)は何か、具体的な種目を見てみましょう。
福祉用具貸与(原則)
- 車いす(付属品含む)
- 特殊寝台(付属品含む)
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 手すり
- スロープ
- 歩行器
- 歩行補助杖
- 認知症老人徘徊感知機器
- 移動用リフト(つり具の部分を除く)
- 自動排泄処理装置
特定福祉用具販売(例外)
- 腰掛便座
- 自動排泄処理装置の交換可能部
- 入浴補助用具(入浴用いす、 浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具の部分
※福祉用具貸与のうち、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助杖、自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引するもの)以外の種目については、要支援及び要介護1(自動排泄処理装置(便を自動的に吸引するもの)は要介護2・要介護3も含む)の方は、原則給付の対象外です。ただし、身体の状態等によっては、要介護認定における基本調査結果に基づく判断や市町村への申請により、給付の対象となる場合があります。
福祉用具の貸与は、要支援・要介護認定を受けている人が対象となります。お父様のためにどのような福祉用具を借りればよいか判断するのはなかなか難しいかと思いますので、まずはケアマネジャーやレンタル事業所(福祉用具貸与事業所)にいる福祉用具専門相談員に相談してみましょう。貸与の際は、全国の平均価格の提示と複数の商品の提案がレンタル事業所に義務付けられていますので、説明をしっかり聞き納得したうえで導入しましょう。
購入する場合は1年間で10万円が限度額で、その1~3割が自己負担となります。いったん全額を支払い、後から払い戻しを受ける形です。月々の区分支給限度額には含まれません。
厚生労働省の下記のウェブサイトも参考になるのでぜひご覧ください。
Q. 福祉用具について、介護保険給付が受けられるということで安心しました。トイレや廊下、階段、玄関など、自宅の改修についても気になっていて、こちらも給付があると聞いたこともあります。父が少しでも安全に自立した生活を送れるように、手すりを設置したいと思っているのですが…。
A. お父様が安全にできるだけ自立して生活できるよう、またBさんや高齢のお母様の介助負担も減らせるよう、住宅改修をおこなうことは大切ですね。
在宅での介護の際に必要となる段差の解消や手すりの設置等の住宅改修についても、介護給付の対象となります。要支援・要介護認定を受けている人ならば利用可能ですので、こちらもご紹介します。
介護保険の支給対象となる住宅改修については、下記になります。
住宅改修
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取り替え
- 洋式便器等への便器の取り替え
- その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
住宅改修の場合、ポイントとなるのは、「工事の前と後にそれぞれ申請する」という点です。例えば自宅に手すりを取り付ける場合、まずはケアマネジャー等に相談し、施工事業者を選択・見積もりを依頼します。その後、工事前に必要書類(見積書や住宅改修が必要な理由書等)を市区町村に申請し、市町村から申請結果が教示されたら、工事を施行します。工事終了後、一旦施工業者へ支払いをおこないます。その後、必要書類(領収書や改修後の状態を確認できる書類等)を市区町村に提出し、申請が承認されると住宅改修費の支給額が決定し、支給されるという流れになります。
支給額については、支給限度基準額(20万円)の9割(18万円)が上限です。ただし、要介護度が3ランク以上の重度になった場合(例えば要介護1の方が要介護4になったとき)や、転居した場合は、再度、住宅改修費(支給限度額20万円)の利用ができるようになります。
改修の前には理学療法士や作業療法士に相談するのもいいでしょう。また、市区町村によっては独自の制度を作っているところもあるので、ケアマネジャーに確認してみてください。お父様にとって最適な福祉用具が見つかり、より暮らしやすくなる住宅改修ができるよう、応援しています。
※介護保険の給付対象になる住宅改修の内容などには地域差があります。
※この記事は2022年5月18日時点での情報で作成しています。
※この記事は、以下、厚生労働省を含む各コンテンツならびに各文献を参考に作成しています。
介護保険における福祉用具(厚生労働省)
福祉用具(厚生労働省)
介護保険制度における住宅改修(厚生労働省)
『医療福祉総合ガイドブック 2021年度版』.医学書院.2021.p164-165
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