【中編】熱中症やケガを予防して野球を楽しもう!~スポーツ障がい対策編~

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選手生活をより長く安全に続けるには、熱中症やケガの予防が欠かせません。

前回の記事では、中高生が野球をプレーする際に起こりやすい熱中症の予防方法、クーリングなどについてお伝えしました。中編となる今回は、中高生の野球選手に注意してほしいケガやその予防法などについて、前編に引き続き理学療法士の稲田さんにお話を伺います。

肩のケガについて

野球肩とは、投球動作の繰り返しによって生じた肩のケガの総称です。野球における肩のケガは、投手・捕手に多い傾向があります。特に、試合が続く、練習でボールをたくさん投げるなど、投球数が多くなる時に痛める可能性が高いです。

野球肩の症状

野球肩の症状は、投球時または投球後の肩の痛み、腕を上げる際の痛み、肩が動く範囲が狭くなる(可動域の制限)、力が入りにくい(脱力感)などがあります。それに伴って、ボールを投げることができなくなります。

野球肩の種類

野球肩は、以下のように発症の原因により異なる様々な種類のケガがあります。

野球肩を発症する原因

野球肩の発症には、肩関節内で、骨と骨の衝突や靭帯の挟み込みなどが生じることで痛みが誘発されたり、肩の筋肉(腱板)が損傷してしまったりといったさまざまな要因が影響しています。具体的には以下のような要因が挙げられます。

  • 投球数や練習量の増加によるオーバーワーク(肩の使いすぎ)
  • 投球フォームの不良による肩関節へのストレス増大
  • 以下のような部位の身体機能の低下

 ∟ 肩甲骨と胸郭で構成される機能的な関節である肩甲胸郭関節の機能不全
 ∟ 肩の動きを調整するインナーマッスルである腱板の機能不全
 ∟ 肩の後方が硬くなる肩後方タイトネス

  • コンディショニング不良による肩関節へのストレス増大

また、投球動作は下肢・体幹・上肢の運動連鎖による全身運動であるため、下肢・体幹の機能低下も原因となる可能性があります。

野球肩の予防方法・ストレッチ

野球肩の予防としてできる代表的なストレッチを3つ紹介します。痛みが出ない範囲で実施してください。

1.スリーパーストレッチ(肩の後方を伸ばすストレッチ)

① 伸ばしたいほうの肩を下にして横たわり、床側の腕を前に出します。
② 床側の腕を肘から直角になるよう上に曲げたら、反対側の手で足の方向に腕をゆっくり倒して20秒間キープします。
③ 上記を3セット程度おこないましょう。

2.大胸筋のストレッチ

① 四つ這いの状態で、肩幅より広く手をつきます。
② 伸ばしたいほうの肩を前に突き出して20秒間キープします。
③ 上記を3セット程度おこないましょう。

3.広背筋・小円筋のストレッチ

① 四つ這いの姿勢をとります。
② 伸ばしたいほうの肩の手を反対側の手に置いた状態から、身体の重心を移動させるイメージで身体を後ろに下げて、20秒間キープします。
③ 上記を3セット程度おこないましょう。

肘のケガについて

肘のケガは、肩のケガと同様に、投手・捕手に多い傾向があり、投球数が多くなるタイミングで痛める可能性が高いです。肘のケガは、肩のケガに比べて、高校生よりも中学生で多い傾向もあります。

肘のケガの症状

野球肘の症状は、投球時または投球後の肘の痛みや曲げ伸ばしでの痛み、肘の曲げ伸ばしのしづらさ、痺れや脱力感などです。それに伴って、ボールを投げることができなくなります。症状がひどくなると日常生活で痛みが出ることもあります。

野球肘の種類

野球肘は痛む場所によって大きく以下の3種類に分けられます。

野球肘を発症する原因

内側型野球肘は、投球時に肘関節が外反することで、肘の内側に伸長ストレス(牽引力)が加わり、炎症や組織の損傷が起きることで発症します。外側野球肘は、肘の外側に圧迫ストレスが生じることが原因となります。後方型野球肘は、フォロースルーの際に肘関節が伸ばされて、肘頭と肘頭窩という骨同士が衝突することで発症します。

野球肘の予防方法・ストレッチ

野球肘の予防としてできる代表的なストレッチを3つ紹介します。痛みが出ない範囲で実施してください。

1.肘前面のストレッチ(前腕屈筋群)

① 腕を身体の前に出し、伸ばしたい肘のほうの手のひらを上に向けた状態で、反対側の手で手のひらをつかんで、手首から下に反らします。
② 20秒間キープします。
③ 上記を3セット程度おこないましょう。

2.肘外側のストレッチ

① 腕を身体の前に出し、伸ばしたい肘のほうの手の甲を上に向けた状態で、反対側の手で手のひらをつかんで、手首から身体側に曲げます。
② 20秒間キープします。
③ 上記を3セット程度おこないましょう。

3.上腕三頭筋のストレッチ

① 伸ばしたいほうの腕を上に伸ばし、反対側の肩甲骨を上から触るようなイメージで肘を曲げ、その肘をもう一方の手でつかんで固定します。
② 肘を内側に曲げながら引っ張って20秒間キープします。
③ 上記を3セット程度おこないましょう。肘をしっかり曲げるのがポイントです。

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