【中編】熱中症やケガを予防して野球を楽しもう!~スポーツ障がい対策編~

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腰のケガについて

腰のケガは、肩や肘と同様に投球数や練習量が増加するタイミングで発生することが多いです。中でも、特に疲労骨折である腰痛分離症は投手に多いと言われています。投手では、投球側と反対側の椎弓(背骨の一部)に発生しやすいと言われています。一方で、バッティング動作の繰り返しでも発生するので、素振りの数や打撃練習が多くなる際に痛む可能性もあります。本記事では腰のケガの中から、腰椎分離症を取り上げてご説明します。

腰椎分離症の症状

スポーツ時(野球時)の腰痛が主な症状です。特に、投球動作やバッティング動作など腰を反る動きや、ひねる動きでストレスが加わり、痛みが出ることが多いです。症状が進行すると、立つ・座るなどの日常生活の動作でも痛みが出ることもあります。完全に骨が折れて分離した状態になると治りにくくなります。

腰椎分離症の原因

ピッチングやバッティングなどで身体(腰)をひねる動作を繰り返すことによって背骨の一部である「椎弓」と呼ばれる骨に負荷が生じ、疲労骨折(腰椎分離症)が起きます。特に、下肢の柔軟性低下や体幹の筋力低下など身体機能が低下した選手に発生しやすい傾向があります。

腰椎分離症の予防方法・ストレッチ

腰椎分離症の予防としてできる代表的なストレッチを3つ紹介します。痛みが出ない範囲で実施してください。

1.ジャックナイフストレッチ

① しゃがんだ状態で、足首を後ろから逆手で持ちます。
② 胸が太ももから離れないようにしながら、お尻を上げて膝をできるだけ伸ばします。
③ 膝を伸ばしたところで10秒間キープします。
④ 上記を5セット程度おこないましょう。

2.股関節前面のストレッチ(大腿四頭筋・腸腰筋ストレッチ)

① 片方の膝を床につけた状態で、もう一方の足を前方に出して片膝立ちになります。
② 立てている膝を手で支えて倒れないように注意しながら、床に膝をつけているほうの足の裏をお尻に近づけ、手で足の甲をつかんでさらにお尻に近づけます。
③ ②の体勢のまま、20秒間キープします。
④ 上記を3セットおこないましょう。

3.胸椎伸展ストレッチ

① 四つ這いの状態から、みぞおちをできるだけ床に近づけるように両手を前に押し出していき、胸を反らせます。 
② ①の体勢のまま、20秒間キープします。
③ 上記を3セットおこないましょう。

ケガをしないためにできること

外傷によるケガの予防は難しいところもありますが、投球動作などの繰り返しにより発生するケガ(スポーツ障がい)は、ストレッチやエクササイズで予防できます。ケガを未然に防ぐことができると、個人およびチームのパフォーマンスも高まりますし、野球を楽しむためにも大切です。

まとめ

中編では、中高生の野球選手に注意してほしいケガやその予防法などをご紹介しました。まとめると以下のとおりです。

  • 野球肩の予防には、肩の後方を伸ばすスリーパーストレッチや、大胸筋のストレッチ、広背筋・小円筋のストレッチが効果的
  • 野球肘の予防には、肘前面のストレッチ(前腕屈筋群)や、肘外側のストレッチ、上腕三頭筋のストレッチが効果的
  • 腰椎分離症の予防には、ジャックナイフストレッチや、股関節前面のストレッチ(大腿四頭筋・腸腰筋ストレッチ)、胸椎伸展ストレッチが効果的

ストレッチやエクササイズを通してケガの予防ができるとよいですね。ご紹介したストレッチは、特別な道具が必要なものではありませんので、ぜひ日々の練習の前後に取り入れてみてください。

後編では、投球動作による負担や、ケガを予防するための投球フォームのセルフチェック方法などについて稲田さんにご紹介いただきます。

前へ:肩のケガについて

PROFILE

稲田 竜太(いなだ りゅうた)理学療法士

稲田 竜太(いなだ りゅうた)理学療法士

専門分野:運動器理学療法、スポーツ理学療法、膝関節鏡視下術後リハビリテーション(ACL再建術後リハなど)、障害予防(大会支援など)

2013年理学療法士免許取得。同年、運動器ケア しまだ病院に入職し、現在に至る。一般社団法人アスリートケアにも所属し、甲子園健康支援をおこなっている。スポーツ理学療法認定・専門理学療法士。