【後編】熱中症やケガを予防して野球を楽しもう!~投球フォームチェック編~
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選手生活をより長く安全に続けるには、熱中症やケガの予防が欠かせません。
中編の記事では、中高生の野球選手に注意してほしいケガやその予防法などについて、お伝えしました。後編の今回は、投球動作による負担や、ケガを予防するための投球フォームのセルフチェック方法などをご紹介します。前編・中編に引き続き理学療法士の稲田さんにお話を伺います。
【特集】熱中症やケガを予防して野球を楽しもう!
投球動作とは
投球は、投球方向に足を踏み込み、身体を使って前方に体重移動させて(並進運動)、体幹・上半身の回転運動へと運動を連鎖させることで、運動エネルギーを指先に伝え、ボールを回転させる動作です。
投球動作においては、肩関節の角速度(物体が回転運動をするときの回転の速さを、単位時間の回転角で表したもの)は最大毎秒7000°に達し、肩には体重と同等~体重の1.5倍の強い負荷が加わります。
投球動作のフェーズ分け
野球の投球は、わずか1秒前後で終了する素早い動作です。投球フォームは以下のようなフェーズで構成されています。
- ワインドアップ期…投球の始まりから踏み込み足が最も高い位置に上がるまで
- アーリーコッキング期…踏み込み足が最も高い位置に上がってから、接地するまで
- レイトコッキング期…足が接地してから投球側の肩が最も外旋するまで
- 加速(アクセラレーション)期…投球側の肩が最も外旋してからボールリリースするまで
- 減速(フォロースルー)期…ボールリリースから腕を振り切るまで
投球動作で最も痛みが生じやすい投球フェーズとは?
先ほどご紹介した投球フェーズの中でも、レイトコッキング期〜加速(アクセラレーション)期において、痛みが生じることが多いです。
このフェーズは、投球動作のわずか9%、0.07〜0.32秒程度と非常に短い時間ですが、痛みを訴える割合は、全フェーズ中の74.2%であると言われています。
ただし、正しい投球フォームを身につけることで、レイトコッキング期〜加速(アクセラレーション)期での過度な負荷を減らすことができ、痛みの発生を防ぐことが期待できます。
正しい投球フォームを意識してケガを防ごう!
ケガをしないために、自分自身の投球フォームを確認してみましょう。
投球フォームをセルフチェックする方法
投球フォームをセルフチェックするには、スマートフォンやビデオカメラを用いて動画を撮影すると良いでしょう。三脚を使って撮影できるとなお良いです。真後ろと真横からのフォームを撮影するとチェックしやすいです。また、構えた状態から踏み込み足が着地するまで、全身が映るように気を付けましょう。
撮影した動画から、「肘が下がっていないか」「手投げになっていないか」「肩甲骨・背骨をしっかり使えているか」「踏み込み足がしっかり支えられているか」などをチェックしましょう。具体的に3つのポイントをご紹介します。
ポイント1
踏み出した足を着地させる時や、ボールリリース時の肘が下がっていないか確認しましょう。
◯良い例
両肩を結ぶラインより、肘を上に上げましょう!
×悪い例
両肩を結ぶラインより肘が下がり、前に突き出ていると、肩や肘に負担がかかります。
ポイント2
踏み出した足を着地させる時から、肩関節が最も外側に捻じれる肩最大外旋位(MER)まで、胸郭が使えているか(胸を張れているか)確認しましょう。
◯良い例
Cの形(Cアーチ)を意識して胸を張って、手を頭の後ろに持ってくると、胸郭が使えます。
×悪い例
手が頭の後ろから離れていると、胸郭が使えず、肩や肘に負担がかかります。
ポイント3
踏み出した足を着地させる時や、肩最大外旋位(MER)、ボールリリース時に、膝が足首より前に出ていないか確認しましょう。
◯良い例
下半身を使い、しっかり踏み込みましょう!
×悪い例
踏み出した足の膝が前に動き、脛の上部が外側に傾いていると、肩や肘に負担がかかります。
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