【前編】仕事と介護の両立 家族の介護が必要になる前に~事前準備しませんか?~
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事前準備をはじめよう!
個人の負担や社会的な背景がある中で、事前準備をすることは大切ですね。事前準備は、いつから始めたら良いでしょうか。
城岡さん:ご自身が45歳になる前に事前準備を行うことがポイントです。
45歳以降になると、親の介護を担う人(ケアラー)が急激に増加することがわかっています。具体的には、2020年時点で40~44歳の層におけるケアラーの人数は33万人であるのに対し、45~49歳の層における人数は65万人と、45歳以降に倍増することが試算※1されています。
年齢を一つの目安にするといいのですね。実際、親と老後の話や経済状況などを話す場合、気まずい方もいらっしゃるのはないでしょうか。
城岡さん:その場合、親に介護保険の保険証が届いたタイミング(65歳)や自身が介護保険料を納付し始めるタイミング(40歳)など、節目を活用して親や家族に話を切り出してみてはいかがでしょうか。
また、ゲームを活用する、という手もあります。「エンディングゲーム」というボードゲームでは、すごろく形式でのロールプレイングを通して、老後の生活を疑似体験することができます。
節目やゲームを使うことで、気軽に話すことができそうですね。実際に家族と話し合ったことがある方の事例を教えてください。
石田さん:家族旅行を企画して普段と異なる雰囲気を作り、親と気軽に話し合いができた方がいます。旅館でお酒を交わしながら、老後の希望や経済状況について、親と腹を割って話し合ったようです。家族旅行の2年後、親の介護が必要になったとき、家族旅行で話し合った内容を思い出して、親の意向を踏まえた将来計画を立てることができたと話されていました。
家族と事前に話すことを躊躇っている方やこれから家族と話合う予定の方に対して、城岡さんと石田さんよりメッセージをお願いいたします。
城岡さん、石田さん:家族だからこそ、介護に関する話題は口にしづらいこともあるでしょう。ですが、話すことで、家族の思いや意向を確認することができ、自身の仕事のことを考えながら、将来を見据えることができます。
「介護」について知り、その上で、どの様な負担があるか把握して、家族の事情を踏まえて、話し合い、事前準備をすることが重要です。これにより、家族介護を行うことになっても、知識があればスムーズな両立体制の構築が可能となりますし、家族間の相互理解があれば、精神的な負担の軽減にも繋がると思います。
※この記事は、以下を参考に作成しています。
※1「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)」(経済産業省)(2024年11月6日に利用)
おわりに
前編では、介護・ヘルスケア分野のリサーチ・コンサルティングを専門とされている城岡 秀彦さんと石田 遥太郎さんから、仕事と介護を両立する方の現状や背景、事前準備についてご紹介いただきました。仕事と介護を両立するためには、事前準備が重要であり、節目やゲームなどを利用して、気軽に話すことがポイントであると知ることができました。後編では、仕事と介護の両立支援制度や相談先などを城岡さんと石田さんにご紹介していただきます。お楽しみに。
PROFILE
城岡 秀彦(しろおか ひでひこ)
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 高齢社会イノベーショングループ マネジャー/理学療法士
東京湾岸リハビリテーション病院およびシンガポール国立大学病院での臨床・研究業務に従事後、日本総研に入社。主に、介護・障害者福祉領域における民間企業コンサルティングおよび官公庁調査を担当。
PROFILE
石田 遥太郎(いしだ ようたろう)
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 高齢社会イノベーショングループ シニアマネジャー
国内シンクタンク、医療介護事業会社、大手監査法人系FASを経て、日本総研に入社。主に、ライフサイエンス・ヘルスケア領域における民間企業コンサルティングおよび官公庁調査を担当。
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