【後編】仕事と介護の両立 職場の制度を把握してみませんか?
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家族の介護にはさまざまな方法があり、その中には、仕事と両立しながら介護を行うという選択肢も含まれます。前編では、仕事と介護を行っている方の現状や事前準備の大切さ、事前準備のポイントなどをお伝えしました。
後編である今回は、仕事と介護を両立するための職場の制度や確認先と介護予防について城岡さん(理学療法士)と石田さんからお話しをうかがっていきます。
【特集】仕事と介護の両立
事前に支援制度を把握しよう!
石田さん:仕事と介護を両立するために特に大切なのは、勤務先で活用できる両立支援制度の概要を事前に把握しておくことです。勤務先には、育児・介護休業法に基づいた「仕事と介護の両立支援制度」が整備されています。たとえば、介護休業や介護休暇、短時間勤務等の柔軟な働き方などの仕組みが取り入れられている場合があるので、必要に応じて活用するとよいでしょう。
先進的な職場では、両立支援制度で定められている取組にとどまらず、介護に関する情報提供セミナーの開催や、介護や福祉に関する相談・サポートを提供する介護コンシェルジュによる相談窓口の設置、仕事と介護を両立している職員同士のコミュニティ作りも行われているようです。
仕事をしながら介護を両立するための制度は様々あるのですね。実際、職場の制度を確認する場合、親の介護がまだ始まっていない状態で確認するのは早いと感じる方もいるのではないでしょうか。なぜ事前の把握が大切なのでしょうか。
城岡さん:「介護は突然始まるから」この理由につきます。認知症、脳卒中、転倒・骨折、心疾患等により、親の介護は突然始まります。介護で疲弊する大きな原因の一つは、初動時のつまずきにある、と言われています。介護に直面したときに、相談先や必要な手続きがわからず、疲弊してしまい、仕事を辞めて介護に専念しようという考えに至ってしまうパターンが少なくありません。介護が始まる前に、活用できる職場の制度を把握しておくと、いざ介護が始まった時に、スムーズに対応することができます。
初動時につまずかないためにも、職場の制度を把握する必要があるのですね。城岡さんと石田さんは、仕事と介護の調査にも携わられたことがあるかと思いますが、実際に両立がうまくいった事例を教えてください。
石田さん:上司・人事部との三者面談を通して、仕事と介護の両立が上手くいった方がいます。自身の介護の状況を上司にオープンにすることにより、業務量やシフトを調整しやすくなりました。また、職場で開催された介護当事者のコミュニティに参加し、同じ境遇におかれている社員と繋がることで、悩みや不安を共有でき、孤独感が解消した方もいます。
制度やサービスの確認先
自分の職場にどのような制度があるのか、どこで確認したら良いでしょうか。
石田さん:職場の制度については、まずは人事・労務の担当者に確認してみましょう。制度を活用しなくとも、上司や同僚に相談することによって、介護の状況に応じて柔軟に勤務を調整することができるケースもあります。
ただし、職場の制度を利用できたとしても、ご自身だけで頑張りすぎず、「介護のプロ」に頼ることも大切です。「介護のプロ」とは、公的介護保険サービスを提供する介護施設やケアマネジャー、ヘルパー等を指します。ただし、介護を行うときの第一の選択肢である公的介護保険サービスのみでは、親の介護すべてに対応できないことも事実です。
※公的保険で受けられるサービスについては、以下をご覧ください。
公的保険サービスで対応できない場合は、どのようなサービスが使えるのでしょうか。 また、利用したい場合はどこで相談できるのでしょうか。
城岡さん:「介護保険外サービス」を活用してみるのはいかがでしょうか。介護保険外サービスとは、介護保険では提供できないことを自費で補えるサービスです。費用は公的介護保険サービスよりも高くなりますが、家事代行、配食、買い物代行といった基本的な生活を支えるサービスに留まらず、旅行サポートや運動、訪問理美容など、楽しみ・喜びにつながるようなサービスも活用できます。このように、介護保険外サービスをうまく活用すると、公的サービスの対象とはならない多様なニーズに対応できるので、ぜひその活用も検討してみてください。
実際に利用してみたい場合は、介護保険外サービスを提供する各社のホームページを検索してみましょう。担当のケアマネジャーやお近くの地域包括支援センターに相談してみるのもよいでしょう。
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