【第3回】私と理学療法〜摂食障害で歩けなくなり入院した私が再出発を決意できた理由~

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連載「私と理学療法」では、ご自身やご家族が、ケガや病気の治療で理学療法を受けた方の体験談をご紹介していきます。

第3回は、摂食障害(拒食症)で体力が低下して歩けなくなり入院された方が、理学療法の時間を通して、少しずつご自身の身体と心に、前向きな変化が生まれてきたという体験談です。

PROFILE

亀山 祥子(さちこ)さん(41歳・女性

栃木県在住
理学療法のきっかけ:摂食障害(拒食症)

摂食障害で歩けなくなり入院した私が再出発を決意できた理由

身体がやせ細り、各所の数値も低下して入院

入院時、亀山さんの手足はやせ細ってしまっていた

2022年12月、摂食障害(拒食症)で食事ができずに身体がやせ細り、肝機能や各所の数値が低下してしまい、歩けない状態で入院しました。脚の筋力が落ち、気持ちも落ち込んでしまいました。

私が理学療法を受けた時期は、2022年12月~2023年3月と、再入院した2023年9月~現在までです。初回の理学療法で私を担当してくれた若い女性の理学療法士は、私の主治医と連携して、身体の状態に合わせた理学療法の範囲が広がるように積極的に働きかけてくださり、気晴らしに外の空気を吸いに連れ出してくれたりもしました。理学療法で身体を動かす時間が一番の楽しみでした。そして歩けるようになって退院することができました。

しかし、退院して半年後に体調を崩し、2023年9月に再入院となってしまいました。担当は以前お世話になった若い女性の理学療法士から男性の方に変わりましたが、この方も親身に対応してくださいました。また前担当の方は、当時の私との細かい日常会話まで覚えてくれていました。とてもうれしくて、またあきらめずに頑張ろうと勇気づけられました。

そして、理学療法での努力はもちろん大切だけれど、帰ってからの生活に気を配ることが最も重要なことだと身に染みて感じ、反省しました。

病室から見た花火に感動して、再び頑張ろうと思えた

再入院をした2023年9月から私の担当となった男性の理学療法士は、寡黙な方でした。私たちは共通の話題がなかなか見つけられず、理学療法の際は体調や天気など、当たり障りのない会話でしたが、一生懸命に取り組んでくださっているのは伝わってきました。

そんなある日、珍しく治療以外の話題を持ちかけてくれました。「明日、この病院が付属する大学の学園祭があって、夜、花火が上がるんですよ。ここは8階なのできれいによく見えると思います。ぜひ」と。私はその日の夜、教えていただいた時間に、看護師さんに頼んで窓のカーテンを開けてもらいました。

その言葉通り、花火は本当にきれいでよく見えました。入院中にこんな素敵な花火を見られるなんて、と胸が熱くなり、涙して一人で眺めていました。

その報告と御礼を伝えると「退院したら学園祭にも来てください」と言ってくれました。楽しそうな風景が脳裏に浮かび、再び頑張ろうと思えました。

入院中の食事。食べることの大切さに気づかされたという

理学療法士の方に「食べることも最大のリハビリテーションですよ」と励ましていただき、今では肉や魚、身体を作るためのタンパク質や栄養素についてまで考えて食べるようになりました。身体はもちろんですが、心も快復へ向かうよう働きかけていただきました。

食をおろそかにし、身体が衰えてしまいましたが、理学療法士の方の言葉が食生活を見直すきっかけとなり、前を向けるようになっていきました。そして、身体にとって必要なことや、自分の身体が喜ぶことを考えてあげられるようになりました。

経験を無駄にせず、人の役に立つ仕事をしたい

入院生活を通して、人から感謝され、人の今後を支えている理学療法士の方々に接したことで、今からでも医療に役立つ資格の勉強をして、人の役に立つ仕事をしたいと強く考えるようになりました。思った時がチャンスと心得て、励ましてくれた理学療法士の方にまた胸を張って報告できるように、目標に向かって努力して実現したいと思います。

経験を無駄にせず、食べることを疎かにする危険さも、理学療法や栄養の大切さも、身をもって知った私だからこそ伝えられる気持ちを大切に持っていたいと思います。

理学療法と併せて、作業療法では手編みのバッグを編んでいた

理学療法士は身体だけでなく、「心の伴走者」にもなってくれます。努力しようとする気持ちを必ず支えて、引っ張っていってくれます。これから理学療法を受ける方は、あきらめずに、私のように信頼できる理学療法士と一緒に一歩一歩進み、前を向いていっていただけたら……と思います。

おわりに

第3回は、摂食障害で入院中に、理学療法を通して自分の身体との向き合い方に気づいたことで、ご自身の経験を活かして人の役に立ちたいと決意できた方の体験談をご紹介しました。

現在は退院されて、自宅にて訪問リハビリテーションを利用して理学療法に励んでいらっしゃる亀山さん。今後一番の目標は再度社会復帰をして就職をすること、とのことです。ぜひ、ご自身のペースで再出発していただけたらと思います。

ご紹介した体験談が、現在治療中や闘病中の方、リハビリテーションに取り組まれている方の励みになりますように。次回もお楽しみに。

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