【番外編2】教えて!初めての在宅介護~介護老人福祉施設(特養)の費用の目安~
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リガクラボの連載「教えて!初めての在宅介護」では、初めての介護への疑問・不安についてお答えするべく、在宅介護に関する情報を紹介しています。
第4回の記事では、在宅介護の福祉用具・住宅改修についてお話ししました。番外編2となる今回は、自宅での介護が難しくなった場合の選択肢のひとつ、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム:以下、特養)に入居する際の費用の目安についてお話ししていきます。
【特集】教えて!初めての在宅介護
PROFILE
今回の質問者:Cさん (45歳・男性 )
・有料老人ホームに入居する80代の母を、介護老人福祉施設(特養)に入居させたいと考えている。
・母親の住まい:東京都 杉並区
・母親の介護保険サービスの負担割合:1割
・母親の要介護度:要介護5
Q. 有料老人ホームに入居している要介護5の母親がいます。現在、月に20万円以上の費用がかかっていることなどもあり、介護老人福祉施設(特養)への入居を検討しているのですが、利用者の費用負担について詳しく知りたいです。
A. お母様の介護老人福祉施設(特養)への入居を検討されているとのことですが、どのくらいの費用がかかるか気になるところですよね。
以前、「介護保険施設とは?」という記事で、介護保険サービスで利用できる入居施設の種類や特徴について、詳しくご紹介しました。
現在、有料老人ホームで月20万円以上の費用がかかっているとのことですが、介護保険サービスで利用できる「介護保険施設」であれば、自己負担する額を抑えて、よりお母様の状態に合った介護が受けられる可能性があります。それでは、介護老人福祉施設(特養)の費用について見ていきましょう。
介護老人福祉施設(特養)は、要介護高齢者のための生活施設です。原則65歳以上で、要介護3以上の方が利用できます。Cさんのお母様は80代、要介護5とのことなので対象となります。
最近ではユニットケアと呼ばれる10人程度の小グループ単位で介護や生活支援をおこなう取り組みが増え、少人数でのアットホームな雰囲気を大切にしている施設も増えてきています。
介護老人福祉施設(特養)でかかる費用
介護老人福祉施設(特養)を利用するにあたり、利用者が負担する費用は
①施設サービス費 + ②居住費 + ③食費 + ④その他日常生活費など
で計算されます。それぞれの詳細は以下です。
①施設サービス費
施設サービス費は、施設の形態、居室の種類(多床室、ユニット型個室など)、職員の配置などによって異なります。また、要介護度が上がるにつれて金額も上がります。
要介護度別:施設サービス費(1日につき)
出典:介護サービス情報公開システム 公表されている介護サービスについて 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)(厚生労働省)2022年7月27日時点
②居住費
入所者が支払う居住費は、どの部屋のタイプでも室料+光熱費相当です。
③食費
入所者が支払う食費は、食材料費+調理費相当です。
④その他日常生活費など
利用者の希望によって、身の回り品として日常生活に必要なもの(例えば、歯ブラシや化粧品等の個人用の日用品等)を購入する場合の費用です。
Q. 費用の内訳についてよくわかりました。介護保険が利用できると、やはり費用面では心強そうですね。例えば母の場合、1カ月の具体的な費用はどの程度になるのでしょうか?
A. では、お母様が介護老人福祉施設(特養)に入居した場合の、具体的な費用感を見ていきましょう。
Cさんのお母様は要介護5、自己負担額は1割なのですね。では、4人一部屋が基本となる多床室の場合と、個室のユニット型個室の場合で、それぞれに必要となる1カ月のおおよその金額を計算してみます。
要介護5・1割負担の方が「多床室」を利用した場合 | |
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①施設サービス費 | 約25,000円 |
②居住費 | 約25,200円(840円/日) |
③食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
④日常生活費 | 約10,000円(施設によって設定されます) |
合計 | 約102,200円 |
出典:介護サービス情報公開システム サービスにかかる利用料(厚生労働省)2022年7月27日時点
要介護5・1割負担の方が「ユニット型個室」を利用した場合 | |
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①施設サービス費 | 約27,500円 |
②居住費 | 約60,000円(1,970円/日) |
③食費 | 約42,000円(1,380円/日) |
④日常生活費 | 約10,000円(施設によって設定されます) |
合計 | 約139,500円 |
出典:介護サービス情報公開システム サービスにかかる利用料(厚生労働省)2022年7月27日時点
あくまで目安ではありますが、多床室を利用した場合で約10万円/月、ユニット型個室を利用した場合で約14万円/月となります。
Cさんのお母様は有料老人ホームで、現在20万円以上かかっているとのことですが、介護老人福祉施設(特養)へ転居されると、介護にかかる費用を抑えられる可能性があります。
ただ、金額的には魅力的かもしれませんが、2019年12月の厚生労働省の発表によると、この時点で介護老人福祉施設(特養)の入所申込者は29.2万人と非常に人気が高い施設となっています。そのため、地域によっては入居希望者が多く、なかなか入居できない場合もあります。
また、現在入居中の有料老人ホームとはサービス内容が異なる場合もあるので、ケアマネジャーとよく相談のうえ、検討されることをおすすめします。お母様にとって、より適切な介護が受けられて、費用面でも安心して利用できる施設を見つけられるよう、応援しています。
※介護サービスの内容などには地域差があります。
※この記事は2022年7月27日時点での情報で作成しています。
※この記事は、以下、厚生労働省を含む各コンテンツならびに各文献を参考に作成しています。
介護サービス情報公開システム 公表されている介護サービスについて 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)(厚生労働省)
通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて(厚生労働省)
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)(厚生労働省)
介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料(厚生労働省)
特別養護老人ホームの入所申込者の状況(厚生労働省)
『医療福祉総合ガイドブック 2021年度版』.医学書院.2021.p157
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